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大人のおつかい 〜浪花のalohaの場合〜

市内の高級果物店。
母のお使いで『小一万円ぐらい』のお届けものを買いに行く。
大阪人の良く使う『こいちまんえん』ぐらい。
おおよそ税込み一万円というところ。

店内に入る。
ずらっとシーズンの果物が並んでいた。
大きな西瓜、メロン、桃…ハウスみかんもお値段を見てびっくりな品物。

大阪人あるあるだと思うが、まず自分で品定めをする前にお店の人になにが良いと思うか問いかける。
店員さん、いや、店主さん。御年70歳ぐらいのおじいさん。

『おっちゃん、一万円ぐらいで贈答用にするんやったらなにがいい?』
『そやなぁ。今日やったらそこのメロンか…ハウスみかんもええけどな。』
ふーん、と相づちをうって見てみる。
メロンも産地がいろいろだ。
『メロンやったらどれがおいしいん?』
『そやなぁ、静岡産が有名やけどな、おっちゃんのイチオシは鳥取産や。その次は仁淀ブルーて書いたぁるメロンやな。』
『鳥取?仁淀ブルー?仁淀ブルーって高知のメロン?』
『そやで、おっちゃんのおじいさんが高知の出身でな、坂本龍馬知ってるか。』

おっちゃん、私にいい振りしてくれた。なるほど、この店内見てみたら坂本龍馬の句の額やら高知の匂いがプンプンする。
他にお客さんもいない、少し話してみる。

『コロナの前に行ってきてん、高知。仁淀ブルー見てきたで。』
『ほんまかー。ほんなら龍馬さん見てきたか。海に向かって立ってる。』
『うん、桂浜も行ったよ。ゴメンおっちゃん、私な、中岡慎太郎派やねん。』
『あんたー、歴史よぉ知ってるんやなぁ。ほかどこ行った。』

おっちゃんのおじいさんは昭和初期の高知の偉い政治家さんやったと。
龍馬も出てきたけど、長宗我部元親の話にもなり、あの人は三男坊やろ、関ヶ原行かされたでなー、などと話していたらおっちゃんめちゃめちゃ喜んだ。
気付いたら10分ほど話していた。

『おっちゃん、ほんまのとこどのメロンがおいしいん。』
『そやな、今日並んでる中やったらやっぱり鳥取やな。よっしゃ、鳥取のメロン三つと豪勢な箱もオマケで税込み一万円にしとこか。』

スペシャルな箱、500円と書いてある。鳥取のメロン、ひとつ3,200円。
3,200円×3個で9,600円、箱入れたら10,100円に消費税…けっこうオマケしてくれてる。

『ありがとう、ほなそれで包んでー。おっちゃんのオススメにしとくわー。』

きっとね、普通お使いなら高級メロンは静岡産のメロンでしょっ、てなる。
鳥取のメロンもらったって、なんや安物くれたん、と思われるかもしれへん。
(鳥取のみなさんごめんなさい。)
ひとつ5,000円の静岡産メロン2個のほうが見た目もいいかもしれへん。

でも、こんだけ話して喜んでくれたおっちゃんのオススメ、買わんわけにいかへんし、絶対美味しいと思う。
もらった人も『え、鳥取?』って思うかも知れへんけど食べておいしかったら鳥取すごいやん!!になる。

『くだもんや(果物屋)50年ほどやってるおっちゃんを信じてくれ。ほんまにうまいから。』
『ええ買いもんさせてもろたわ、ありがとうおっちゃん。』
『また龍馬さんや長宗我部の話しに来てや、おいしいくだもん安ぅしたるさかいに。』
『ありがとう、また来るー。』

そんなこんな大人のお使い。
帰って母に簡単に成り行きを説明したら、
見た目静岡のほうが…
って言われた。
やっぱりな。
でも見た目は貼ってるシールで負けててもおいしかったらいいんちゃう。
鳥取に賭けてみよう。
って…ほんまに鳥取のみなさんごめんなさい。

きっと何日かしたら、あのメロンおいしかったってさ。って母から聞くと思うから許してください。

お使いのお駄賃にもう1個、家用の鳥取メロン買えば良かった。
おっちゃん、そこ商売っ気ないねんなー、ええ人やなぁ。




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