ユニゾンを聴けなくなった日々の話

ある日突然、そういうきっかけがあったわけではない。
日常が気づかないうちに、自分の予期していない方向に変わっていくことがある。

Kaleido proud fiestaのfirst takeに興奮と熱狂を覚えたところまでは記憶がある。
ただそのあたりから、緩やかだけど確実に、私の日々は味がせず、解像度の低いものになっていった。

誤解がないように伝えると、ユニゾンが悪いわけでは全くない。私の中のユニゾンを、その他の大好きだったものの大多数を受け取るアンテナが通信不良になったのだ。
当時は自分がそういう状態になっていることすら気づかず、自分の人生は至極順調だと思っていた。そう思いたいという自分の意思もあった。

よくよく振り返ると、朝は陽が昇る前に出社して、帰りは終電の時間を気にしながら帰ることもしばしばで。
出世と人事の話が大好きな同期、「ありーはすごい」「やっぱり違うね」という賞賛とも妬みとも分からない言葉からのプレッシャー。
先行き不安のプロジェクトと、やる気のない上司とのコンフリクト。
そういう要素は日常の色々なところに存在していた。
何より、この環境の中に長くいたことで、いつも他人と自分を比較して、自分のダメなところを探すのが癖になっていた。
そうしているうちに、いつのまにか自分の存在自体がどうでも良くなっていた。

そんな日々の中で、気づいたら私の元からユニゾンが消えていた。そもそも音楽を聴くことを完全に忘れてしまっていた。
イヤホンは電車と周囲の音を消すためだけに使っていた。
それを悲しいと思う感情もどこかに置いてきてしまった。

それでもどうにか日常は続いていたし、友達に誘われるがままに出かけたり、時には旅行に行ったり、側から見ると私は普通だったと思う。もしかすると順調に見えていたかもしれない。
それでも、好きなものを受け取る気力が湧かないというのは、長い長いトンネルの中にいるようだった。

たまたま行った病院でそれはうつ病ですね、と言われた時、そんなこと言われても困るの気持ちが半分と、どこか安心した気持ちが半分ずつだった。
うつで安心って何だよというのはもっともなのだけど、自分の状況に名前がついて、自分があらゆることを楽しめないことの理由がはっきりしてほっとしていた。
そして、どうせこんな状況なら何を頑張っても視界が暗いんだから、それならせめて自分がやりたいように、好きなことをやろう。という前向きなのか投げやりなのかよく分からない気持ちになった。
この思考法が正しいのかは今でもよく分からないけど、それでもとにかく心が動いたということが大きな一歩だった気がする。

仕事はできるだけ手を抜いた。
完璧主義の自分がサボることしか考えないという状況に最初は罪悪感もあったが、意外と周りからの評価は変わらなかった。
私の仕事のディテールなんて元々誰も気にしてなかったんだなと気づいて気分が軽くなった。

仕事の合間に興味本位で転職サイトも見てみた。世の中探せばいい求人もたくさんあるし、会社の論理だけに囚われていた自分はなんて視界が狭かったんだろうと当たり前のことを認知するいいきっかけとなった。
最終的に縁があって、これまでと同じ仕事を、もう少し穏やかに、これまでより好待遇でできる環境を見つけて転職を決めた。

生活に少しずつ色が戻ってきた。
自分の好きなこと、やりたいことが頭に浮かんでくるようになってきた。
(今では信じられないものの、調子が悪い時は本気で自分が何が好きだったかすらも思い出せなかった)

2024年のやりたいことを書き出した時、自然と「ユニゾンのライブに行きたい」が頭に浮かんだ。
他人から見るとあまりに何気ない感情だと思うけれど、自分の中から湧いてきたその気持ちが、私はとても嬉しかった。
ユニゾンの音楽を受け取れる自分にまたなることができた。それだけでもう十分だった。

先日、家でのんびりしながら何気なくApple musicで音楽を流していたら、彼らの黄昏インザスパイが流れてきた。
同居人にこの曲いいんだよめちゃくちゃ!と語りながら聴き進めていると、最後に大好きな一節が流れてくる。
「負けない、どうせ君のことだから」

この曲をまた聴くことができて本当に良かった。ユニゾンの音楽を楽しめる自分が大好きで、誇らしいと、そんなちょっと大袈裟な気持ちすら抱いている。
ユニゾンの音楽を愛している皆さんに対しても同じ思いを持っていたりもする。
こんなに素敵な曲たちを一緒に受け取れている皆さんのことが大好きだし、こうやって一緒に楽しめる人たちがいるから、私にとってユニゾンの曲がより特別なものになっている。

黄昏インザスパイが語るとおり、ユニゾンを受け取れる私やあなたのことだから、きっと負けない。
これからも一緒に、楽しく生きていきましょう。
リバイバルツアーを待ち遠しく思いながら。

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