APEX大会での失言の件に関しての違和感

1、事の経緯 

 本件は8月2日に開催された、渋谷ハル主催Vtuber Apex最協決定戦の事前カスタムの中で、神成きゅぴ・塩天使リエルの発言に端を発する。以下のリンクから確認できるが、端的に言えば、カスタムに参加していた渋谷ハルに対して、「おなってる」等、自己満足のためにカスタムに参加しており、参加者でない者が大会の事前練習においてパワーバランスを崩すべきでないとの趣旨の、批判的な発言をしたのである。


それに対して、渋谷ハルはtwitterで参加者からそのような発言されることに「複雑である」とツイート。


最終的に神成きゅぴ、塩天使リエルは動画、twitterにおいて謝罪し、本人に対しても直接謝意を示したと述べている。



2、違和感

 以上の事実を踏まえて、私の感じた違和感とは神成きゅぴ・塩天使リエル両名が100%悪いのか(斟酌できる事情がないのか)、渋谷ハルの本件に対する対応、姿勢はどうであったのか、というものである。ここで断っておきたいのは、私が主張したいのは、神成きゅぴ・塩天使リエルは悪くない、あるいは渋谷ハルは間違っている、ということではないということである。まず前提として神成きゅぴ・塩天使リエル両名の発言は大会主催の渋谷ハルに対してリスペクトを欠くものであり、ほめられたものではなく、当然それに対して抱く感情として渋谷ハルの不満は十分納得のいくものである。しかし本件では渋谷ハルの当該ツイートの中のリプライや関連動画の中でのコメントにおいての全体の流れを見ると、神成きゅぴ・塩天使リエルがただ悪く、渋谷ハルが可哀想だといった流れが大勢を占めており、私はそういった本件の捉えられ方に対して、違和感を感じているのである。

 つまり端的にいえば、私が本稿で考察したいのは、神成きゅぴ・塩天使リエルにまず非があるということを前提としたうえで、その非の程度をとらえるにあたって、どのように考えるべきかということである。そしてそれに関連する形で渋谷ハルの対応、姿勢についても考察していく。


3、斟酌すべき事情

 渋谷ハルは自己満足でカスタムに参加しているという趣旨の発言の背景はどのようなものだったのか。

 この事前カスタムは大会開催にあたってカスタム権を得た渋谷ハルが、大会の事前練習という位置づけで、全9回にわたって開催したものである。基本的に大会参加選手優先で参加することになり、人数が足りなければ、参加選手でないVtuberに応募をかけ参加してもらうこととなっていた。またチームとして助っ人のVtuberを呼ぶことも許可されていたし、プロによるコーチング及びコーチのカスタム参加も運営である渋谷ハルから周知されていた。つまりルール上渋谷ハルがカスタムに参加することに何の問題もない。実際に渋谷ハルは様々なチームにコーチとして参加し、コーチングもプレイ中に適宜的確なアドバイスをし、コーチングを受けたチーム、視聴者からの反応は好評なものしかみかけていない。

 ここまでをみると何も問題がないようにみえるが、ここで着目したいのは実際にそのコーチングが有益かどうかであったかということではなく、コーチが実際にプレイに参加する必要性がどれほどあったのかという点である。実際にコーチングを受けたチームにとって有益であったという声がほとんどならば必要性も認められるだろうとも考えられそうであるが、ここで考慮すべきは、コーチングを受けているチーム以外への影響である。

 プロに近い実力を持つ渋谷ハルが参加することで実際にかなりの数のチームをキルし、チャンピオンも数回とっている。この中で頭一つ抜けた実力によってやすやすとキルされた人にとっては当然練習としての有効性が著しく小さくなるのは言うまでもない。このとき、そのように強い人にひき殺されることも練習になる、コーチングを受けたチームの伸びしろを考えれば総合的に有益性が勝る、といった反論が聞こえてきそうであるが、ここで私が指摘したいのは、渋谷ハルがカスタムに参加することによってプラスだけでなくマイナスも存在するという点である。ここで本旨に立ち戻るが、私がこの段落で考察したい神成きゅぴ・塩天使リエルの斟酌すべき事情とはこの部分である。すなわち渋谷ハルがカスタムに参加することによるプラスとマイナスを比較衡量して仮にプラスであるとしても(私はプラスのほうがかなり大きいと思っている)、マイナスを肌で感じてしまったときに、プレイヤーの受け取る感覚として不満を覚えるとは仕方がないことではないかということである。この不満が本件の不適切な発言につながったのではないか。

 繰り返し述べるが、私は仕方ない事情があれば今回のような不適切な発言をしても言ってよいと主張しているのではない。しかし神成きゅぴ・塩天使リエルが一方的に悪役にされてしまうことには強く抵抗がある。動画の中での発言を見る限り、渋谷ハルに対する強い悪意に起因する発言ではなく、上述した不満を覚えることにある程度の理由が認められる背景に加え、試合に負けてしまった悔しさをもってして出てしまった発言であると思われる。FPSの動画を見ていると負けた際の口汚い部分はよく見かけるものであり、それがいいかわるいかはともかく、そういった慣習がある中で今回の件を取り立ててあしざまに言ってしまうのは理不尽に感じてしまう。


4、渋谷ハルの対応について

 まず前段で書いた点に関してであるが、渋谷ハル自身が両名を一方的にあしざまにいっているという事実はなく、参加者から自己満足というような言い方はされるのは複雑という率直な感想を書いているに過ぎない。そしてすでに述べた通り、それも正当な感想のように思われる。ただ少し気になるのは、「言いたくなる気持ちは分からなくはないけど」と相手への理解を示しているが、その理解がすこし的外れに見えることである。私はこれまで神成きゅぴ・塩天使リエルの発言は、参加者でない者が大会の事前練習においてパワーバランスを崩すべきでないという不満に基づいているとの解釈で議論を進めてきた。しかし渋谷ハルのツイート内の反論は、「各チームにコーチが入ることを基本的に認めてる」、「全チームが上手い人とのコネクションあるわけじゃないからそこは寛容になって欲しい」の2点であり、自身の参加がパワーバランスを崩していることへの不満と解釈しているというより、神成きゅぴ・塩天使リエルのチームにコーチを呼ぶことができないことに不満を抱いていると解釈しているように思われる。動画内の発言を見るに、コーチの不在に対して不満をもっているようには思われず、渋谷ハルの解釈について疑問が残る。

 そしてさらに考慮していきたいのは渋谷ハルが大会主催者という点である。というのも大会直前に大会主催者がそのような指摘をすることにどれほど意味があったのかということである。仮に発言内容が完全に正当であったとしても、この言及によってプレイヤー、視聴者が感じる悪印象は少なからずあったはずだ。大会後であったならばまだしも、大会直前に余計なリスクをとる必要があったのか。そしてtwitter内で名前を出すことはなかったが、少し調べれば発言者が誰かわかることであり、実質的に晒上げるような形で自らの不満を表明する必要があったのか。今回は炎上と言われるほどでもなく、大きく反応をされることもなかったが、インターネット界隈での炎上は本当にささいなきっかけで起こるものであり、炎上した場合の大会への影響は甚大なものであっただろう。渋谷ハルはこの趣旨のリプライに対し、「運営って全部我慢しないといけないんすねぇ」とリプライを返している。しかしこのリプライもまったく反応するなと言っているのではなく、大会後にでも言えばよかったとの趣旨に思われる。それに対してこの反応はなんというか子供じみているようにも見える。

 今回の大会が前回のPUBGに続き2回目であり、今後もこのような大会を開催したいとの発言をしているが、このように俺は間違ったことは言っていないと、軽率に発言していくような姿勢をもっている運営には非常に不安が残る。


5、総括

 以上をもって私が主張したいのは2点である。

①神成きゅぴ・塩天使リエルの発言は非が認められるものであるが、今回多くの人に捉えられているほど悪いものではないのではないか

②渋谷ハルの対応にも間違った点があったのではなかったか

 拙文、長文失礼しました。よければみなさんの意見をお聞かせください。


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