【コラム】世界母乳育児週間
World Breastfeeding Week
8月1日は「世界母乳育児の日」、WABA(世界母乳育児行動連盟)は、WHO(世界保健機構)とUNICEF(国連児童金)の援助のもと、1992年に世界母乳育児の日を定めました。その週はWorld Breastfeeding Week(=世界母乳育児週間)として、世界中で母乳育児に関する情報発信や経験交換イベントなどが行われています。2024年のテーマは「格差をなくす : すべての人に母乳育児を支援 (仮訳) (Closing the gap : Breastfeeding support for all) by 世界保健機構」だそうです。
完全母乳育児とは
生後6ヵ月まで完全に母乳のみで育てる事を意味しています。
粉ミルク、白湯、お水、離乳食などは与えず、生後6ヵ月の赤ちゃんの口に入るものは、全て母乳として育てるという育児方法です。
※乳児が低体重(未熟児)の場合や疾患がある場合、紛争や災害時に国連が定める衛生などの基準をクリアーした場合など、医師などの判断で母乳以外を推奨する場合があります。
母乳育児が推奨される理由
国によってその理由は異なりますが、多くの開発途上国と言われる国では、衛生的に哺乳瓶を取り扱ったり、粉ミルクを調合するための衛生的な水を確保することや、識字率の問題で正確に粉ミルクを調合することが非常に困難な場合が多かったり、粉ミルク事態の質が悪かったり、製造管理が不十分のため粉ミルクに異物混入があったりという状況です。
それに加え、粉ミルクを購入するためのお金がないという経済的な理由から、安全で清潔で冷蔵庫や湯煎が不要であり、経済的な母乳を推奨をしている国が多いです。※もちろん、母乳に含まれる抗体や栄養素の効果への期待はエビデンスと共に前提としてあります。
それでは先進国など、衛生管理や品質管理が行き届いている場合はどうかと言いますと、その場合は先進国ならではの女性の社会参加(ここでは、組織に所属し就労する等を指す)が加速していることが背景にあり「子どもとのスキンシップ」「母と子どもの愛着形成」などが主の理由として母乳育児が推奨されている印象を受けます。
※他にも、母乳を与えることで母親はオキシトシンというホルモンが出て、幸福を感じたり、産後ダメージを受けている母体の子宮の回復にも良い影響を与えてくれると言われています。
母乳育児率の世界目標
母乳育児率の世界平均目標は、世界保健総会以下に定められています。
2025年までに50%
2030年までに70%
※2023年時点での実際の母乳育児率世界平均は48%!!
他の多くの国では、国の政策として完全母乳育児を推奨している国が多く、バナー写真のように母乳育児に関するイベントやパレードを行って保健省総出でプロモーションをかけたり、中には政府として哺乳瓶の輸入を規制したり、粉ミルクへの課税を重くしたりという施策を打っていた国もあったようです。
日本と完全母乳育児
日本は水道の水が飲用可という珍しくも素晴らしい希少な国でもあります。国民全体の識字率は高く、一般家庭でも十分に哺乳瓶や粉ミルクを正しく安全に取りあつかえることでしょう。
しかしながら、日本は非常に独特の背景を持ち合わせ国であり、完全母乳育児を政府として推奨する動きは特に大きくありません。
その理由としては、世界でも先駆を行く超少子高齢社会国であることにより、乳児の母親であっても仕事を休まず国のために働かざるを得ない状況がまだあったり、企業側は産休育休や時短勤務などの福利厚生を整えるなどの努力は感じるものの、母乳バンクの設立や乳児を預ける保育園などに栄養士/看護師の設置義務がなかったりと、国としてはまだまだ子育てがしやすい社会・制度整備が遅れているからではないでしょうか。
もちろん、母親を含む乳児を取り巻く大人達は、乳児に何か異変があった場合でもすぐに気づきやすい能力を持ち合わせておられたり、救急車の救助の仕組みや医療の質も高く評価されている日本ですので、素地として生命に関わるリスクが圧倒的に低いということは、胸を張って挙げられる点かとも思います。
※日本では子どもの発育や母体の身体的な回復とは別の次元で、母親や父親の産前産後鬱や、乳幼児の虐待死の方が深刻です。
終わりに
ちなみに国際的なルールとしては、紛争・災害時には粉ミルクは支援物資としてNG商品に登録されています。間違えて支援してしまうと世界保健機構などからペナルティの通知が届くかもしれませんのでお気をつけて。紛争・災害時の国を超えた支援では、液体ミルクがメジャーです。
栄養学や食品化学が明らかになり、保健や医療サービスの質と選択・提供率が100%になり、平和構築・安全保障が担保されていったとしても、社会環境・生き方働き方・個人の価値観などが多様化している現代においては、育児の方法1つとっても「これがベスト!」とは断言しにくいものです。
母乳・ミルクの選択は、身近な専門家にぜひ相談してご自身(ご自身の家庭や職場)に合った方法を一緒に見つけましょう。
Post by 太田旭