Alt Scrapとオルトフロアのこれからについて

大事なこと

  • Alt ScrapというScrapboxプロジェクトを本格的に動かしていきます。

    • https://scrapbox.io/altfloor/

    • Alt Scrapは掲示板的な雑談の場所(招待制)として運営して長期的にはポータルサイトになることを目指している。

  • Alt Scrapは招待制だけど全人類が自由に使えるScrapboxプロジェクトAlt Lougneを作りました。

  • オルトフロアは2024年12月31日までは頑張ります。

    • それ以降はそこそこ頑張ります。

本文

オルトフロアを立ち上げて半年と少しが経ちました。私達は、インターネットを通じたクラブ(に行くオタクを中心とした)カルチャーへの下働きを目的として、クラブ情報wiki、Alt Scrap、Altfloor Stackの大きく3つのプロジェクトを運営しています。
クラブ情報wikiはイベント掲載数が4000ページに到達し、4月からはじめたDJ mixのメルマガ・Altfloor Stackは早くも配信10回目を数えました。
Alt Scrapについては、この記事の主目的が「これからAlt Scrapを本格的に動かしていくぞ!」と伝えることなので一旦スルーしますが、それでもDJ mixが250本以上保存されており、ページ数も500以上。現時点でもそれなりの充実度まで育っています。

ここまで活動を続けられたのは、直接的に支援してくださっているみなさま。そして、Twitter等で話題に上げてくださった皆様のおかげです。実際にプロジェクトを立ち上げ、活動を始めてみてわかったことの一つは、人前に立って活動する人たちのよく言う「お金を出してもらうことだけが全てじゃない。いろんな人が応援してくれているとわかることそれ自体がとても励みになる」は、綺麗事やファンサービスではなく端的な事実なのだということです。支援してくださっている人がいるのにこんな事を言うのは本当に失礼なことで、大変申し訳ないのですが、それでも正直、お金のことに関して言えばこの活動はまったく割に合っていません。
人生が安定しているわけでもなく、現状を鑑みれば、当然、こんなことをしている場合ではない。それでも「こんなものがあるぞ」と話題に上げてもらうたび、「これすごいよ」とRTしてもらうたび、じゃあこの人のためにもう少しだけ便利になるように記事を追加していこう。個人ページを整備していこうと思えました。
先程は失礼なことをいいましたが、その思いをこれまでのあいだ実現する事ができていたのは金銭的にサポートしてくださっていた皆様のおかげです。本当に、ありがとうございます。いくら感謝しても、感謝したりません。

オルトフロアは灌漑工事をしている

実際にプロジェクトを運営してわかったことがもう一つあります。それは私達が最初に掲げていた「クラブ(に行くオタクを中心とした)カルチャーへの下働き」とは実際にはどのようなものなのか、です。
私達がやっていること。それはきっと、一種の灌漑工事なのだと思います。
ある情報を欲している。あることに関心をいだいている。しかし、どのようにすれば現にあるはずの――だって、明らかにそれを手にしているように見える人たちがいる――知識を得られるのかがわからない。あるいは自分が関心をいだいているものが何なのかも分からず、それゆえに情報というのが存在していることを知ることも出来ない。そういう知識の水源。それを必要な人に行き渡るような空間を整備していくこと。ときには偶然に頼りながらも、必要な水が届くように道を作っていくこと。あるいは、せめて水源がどの方向にあるかだけでも示すこと。私が目指しているのはきっと、そういうことだと思います。そして、そういった営みの恩恵をより多く受けられるのは、まだクラブにいくことやDJにまつわるコンテクストのもとで音楽を聞くことがまだ少しおおごとである人たち、そういうことが自然な振る舞いではない人たちでしょう。
こう言い換えることも出来るかもしれません。オルトフロアは、主としてクラブにいくことがまだおおごとである人のためのプロジェクトです。
このことを踏まえて、ここでもう一度オルトフロアがどのようなプロジェクトなのかを再設定させてください。

オルトフロアはクラブに行くことが、あるいはクラブカルチャーにふれることがまだおおごとである人のためのプロジェクトです。そういった人たちへの支援――灌漑工事――によって、あるいは支援を通じて、クラブ(に行くオタクを中心とした)カルチャーへの下働きを果たすことを目的としています。

クラブ情報wikiは2023年以降開催された、音楽が好きなオタクのためのクラブイベントを収集し、リンク型に整理したものです。Scrapboxというサービスを使っており、告知情報をTwitterでキャッチし、フライヤーを元に手入力することで実現しています。
出演者情報と、地域、それから会場をリンクにしており、リンクになっているページだけでなく、そのリンクがリンクされている別のイベントもページの下部に表示されます。それによって、あるイベントのインフォを見たときに、出演者などを通じて、今まで知ることのなかったイベントやパーティを知ることができます。
さらにScrapboxにはリンク以外にもう一つ、出会いを促進する仕組みがあります。Date last visitedというソート方式です。これは文字通り、最後に訪れたページが一番上に表示される並び順です。誰が最後に訪れたページが? 誰かが訪れたページが、です。つまりこのソートを使うことで、誰かの関心に沿って、あるいは誰かがたまたま開いたページを自分も知ることができます。これは、偶然に頼りながら水路をつなげるための有力な機能です。

Altfloor Stackは、いし・鶏七味どちらかのmixに加えてゲストの方に提供いただいたmixの合計2本を毎月メルマガ/ポッドキャストにて配信する企画です。現場でのDJとは少し違った作品としてのDJ mixを(聴きたい/うまく作れるようになりたい)という私達の思いから始まったものですが、その思いの実現を裏テーマとしつつも、いまわたしたちが「この人のDJ mixを聴いてほしい」と思っているゲストの作品を届けています。ゲストの選定も含めて、他のものと比べると私達の「我」の混入率が高いプロジェクトですが、ここを足掛かりに新たな道に入り込んでいけるものになれば、と考えています。
また、脱線ではありますが、鶏七味の個人的な思いの話をさせていただけば、そもそもオルトフロアという企画を動かし始められたのはわたしがいしさんのDJに惚れ込んで、この人のmixを少しでも多くの人に伝えたいと思えたからです。ですから、Altfloor Stackはある意味でオルトフロアの根幹をなす企画でもあります。こう書いてみると、やはりオルトフロアには最初から「届ける」ことが念頭にあったのだなと改めて気付かされることになりますね。

Alt Scrapとはなんなのか

では、Alt Scrapは? というのがこのnoteの本題です。
当初、わたしたちはAlt Scrapを「DJ mixを集めるwikiである」と紹介しました。間違ってはいません。たしかにこのプロジェクトにはDJ mixを集めるwikiとしての側面があります。みなさんがDJ mixと出会える場にしたいという思いがあります。それでも、これは的を射てはいません。

ではなんなのか。Alt ScrapはDJやクラブに即した文脈において音楽を扱う総合掲示板であり、ポータルサイトです。つまり、様々なことを(すでに書かれている記述に反応する形で)気軽に書き込める雑談の場であり、かつその書き込みを知識/情報として扱うことが出来る空間です。ポータルという言葉には「玄関」や「入り口」という意味があります。「ポータルサイト」と聞いて抱くイメージには人それぞれいろんな物があると思いますが、まずは単に入口となるサイトと考えておいてください。

掲示板をどうして同時にポータルサイトにすることができるのか。どうして掲示板であり、ポータルサイトでもあるようなサイトを必要だと思っているのか。これらについては説明が必要でしょう。少し長くなりますが、まずはAlt Scrapが具体的にどういうものであるのかを説明させてください。その説明を通じて、これらの問いに対する答えが自ずと見えてくると思います。

Alt Scrapはクラブ情報wikiと同様にScrapboxを利用しています。ですから、クラブ情報wikiと同様に様々な情報がリンクで繋がっており、またソートの工夫によって誰かの関心に基づく形で様々な情報と出くわすことのできるサイトとなっています。
ですが、クラブ情報wikiでは活用できなかったScrapboxの特徴があります。操作が容易で誰でも簡単に使い始められる上に、一つのページを複数人が同時に編集しても同期上のトラブルが発生しない。すなわち共同編集に向いたツールである、ということです。

クラブ情報wikiのように、ある時点において有限個存在している情報を定形に沿って追加していく場合、編集者が増えることが必ずしも有益とは限りません。例えば追加しようと思っていた情報がすでに追加されている。一部の編集者だけが頑張っているように映ってしまう。そういうことが続けば、人は編集のモチベーションを落としていきます。ですから、どれだけ人を増やしても数人は情報キャッチと編集を頑張る人が必要になってきます。しかし、人を増やすとこの数人の必要性はなかなか見えなくなってしまう。それなら、ある程度編集する人間の数を最初から絞っておいたほうがマシです。
(とはいえ「主として編集は君らに頑張ってもらいたいけど細かいところちょっとイジりたいです」という意見があることは理解できます。今後検討します)

しかし、Alt Scrapは対象としているものが違います。もっと広く、音楽について。音楽についてあなたが思っていることであったり、ジャンルについてのあなたの認識であったり、あなたが発見したいい曲やDJ mixであったり、もしくはdigの技法や役立つ拡張機能かも知れませんが、そういった個人の認識に根ざした様々の情報を、雑談を通じて集めていく場です。ですから、記述される対象の数に限りがありません。
どうして、そういうことが(雑談を通じて)集められる場が必要なのでしょう。それは、雑談の場面でしか光が当たらず、出力されることのない情報があるからです。
そして、それらを一箇所にあつめることで、様々な情報がどのように結びついているのかを把握することが容易になります。Scrapboxはページ間のリンクを張ることに長けたツールですから、このことがより強く言えるでしょう。
リンクをたどりながら、雑談を通じて集められた断片的な知識を渡りあるく中で、わたしたちは、わたしたちの内側にあるDJやクラブにまつわる文脈に基づいて音楽を聴くときに活用される種々様々の概念のネットワークを再編することができます。概念のネットワークを再編するとは、認識を新たにすることであり、理解を深めることです。同じことをもう一度、逆向きから言いましょう。ある事柄についての理解を深めるとは自らの中にある概念のネットワークを再編していくことにほかなりません。

概念のネットワーク

概念のネットワークについて説明させてください。
私達の認識は様々な概念がネットワーク上につなぎ合わさって成立しています。本当はここで音楽に関する言葉――例えば拍やリズム、あるいは何らかの音楽ジャンル――を用いて説明するのがいいと思うのですが、これを読むような人の前でそれらを例に説明する勇気は流石にないので、より単純な例を上げましょう。
「雨」という概念を思い浮かべてください。雨という概念は私達の中で「傘」や「雷」あるいは「空が暗くなる」「地面が濡れる」のような概念と結びついています。もしくは「天気」のようなより大きな概念と結びついて、「雪」や「晴れ」に隣接する概念として理解されているでしょう。私達の認識がネットワークになっている、ということを確認するために、こういう例を取り上げることが出来ます。以下のような文章があるとします。

「暗くなってきた。空が厚い雲でいっぱいになる。あちこちで傘が開く。傘のない子が屋根の下へと走り出す。」

こう書くだけで、わたしたちはここで雨が降ってきたんだな、ということを理解します。これは私達が雨という概念を、ここで記述するものと隣り合う/重なり合うものとして理解しているからです。
また雨ということについて理解を深めるときには雨と隣接する他の概念と比較して、ある概念が担当する領域を把握する形で、認識を改めていくでしょう。私達が概念の地図をいかに利用しているか、について詳しく知るためには今井むつみ『学びとはなにか』(岩波新書)を参照してください。

さて、文章というのはリニアなものです。つまり、文章はネットワーク構造ではありません。急に当たり前の事を言いだしましたが、でも、私達の認識はリニアなものではなく、ネットワーク状に様々な概念が連なったものである、ということを考えるなら、ここに少し厄介な問題が潜んでいるのに気づきます。つまり、ネットワーク状に繋がっている私達の認識を人に伝えるためには、それを一本の線状に変形させなくてはならないということです。文章を書くというのはそういう営みです。私達の内側にある概念のネットワークを一筆書きで提出することです。そこでは流れに乗らないノードは切り捨てなくてはなりませんし、複雑に絡み合ったノードを勇気を持って単純化しなくてはなりません。
ちょっと無理があるとは感じないでしょうか。実体験から言わせていただければ、無理があるのです。いま、まさに実感しています。どうして俺はオルトフロアについて誰よりも考えてきたはずなのに上手に説明できないんだろう? どうしてこんなに苦しむことになっているんだろう?
ある人物の中で、どれだけある概念を中心としたネットワークが密で体系的であったとしてもそれを一筆書きにして出力することもできるかどうかはまったく別の話なのです。

書き手側の不都合だけではありません。受け手としても、少なからぬ不都合があります。まず第一に、書くという営みが苦痛であれば、Web上に現れる情報は少なくなってしまいます。現状で音楽について、特にクラブミュージックについて理解を深めていく、というのは――特に日本語のインターネット環境を中心にして言うなら――なかなか難しいものがあります。
母数が増えればいくらかマシということで海外のサイトを見ればまともな情報はある。あるいは音楽ジャンルについて発見というか啓示というか、それに類する体験をして特殊なモチベーションを抱いた人が啓蒙的に活動している場合もあります。が、とはいえまとまった記事というのはなかなか見つけられるものではなく、むしろわたしたちは雑談を通じてだったり、あるいはTwitterで記述されてきた断片を少しずつ組み合わせて、いろんなことを理解してきたのではないでしょうか。少なくとも自分の経験に照らせば、いま私が持っている音楽に関する概念のほとんどはTwitterで調達し、Twitterを通じて理解を深めたものだと言い切って問題ないです(恥ずかしい話ですが)。
第二の不都合。リニアな形で渡されたものを「理解する」というのは、その受け取ったものを分解・再構成して、自分の概念ネットワークの中に位置付けていく営みです。小さな単位であれば、やれなくはない。しかし、大きな単位の文章を血肉にしようとすれば、それなりの苦痛を伴う体験になります。文章というのは、読み手にとっても不自然な形なのです。
第三の不都合もまた理解に関わるものです。書き手が一筆書きにするために落とした小さなノードが実は重要な役割を果たしていて、それがないばかりに概念の連なりをうまく理解できないという事態も割に起こります。具体例を考える気力がないのですが、フロアで、あるいは居酒屋での雑談で聴いた、ちょっとした、ごく小さな一言によっていままでピンときていなかった概念の連なりが急に理解できた、という体験をしたことがある人は少なくないでしょう。

問題を整理しましょう。

私達の認識はネットワーク状になっている。それをリニアなものに変換して出力するのは無理のある営みであり、成功したとしても小さなノードを落としてしまうことがしばしばある。
だからネットワークをネットワークのまま出力したい。小さなノードに光があたるように、断片的なものを出力したい。あるいは、してほしい。それを通じて学んでいけるような環境が整備されていてほしい。

どうしたらいいでしょうか。
小さなノードを拾い上げる方法は、実はすでに書きました。Twitterや、居酒屋でのちょっとした発言。小さなノードはそういった場で出てくることが経験的にわかっています。一段階、抽象化しましょう。
小さな単位で、他の人の発言に反応する形で、出力を繰り返していると、小さなノードは出力される。ですから、用意すべきは気軽に書き込める雑談の場です。

Scrapboxはこれを実現するツールとして極めて優れています。一つのページを複数人で同時に編集可能で、その編集が即反映されるから、リアルタイムでのやり取りも可能という点でもすごいのですが、むしろ時間差でも気軽に書き込めるところが素晴らしい。誰かの意見に対して何かを書き込んでも相手に通知が行かない。
だから半年前とかのコメントに対して「これむしろこうだと思うんだよな」みたいなことを書き込んでもいいし、3年前に追加されたいい曲に対して「これめちゃくちゃいいし今聞くとこういうものじゃん!」というコメントを残してもいいわけです。前にも書いた通り、Scrapboxはリンクやソートを通じて過去の情報とまた巡り合う事がしばしばありますから、時間差でこういうことを書きたくなる場面はしばしば訪れます。これに触発されて思いもよらないコメントが自分の中から出てくる、というのも割とあることです。そしてこの書き込みがまた、誰かにとっての新たな出会いの契機となりえるのです。

脳内のネットワークを可能な限りそのまま出力したい、ということに関してもScrapboxが役に立ちます。Scrapboxの凄さの一つは「書いてしまったもの」を操作するときの操作性にあります。
恥を晒すことになりますが、実際に操作した様子を見てもらうことにしましょう。
以下はこのnoteを書くために実際にとりあえず脳内を吐き出すように一息で、ガーーーッと文章を吐き出し、後からそれを整備したものです。

見た目としては一応上から下に読めるようになっていますが、それぞれの項目はただ緩やかに繋がっている、ネットワーク的なものだというのが理解できるでしょうか。まずは頭に浮かんだ言葉をひたすら書き出して、それを適宜改行していく。その行をcommand + 矢印キーで操作していく。それだけで、このページは作られました。10分もかかっていないと思います。

また画像の中にもありますが、アイコンが出せて、また書き込みも行に分かたれているため、行の好きな部分に対してコメントを入れたり、これは別の人が書き込んだよということを示すためにアイコンを入れたり、ということがものすごく簡単にできます。

scrapboxを開いて、書き出して、という行為がそもそも自然じゃないじゃんという向きには他のSNSで書いたことを転記する、という方法もあります。
以下はAudiot909様のツイートをもとに誰かが勝手にページを作成したらこのようにするだろうな。という画像と、もしAudiot909様がこのプロジェクトに参加していたらツイートを元にこういうページを作ってこういう会話が生まれるんじゃないかなという妄想の画像です。(この画像の作成に際してAudiot909様に許可をいただきました)(妄想のページはまだ残ってます)(妄想部分消えました, 2023/08/15 21:03)

ツイートからページを勝手に作った例
audiot909氏がプロジェクトに参加していたらこうなるかもという妄想
妄想のコメント
妄想のコメント2

もしこのあと3 stepに関する認識がまとまってきたら”――――――”みたいな線を入れてその下に雑談パートを残し、上の方に概要とプレイリストを載せておけばいいわけです。

これは3stepという概念を断片から立ち上げていこうとする過程ですが、すでにある程度多くの人に共通した認識があるジャンルや概念については最初からそういうのを書き出してしまってもいい。書き出してしまっても、行ごとに疑問をつけていったりすれば概念が揺さぶられることがあります。私達の概念に対する認識が変われば、その概念と結びつく様々なものへの認識も変わります。それは私達が実際に行動することでオルトフロアがどういうプロジェクトなのかに気づき、その気づきに従って個々のプロジェクトのありようが変化したのに似ています。部分は全体に規定されますが、全体は部分に直接影響されるのです。

Alt Scrapはポータルサイトであることを目指している

Alt Scrapは掲示板であり、同時にポータルサイトであるといったことの半分はここまでで説明できたと思います。掲示板から始まって、情報がまとまったサイトへと育っていく。しかし、同時にいつまでも掲示板であり続ける。そういうサイトです。

しかしポータルサイトという表現についてはもう二つほど含意があります。
一つ、安直な話として、このサイトは雑談の場ですから、おしゃべりのネタとしていろんなメディアの記事がこういう記事があったよという形でシェアされることになるでしょう。何度も書いている通り、このサイトはすでに共有されたものとの偶然の出会いに開かれている場ですからいろんなサイトへの玄関口の役割を果たすことになりうる。これがポータルサイトのやや安直な含意です。

もう一つ。Scrapboxはログインして使うと見ているプロジェクトが左上のWatchlistという項目にリストされます。

watchlist

これもまたScrapboxのすごいところですが、あるプロジェクト内である単語について検索するとWatchlistに含まれているプロジェクトも含めた検索結果も返してくれるのです。ためしに、クラブ情報wikiでLYNXについて検索してみます。

クラブ情報wikiでLYNXと検索した結果

下の方に「東北ハードコアいこうかな掲示板」が表示されているのがわかるでしょうか。これは東北ハードコアによって運営されているパーティをまとめたScrapboxプロジェクトです。ここをクリックすると、

このように「東北ハードコアいこうかな掲示板」でLYNXについて検索した結果が表示されます。

オルトフロアの提案はもっともだ。このやり方で情報サイトを作っていくのは理にかなっている。しかし、あそこでやっていこうという気にはちょっとならない。活動を続けていけば、そういう人もきっと現れるでしょう。
そもそも私たちのことを好意的に思っていない。Alt Scrapを編集している人間にちょっと苦手な人がいる。もしくは私達の編集スタイルが性に合わないということもあるでしょう。

そういう人たちが私達から離れていくことはもっともです。でも二つお願いがあります。
できればScrapboxを使ってください。
そして、そのプロジェクトへのリンクを貼ることを許してください。
そうしてくれれば、わたしたちのプロジェクトを通じて様々なScrapboxプロジェクトへの道がひらけることになります。より多くの人が知識の水源へとにじり寄っていくことができます。
ポータルサイトであるというのはそういうことです。私達はそういった様々なコミュニティ、知識の水源へと橋渡しをするハブの役割になりたい。そう願っています。これは、わたしたちがしていることを灌漑工事と表現することの一つの意味です。

Alt Scrapについてのまとめ

Alt Scrapについてまとめましょう。
Alt Scrapはまず第一に掲示板です。小難しい話をしましたが、ようするにTwitterが滅び、人々が様々な場へと散っていく中で、クローズドではなく、かつ情報があとに残る形の、自由に書き込める場を作ろうという試みです。
Alt Scrapは第二にポータルサイトであることを目指します。ここをハブとして、様々な知識の水源へとアクセスできるような場になっていくことを志しています。
第三になりますが、Alt Scrapは、やはりDJ mixを集めるwikiでもあります。なにより、わたしたちはインターネットに上がっているDJ mixが好きです。だからこういうみんなの雑談や知識が、自然にDJ mixに繋がっていったらとても嬉しい。DJ mixに関しては掲載依頼も受け付けています。ですから、これはやはりDJ mixを集めるwikiでもあるのです。

一度に人を増やすと荒れてしまったり、みんなが同じタイミングで飽きてしまったりという可能性が考えられるので少しずつ人を増やしていきます。
プロジェクトが安定してきたら編集権限を全体へと開放する、もしくは編集者に声をかけたら誰でも編集権限をもらえるみたいな形にしようと思っています。

俺もみんなでワイワイScrapbox使うやつやりたいんだけど、という人たちのためにAlt LoungeというScrapboxプロジェクトを作成しました。

ここでは、何の話をしてもいい。自由に使っていいです。アニメの話とかしましょう。いえ、Alt Scrapでも何の話をしてもいいし、当然アニメの話をしてんですが、いつ開いてもプロジェクトの上の方がずっとアニメという感じになったら流石にちょっと嫌なんで……。
ScrapboxはGoogleでログインすれば誰でも利用可能です。ウォッチリストの横断検索など、見るだけの人にとっても便利な機能がたくさんありますので、ぜひログインして使ってみてください。

オルトフロアとは何なのか(再考)

私達はオルトフロアをクラブカルチャー、あるいは「DJの文脈に基づいて音楽を聞くこと」に関心を持ったあらゆる人に気軽に勧められる「とりあえずここを見てみればいい」といえるものに育てていきたいと思っています。
Alt Scrapとクラブ情報wikiをそれぞれ育て、相互リンクも密にしていく。
これから出てくるであろう様々なコミュニティによるScrapboxプロジェクトへのリンクも育て、横断検索が出来るように場を設定していく。
インターネットを作っていくのです。

オルトフロアはクラブに行くことが、あるいはクラブカルチャーにふれることがまだおおごとである人のためのプロジェクトです。そういった人たちへの支援――灌漑工事――によって、あるいは支援を通じて、クラブ(に行くオタクを中心とした)カルチャーへの下働きを果たすことを目的としています。
最初、わたしたちが掲げていた目標は「クラブ(に行くオタクを中心とした)カルチャーへのインターネットを通じた下働き」でした。その下働きの内実が灌漑工事であることがわかりました。そして、灌漑工事とはすなわち、クラブ(に行くオタクを中心とした)カルチャーのためのインターネット空間を整備することだったのです

改めて述べましょう。
オルトフロアはクラブ(に行くオタクを中心とした)カルチャーのためのインターネット空間を整備することを目的としたプロジェクトです。そのサブプロジェクトとしてクラブ情報wiki、Alt Scrap (Alt Longe)、Altfloor Stackという大枠で3つのプロジェクトを持っています。
これらのプロジェクトを利用したインターネット空間の整備を通じて、必要な人に必要な知識や出会い、あるいはそれらがある方向を示唆する灌漑工事を達成したいと思っています。

こういうプロジェクトをやるのに、私は適格ではないかもしれません。
根が怠け者ですし、キャパシティもそれほどありません。この文章を書いている間、クラブ情報wikiの更新量は激減してしまいました(大変申し訳ありません)。
収入が安定しているわけでもなく、友達も多くない。
ですが、だからこそ誰よりもインターネットに助けられてきました。そして、インターネットを通じていつも見ていたのはクラブ(に行くオタクを中心とした)カルチャーでした。
私はインターネットで得たものを、少しでもインターネットに返していきたいと思っています。

文責:鶏七味

(参考)