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映像、音楽の観点からみる「Supreme」

Supreme」とは

1994年にJames Jebbia (ジェームズ・ジェビア)が、スケーターのための服がないことを嘆きスタートさせた。ストリートのアイコンであり、その頂点に存在するブランドだ。日本では藤原ヒロシが紹介したことによって一気に知名度が高まり、今もなお、カルト的ファンが増え続けている。
全く興味のない人からすれば赤と白のロゴが思い浮かぶだろう。また、ファッションは好きで詳しくても、ストリート系は興味がない人たちやそこまで詳しくない人たちの中には、近年、「Supremeはダサい。」「もう終わった。」などの声も聞く。Supremeを身に着けていても、スケートボードのブランドであることを知らない人もざらにいる。
そこで今回は誰しもが知るストリートブランドSupremeを、Supremeがリリースしたスケートビデオと使用されている音楽を通して深掘りしたい。

Supremeはこれまでに「cherry」(2014)「blessed」(2018)「candyland」(2019) の三つの長編映像作品をリリースしている。その三作品の映像を撮影しているのが、映像作家 William Strobeck (ウィリアム・ストロベック)だ。彼は、Mark Gonzales(マークゴンザレス)、Dylan Rieder(ディラン・リーダー)、Alex Olson(アレックス・オルソン)、Jason Dill(ジェイソン・ディル)と挙げればキリがないが、スケート界のレジェンドと交流があり、90年代のリアルなストリートカルチャーを生きてきた。


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そんな彼が撮るスケートビデオは革新的だ。派手で難度の高いトリックを見せるのではなく、リアルなストリートスケートの様子にこだわり、80年代、90年代のインディズミュージックやヒップホップが相まった映像はまるで映画を見ているかのような感覚に陥る。彼はスケートをやらない人も楽しめるスケートビデオを制作したのだ。


0:18  「Buck Em Down」  アーティスト Black Moon

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"HOW MANY MC'S"、"WHO GOT DA PROPS"、など数々の名曲を収録した1993年産クラシック・アルバム「ENTA DA STAGE」で知られる90年代のニューヨークを代表する3人組ラップグループだ。同時期には18awにSupremeとコラボしたWu-Tang Clan(GZA)の超名盤「Enter The Wu-Tang」もリリースされている。このパートは、Kader Sylla、Sage Elsesser、Tyhawn Jones などイケイケのライダーが中心でHIP HOP色の強いパートとなっている。


5:59 「in Our Angelhood」 アーティスト Cocteau Twins

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今度は打って変わって、英スコットランド出身のオルタナ・ロック・バンドの Cocteau Twins(コクトーツインズ)。80年代を代表するシューゲイザー系のバンドで20ssでのコラボも新しいMy Bloody Valentine などと同じジャンルだ。この曲だけを聞くと疾走感があってすこしPOPな印象を与えるかもしれないが、名盤「Heaven or Las Vegas」を聴いてみると、ボーカルのエリザベス・フレイヤーの天使のような声と独特なサウンドが相まって、別の世界に連れていかれたような感覚に陥る。


9:26 「Wopbabalubop」 アーティスト Funkdoobiest

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FunkdoobiestはL.A発のDJ Ralph M、MC Son Doobie、そしてTomahawk Funkの3人によるHIP HOPグループだ。Soul Assassinsの一員として、House of Painらとともに90年代のL.A.シーンを盛り上げた立役者と知られる。アルバム「Which Doobie U B?」シングル”Bow Wow Wow”は最大のスマッシュ・ヒット曲、聴いてみる価値アリだ。


14:20 「Rose Blood」 アーティスト Mazzy Star

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1989年、ボーカルの Hope Sandoval(ホープ・サンドヴァル) とギターの David Roback(デヴィッド・ロバック) により結成されたサイケデリックバンドだ。ホープのどろどろとした声とメロディーは白昼夢を見ているかのような錯覚に陥る。Supremeのクリエイティブ側はつくづくこの手のオルタナティブ・ロックが好きだなと感じる一曲といえる。ボーカルのホープは、My Bloody ValentineのColmo Ciosoig(コルム・オコーサク)と別のユニットも展開している。


17:50 「Just One Fix」 アーティスト Ministry

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お次は1981年、アメリカ、シカゴで結成されたインダストリアルメタルのルーツのようなバンドMinistry(ミニストリー)。インダストリアルとは、70年代にロック発祥の地であるイギリスで消費主義によりそって商業主義と化したロックへの反発として生まれたジャンルだ。パンクやハードコアな精神が宿る暴力性あふれる、それでいて独自性、創造性あふれるサウンドはオルタナティブ・ロックともいえる。このパートは、Ben Kadow、Aidan Mackeyが中心のパートで、Supreme Crew の中でも特に生き生きしているスケーターによる刺激あるパートとなっている。


21:25 「The Crying Game」 アーティスト Blenda Lee(カバー)

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ニール・ジョーダン監督1992年製作のイギリスサスペンス映画の主題歌。それを長年にわたってアメリカのクリスマスシーズンを飾り続ける名曲「Rockin' Around the Christmas Tree」で知られる世界的名声、ブレンダ・リーがカバーしている。このパートは一番「映画」を感じ、とにかく渋いに尽きる。どこか寂しさも感じる、坂道を激走するシーンは必見。


25:02 「Keeping The Wolves Door」 アーティスト White Magic

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エンディング曲はアメリカ、ブルックリンで結成されたインディーズのサイケデリックフォークロックバンド「White Magic」だ。知名度は高くなく、バンドとしての情報量も少ない。暗く、希望深く、神秘的で、でも決して愛らしくない。そんな独特な世界観であふれるサウンドが、このビデオを締めくくっている。

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この記事を通して、また新たな「Supreme」の一面を知ることができたなら幸いだ。Supremeは、ボックスロゴのブランドでもなく、ラグジュアリーブランドでもない。ストリートカルチャーを生きてきた多くのデザイナーがクリエイターとして関わり、一つ一つのコラボレーションに意味を持っている。その作品の一つとして今回紹介した「candyland」から違った魅力を感じることができるのではないだろうか。

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