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テキストデータの体温

2019年9月25日。

映画『HELLO WORLD』(略称:ハロワ)を初めて観たのが、確かこの日だった。

封切りは2019年9月20日だった。この日には実はちょっと鳥肌立つような現実世界とのシンクロがあったことが後からわかったりしたし、つい数日前の2020年9月20日には公開1周年を記念して自分のタイムラインはすっかり祝賀ムードだった。「ハロワガチ勢」「野﨑まどガチ勢」の人達はほぼ確実に9月20日の初日に観に行っている。

でもニワカの自分にとっては9月25日が『HELLO WORLD』に出会った日だ。

そして、初見時の興奮も冷めやらぬままに、野﨑まど『HELLO WORLD』、伊瀬ネキセ『HELLO WORLD if——勘解由小路三鈴は世界で最初の失恋をする』を購入したのが翌9月26日だった。インターネット上に初めて自分のやり場のない激情を記録したのが9月30日。それだけでは飽き足らなくなって、この思いをTwitterとnoteに記録することにしたのが10月14日。そのまま、自分は『HELLO WORLD』沼に転がり込み、頭おかしい人として生きていくことになる。



月日が流れた。

その日、自分はガチ泣きした。先が見えない中でテンパって心の余裕を無くしていた自分は、ハロワのご縁で知り合えたご縁に救われ、支えられた。世界が違って見えた。新しい世界。明らかに昨日までの自分とは何かが違っていた。ただのテキストのメッセージが、魔法みたいなすごい力を持っていた。そして、いつの間にか自分に新しい友人ができていたのだと知った。単なる相互フォローとかを超えて、彼らは確実にかけがえのない友人になっていた(少なくとも自分にとっては)。環境の変化でリアルの友人とほとんど交流がなくなって、もうこの先新しい友人ができることもないのかもなあ、と思っていた自分は、それが間違いだったことに気づいてまた泣いた。


それが9月25日だったことに、翌日ふと気づく。
(正確にいうときっかけは24日なのだけれど)

こんどはすこし違う感慨の涙がまたこみ上げてきてしまい、自分は一人混乱する。

その日が映画を観て1年後だということすら、忘れていた自分。自分の人生の脚本家はそれを忘れていなかった。


ちなみに白状すると、ハロワで知り合った方から頂いた言葉に救われてこっそり泣いたことは、これが初めてではない。ぱっと思い出せるだけでも3回はある。涙が出るほどではないにしても人の情けが身に染みて胸が熱くなったことなら何十回もある。特に涙もろいほうでは全然ないのだけど、それだけ彼らの優しさに自分が救われてきたということだ。


そして今日、2020年9月26日。

土曜日ということもあり、Twitterのタイムラインはちょっぴり賑やかだ。自分のしょうもないツイートにもいいねやリプをくれるフォロワーさん達。感性の近い本読みさんが今度初めてハロワを観ると教えてくれる。一回も話したことのなかった方が意外にもハロワ以外の話題に食いついてくれる。尊敬する作家さんの書かれた作品に圧倒され言葉を失う。自分の好きそうな作品やらニュースやらガジェットやら美味そうなメシやらの情報がどんどん流れてくる。久しぶりに見るアイコンに、元気そうだとほっとする。自分の買い物に色々アドバイスをくれるみなさん。こちらもついつい色々な人に声をかけてしまったりする。今日も友人の言葉にまたまた救われてしまったり、初めて知り合った方とラストシーンを熱く語らせていただいたり。


この空間。誰と会ったこともない。相手の年齢も性別も職業も住んでいる場所もまるで知らない。テキストだけに媒介されたただのデータの世界だ。でもだからこそ、そういうリアル属性から解放されているからこそ僕らは『HELLO WORLD』だとか野﨑まどだとかSFだとかいう純粋な概念だけでもって、ゆるくつながっている。それでいて、そこに流れる文字には体温を確かに感じることができる。心を通わせ、友情を育み、力を授けられ、新しい世界を見せてもらうことだってできてしまう。でも必要以上に立ち入らない。来るものは拒まず、去る者は追わず。この適度な距離感(メトリック)の空間を流れる空気に自分はほんとうに助けられ、生かされている、と思う。そして顔も知らないそのひとりひとりのアイコンの背後にほんとうはリアルの人生があることに思いを馳せる。それぞれの物語の持つあまりの情報量に、しばし圧倒される。


きっと自分は今後もしょうもないことばかりつぶやくし、失言や顰蹙を買うようなことを言ったり、人を心配させるような愚痴を吐き出したりしてしまうと思う。いつかはハロワのこともどうでもよくなってしまうかもしれない。

でも、今日から始まる新たな1年を、ともに生きていってくれる大切な友人のみんなに。

そしてこのすべてのご縁をもたらしてくれた『HELLO WORLD』という作品に。

ただ、心から言いたい。


ありがとう!


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