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無人島のふたり

山本文緒さんの作品、実は読んだことがありません。でもこれはとても話題になっていて読みたくなって買いました。

最初に読んだ作品が著者の絶筆だなんて……。でもすごかった。一気読みでした。

ずっと具合が悪くてあちこち検査して、でも分からなくて。わかった時にはステージⅣで余命がなんと4ヶ月。

受け入れられない。

それはもちろんそうだろう。

あと4ヶ月しか生きられないだなんて。

当然そんなことを告げられたら、自分ならパニック。あと4ヶ月でいったい何ができるの? どうしたらいいの?

折しも余命宣告を受けた頃からコロナが流行。夫と2人きりの無人島みたいな生活になった、というのがタイトルの意味。

でもね。

信じられないけど、何をしたらいいのかもわからないけど、

でも、書くのだ。

そう決めて毎日を書くその山本氏の姿勢が本当にすごい。

あと4ヶ月だけど、日常は日常。自宅での緩和ケアを選んだけれど、時には痛みに我慢できずに救急車を呼ぶこともある。そうかと思えばとても元気な日もある。そういう日々が淡々と綴られている。

サクサク読めたけれど後味はとても重い。読んだ日の夜は怖い夢をいくつも見た。

わたしたちは生き続けているけど、同時に死に近づき続けているんだよね。見ないフリをしているけど、もうすぐそばまできているかもしれない。それは誰にもわからない。

今書いているこのテキストだって、これがわたしの絶筆になる可能性だってあるわけで。

何を言いたいかと言うと、正直何も言うべき言葉が思いつかない。ただ最後の最後まで書ききった山本氏には心から敬意を表するし、ご冥福をお祈りしたい。

本の中でその時の山本氏の状況を知らずにきた仕事の依頼を断る時に「わたしにはもう未来がないんだ」「そのことが悲しい」と。この言葉は強烈に心に残った。

山本氏の作品、読もうと、ぜひ読みたいと思っている。

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