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創世のヴィクトリア 第1話

[あらすじ]
夏の大三角から南に幾光年
赤く輝く恒星アンタレス

太古よりその星を治める王族の統制は突如として崩壊

聖王アルタイルの后妃ヴィクトリアは星を追われ、太陽系3番目の星へと投獄されるのであった

7月7日、1年に1度、22の光は1つとなりて天高く、それは女王を導く天ノ川

幾年もの刻、幾つもの光の犠牲を繰り返し
2人はひと時の愛を分かち合う

2030年 4月1日
黒木 楓は想い人によく似た顔の青年、来宮 暁人に出会う
この出会いは、再会を願う女王の物語を終焉に導くのであった

[主な登場人物・名称]

アンタレスの聖王・アルタイル
星を繋ぐ星道・デネブ
女王を導く22の光・人口知能搭載兵器VEGA-ベガ-
VEGAの所有者・聖導者(キッド)

主人公
来宮暁人(キノミヤアキト)22歳
VEGA Exe-エグゼ-の所有者

黒木楓(クロキカエデ)22歳
后妃ヴィクトリアの人間体
VEGA Lva-レーヴァ-の所有者

黒木柳(クロキリュウ)35歳
黒木楓の保護者
VEGA Gaia-ガイア-の所有者

高梨葵(タカナシアオイ)22歳
VEGA Luna-ルナ-の所有者

高梨蒼(タカナシアオ)20歳
高梨葵の弟
VEGA Aria-アリア-の所有者

藤木駆麻(フジキカルマ)22歳
アンタレスからの使者
VEGA Sola-ソラ-の所有者

飾美稲穂(カザミイナホ)27歳
VEGA Aegis-アイギス-の所有者

夏目優良(ナツメユラ)21歳
VEGA Tyr-ティル-の所有者

エボル・アンタレスに住む生命体、人間の魂を食料としている

五大天皇・聖王以上の権力で事実上アンタレスを統制している5体の上位エボル



[第1話] GOOD LUCK

2030年 7月7日
22の光と共に一人の女性が天へと昇る

同年7月8日
22の光は日の出と共に再度地上へ降り注ぎ、新しい年を迎えるのであった

午前7時 とあるアパートにて

黒木 楓(以下楓)「お兄ちゃんただいまー…ってかおはよう…」

・楓は眠たそうにアパートのドアを開ける

黒木 柳(以下柳)「おかえり…楓、どうだった?」

・デスクワークを中断し、柳は楓を迎える

楓「まぁ…いつも通りだよ」
・少し悲しそうな表情の楓

柳「…そうか…でも大丈夫なのか?」

楓「え、なにが?」

柳「どっち付かずは良くないと思うぞ?」

楓「…………わかってる……わかってるよ…」

・楓は荷物を片付け始め
・柳は再びパソコンへ向かう

柳「私達の関係も、おそらく今期が最後になる」

楓「!!?」

柳「もちろん、暁人や…友達ともな」

楓「…………そっか」
「…じゃあいつも通り…人選は頼むね!お兄ちゃん」

柳「あぁ、今期の引き継ぎは、私達2人を含め5人…かなり多かったな」

楓「もう5年か…ついに終わりが見えてきたんだね…、あ!一応言っとくけど、暁人だけは絶対キッドにしちゃ駄目だからね!」
・忙しそうに準備をしながら、柳に念を押す楓

柳「はいはい…わかってるよ!」

楓「絶対だからね!じゃ行ってきまーす」

・楓は準備を済ませ、施設に住んでいる暁人を迎えに行く

柳「……わかってるよ…楓…」

児童施設『流星』
黒木 柳が管理者となり、保護者のいない0歳から22歳までの子供を預かっている

来宮 暁人(以下暁人)「198…199…200」

・施設の一室で暁人は早朝のトレーニングをしている

楓「おっはよー暁人ぉ!大学行くよー」

・楓はノックもせず部屋に入る

楓「わぁ!」

・暁人の肉体美に、楓は照れてしまう

暁人「いや…だから勝手に入るなって」
・トレーニングを中断し、汗を拭く暁人

楓「だって、いつも鍵開いてるし、開いてたら入るのがパターンでしょ!ほら!早く準備して」

・暁人と楓は徒歩で大学へ向かう

楓「ねぇ…なんで体鍛えてんの?」

暁人「うーん…なんでだろう、来るべき時のため?」

楓「………え?…どういう意味?」

暁人「わかんない!でも…声が聞こえるんだ」

楓「…へぇ……ど、どんな声なの??」

暁人「ん?秘密!!」

・突然走り出す暁人

楓「ちょっと!待ってよー!なんで走るのーー!?」

暁人「ほら!楓もトレーニングトレーニング!」

・暁人の後ろ姿を見ながら楓は思う

楓『大きい背中、やっぱり暁人は短い髪が似合うなぁ、相変わらず顔もあの人に似てる』
『私の一目惚れから付き合い始めて、もう3ヶ月…』
『…わかってる、夫がいるのに彼氏がいるなんて…ありえない…、それでも好きなの…』

楓「あっ!」
転けそうになる楓を、暁人がさっと支える

暁人「ちゃんと前みろ」

楓「ごめんごめん!」

楓『私は…暁人が好き…』

・大学に着いた二人は別々の講義を受けるために、一旦別れる


高梨 葵(以下葵)「楓、おはよ」

・通路で友人の葵に声をかけられる楓

楓「あ!あおぃーおはよー!」 
・頬をスリスリする
「今日も黒髪ツルンツルンだねぇ」
・髪をナデナデする

葵「朝から近いな!…もう!」

楓「う〜ん、あおぃ〜」
・まだスリスリしている

葵「楓…後でちょい話がある」

楓「ん?」


・午前の講義が終わり、屋上で待ち合わせをしていた楓と葵

楓「葵も無事に引き継ぎ出来ててよかったよ…安心した!」

葵「1期で2回も解放したからね…流石に焦ったし、疲れた……」
「でもアンタを見届けるまでは頑張るつもり」

楓「ごめんね葵…私が巻き込んじゃったのに…」

葵「いいのよ…私が自分で決めた事なんだから」

楓「…そっか…でも本当によかった、蒼も無事に帰ってきて…葵とも、また会えた…」

葵「また1年…よろしく」
「…って、そうそう!報告会のために楓を呼んだんじゃないの」

楓「…?どうかした?」

葵「いきなりだけど、多分今日…」
「この大学から半径20Km、ミドルレンジの収穫が来るよ…」

楓「え!?いきなり中距離の磁場が発生してんの??」

葵「まぁ…引き継いですぐだけど、向こうはこっちの都合なんてお構いなしだから…」

楓「マジか…まだお兄ちゃんも人選が終わってないはずだから、対応できるキッドが少ない…」

葵「とにかく、私が出来るだけ何とかするから!アンタは単位取ったらダーリンと遠くに逃げて」

楓「う……でも…」

葵「巻き込みたくないんでしょ?大丈夫だから、また貸しね!」

楓「……う〜ありがと〜葵ぃ〜」

・夕方
・楓と暁人は一緒に帰る

楓「暁人ー!いっしょ帰ろー」

暁人「おう」

・帰宅途中

楓「…ね、ねぇ暁人、すっごい美味しい唐揚げ屋さん見つけたんだよ!今から行かない?」

暁人「え?また唐揚げ!?いいけど……」

・スマホのナビは目的地まで30kmの表示

暁人「って30km!!?遠くないか?」

楓「ちょ、ちょい遠いけど、行きたいなぁって!…ダメ?」

暁人「マジか?……まぁ…イイよ」

楓「やったーー!」

『ゾクっ………』
暁人・葵「!!!?」

・2人は突然何かの気配を感じる

暁人「今のは…?」

楓『…待って…早いよ…』
・楓は焦りの表情

暁人「?…楓、なんか変な感じしないか?」

楓「え?あ…そ、そうかなぁ?」
『待って待って待って!なんで暁人が磁気感じてんのよ!』

暁人「あっちか」
・走り出す暁人

楓「!?暁人!待って!!」
・暁人を追いかける楓

暁人「楓!なんか変な感じがするから、お前は先に帰ってろ!」

楓『そーれーは!私のセリフーー!』

暁人「え!?なんて!?」

楓「あーーーもーーーぅ!」

・数分走った2人

暁人「!!!!」

・通行人の女性の背後から黒い渦が発生し、中から異形の手が現れる
・その手は女性を掴もうとする

暁人「またアレか!!!」

楓『!?……また…って』

・女性は渦の中に引き込まれ、それを助けてようと暁人は手を伸ばすが、弾かれてしまう

暁人「………くっ…やっぱダメか…」

楓「…暁人…なに…やってんの?」

暁人「楓…見ただろ?変な渦の中に女の人が……」
「あの中に入る方法とか知らないか!?」

楓「え!?……入って…どうするの?」

暁人「なにって!助けないと!」
楓「ダメっ!!!!!」

暁人「!?」

楓「………ごめん…、やめてよ…危ないから…」

暁人「楓…あれが何か…知ってんのか?」

楓「………あれは…」

・渦が楓の背後に現れる

暁人「!!」「楓!後ろだっ!!!」

楓「!!?」

・暁人は楓に向かって走り出し、手を伸ばす

楓「暁人!ダメっ!来ないでぇ!」

・暁人は楓の腕を掴み、弾かれる事なく一緒に渦に引き込まれる


・回想シーン
・3ヶ月前、柳に連れられ楓は初めて施設流星に向かう
・そこで想い人に似た暁人を見つけた楓は固まってしまう
・暁人は不思議そうに楓を見つめる
・翌日、大学で暁人を見かけた楓はすぐに駆け寄る
・いきなり暁人に告白をし、なんとOKを貰う楓
・一緒に食事をし
・買い物の時はそっと荷物を持ってくれる暁人
・楓の話を楽しそうに聴いている暁人
・2人で夜空を見上げる

楓『……暁人…』
『……ごめんなさい、アルタイル様…』
・回想おわり

・暁人が目を覚ますと、そこには見たことのない荒野が広がっていた

暁人「っつ……頭痛ぇ…」「…楓…楓は?」

・暁人が振り返ると、目の前に楓が倒れている

暁人「楓っ!!」

・倒れた楓を暁人は抱き抱える

楓「暁…人…、よかった…」
・楓は今にも朽ち果てそうな表情で暁人を見つめる

暁人「楓!何があった!?……どうして…」

ライトニング(以下ライト)「…○○○○」

暁人「!!!?」
・暁人は声が聞こえた方を見る

・距離にして約10m先、そこには見たことのない生物がいた

・体長2m以上、全身は黒く所々に白と灰色の模様

・目は黒い結膜に白い角膜、聴いたことのない言語を使う

・暁人は察する
・楓が倒れている原因はアイツだと

・楓が暁人の頬に手を伸ばす

楓「……暁人……○○○……」

・楓は何かを言い残すと、ゆっくりと灰になり消えていった

暁人「……かえ…で?」
「ちょっと待てよ……!」
「なんだこれ……!!!」
「楓っ!うぁーーーーーーーあーっ!!」
・暁人の悲痛な叫びが荒野に響き渡る

・そこから2km離れた荒野

葵「!」
・何かを感じ取り振り向く葵

ルナ「?…どうかしたの葵ちゃん」

葵「いや…なんでも…」

・葵は白と黒の全身スーツを纏い、弓の様な形状で両方の弓幹に刃が付いた武器と話しをしていた

ジード「いやぁーーーー!」

・岩陰から暁人が出会した生物とは違う、小ぶりの個体が姿を現す

ルナ「あ、いた」

ジード「何なのネこの女ハンターは!?」
「ここは逃げるが勝ちネーーっ!」

・葵に追われていたジードは目にも止まらぬ速さで逃げていく

葵「はぁ…めんどぃ…」

・ゆっくり歩いて追う葵

ルナ「葵ちゃん?追いかけないの?」

葵「今追いかけてるじゃない?疲れたのよ…ゲート多過ぎて…」

ルナ「でも急がないと!ジードに逃げられる」

葵「うん…それもそうだね…」

ルナ「ね!じゃあ急ごう葵ちゃん!!」

葵「うん」

・葵はペースを変えずに歩き続ける

ルナ「走れや!このクソ女ぁーー!!」


・舞台は暁人の場に戻り

ライト「○○○○」

・暁人に向かって歩き出すライトニング、何かを言っているが暁人は聞き取れない

・膝をつき悲しんでいる暁人の両手には、砂になった楓が残っている

暁人「テメェがやったのか…」
「誰だか知らんが…タダで帰れると思うなよ」

ライト「!?……○○…○○○」

・ライトニングが拳を固めた瞬間、暁人の近くに黒い渦が発生

・中からフードを被った柳が現れる

柳「やめておけ暁人…秒で死ぬぞ」

暁人「!!…えっ!?柳さん!?」

ライト「…………」

・フードを脱ぐ柳

柳「やはり…こうなったか…」

暁人「!!……柳さん…楓が……っ!」

柳「19人目…」

暁人「え?…」

柳「受け取れ…暁人…」
「人工知能搭載兵器VEGA…」
「Exe-エグゼ-をお前に授ける…」
・柳の言葉の後に、エグゼが空から降り地面に刺さる

暁人「!!!?」

柳「楓が…お前の[理由]になった…」

暁人「ちょ…待ってくれ柳さん!何が起きてんだよコレ!訳が…」
柳「GOOD LUCK!暁人!」

柳「じゃ!」
・柳は爽やかな笑顔で振り返り、再び渦に入っていく

暁人「じゃ!じゃねぇ!ちゃんと説明し……!!!!」
・ライトニングが突然暁人に襲いかかるが、柳から託された長剣で弾く

ライト「……ほぅ…」

暁人『危ねぇ!マジで鍛えててよかった…じゃなかったら、今のでたぶん死んでたぞ!』

エグゼ「あーっ…えっと、ゴホン…」
「アキト キノミヤの生体データを確認」
「からの…なんだっけ?」
「あ、そうそう…新規所有者への登録を承認」
「初期データのダウンロード開始…っと」
・長剣から聞こえる音声

暁人「……え?」

エグゼ「ダウンロードが完了するまで、創衣の着用、アクターキューブの使用はできませーん」
「ドンマイあっきー!!」

暁人「……は?…は?」
・長剣からの音声に戸惑う暁人

・そして長剣を起点に、葵が纏っていたモノと同様の白と黒の全身スーツ、その男性バージョンが暁人を覆う

暁人「お!お!!?」

ライト「…ふっ、ハンターになったか…」
「先ほどの殺気といい、反応速度といい…」
「中々面白い奴だ…」

暁人「!!!?」
『奴の言葉が理解できる…エグゼってヤツの影響か?』

暁人「お前は……何なんだ!?」
「それに、この場所…」
「なんで楓を殺したっ!!?」

ライト「…何を言っている?キサマの…」
ジード「ライト様ぁーーーー!!」

・突然ジードがライトニング目掛け飛んでくる

・ライトニングはそれを交わし、ジードは暁人の方へ

・暁人はエグゼでジードを叩き落とし、ジードは頭から地面に刺さる

ジード「ふぐっ…」

ライト「ジードか…相変わらずだな…」

暁人「くっ…もう1体いたのか!」

ジード「ふぐぅ…ライト様…気をつけて下さい…ふぐっ…目つきの悪い女ハンターが…」

ライト「?」

・瞬間、上空から葵が強襲してくるが、ライトニングはそれを回避する

暁人「!!!?」

ジード「出たぁーーー!」
・地面に刺さったままのジードは足をバタバタさせる

葵「……誰が目つき悪いって?」

ライト「!!……」

暁人「!!…キミは…確か楓の…」

葵「!…うそ…なんでアナタが…キッドに!?」
「…楓は!?」
・葵は暁人の顔を見て驚く

暁人「…………楓は…」
・暁人は砂になった楓の方を見る

葵「…話は後で聞く…今はコイツらの相手が先」
・少し察した様子の葵は、すぐに気持ちを切り替える

暁人「…わかった…何なんだコイツらは!」
「こんな生物見たことないぞ!」

葵「コイツらは、エボル」
「この星に住む生命体だ…」
「デカいのがフェーズ5のライトニング」
「で、そこに刺さってるのがフェーズ2のジード」

暁人「この星!?」

葵「訳わかんないと思うけど、とにかくあなたは私の援護よ」
・葵がライトニングに武器を向ける

暁人「…………いや…」
「………こいつは…俺が殺る!……」
・葵をどかしライトニングに剣を向ける暁人

葵「!…アナタのVEGAはまだキューブが使えないでしょ!」
・暁人の左手の甲にあるクリスタルから出た小さな光がクルクル回っている(ダウンロード中)

暁人「状況わかんねぇけど…こうなったのはたぶん俺の責任だ」
「俺がアイツを倒さないとダメなんだ!」
「頼む…」

葵「……ったく、楓もこんな男のどこがいいのか……わかったわよ援護してあげる」

ライト「ふっ…雑談は終わったか?少しは楽しませてくれ」
・肩を慣らすライトニング

暁人『…何が起きてるのか、俺にはわからない…それでも、アイツだけは…!』

ジード「ぐぬぬ…抜けないのネ!」
・まだ地面に刺さってバタバタしている

葵「ヤバくなったらすぐに攻守交代よ!」
葵「…ルナ!!」

ルナ「オッケー!」

・葵の左手の甲にあるクリスタルが光り
・手のひらサイズのキューブが出現
・そのキューブには『創』の文字

葵「創衣変身…」
・葵はキューブを砕く

機械音声「チェンジアクター」

・葵がそのキューブを砕くと、音声と共に砕けたキューブの破片が肥大し、葵を覆うように光の立方体が作られていく

機械音声「GOOD LUCK!」

・光の立方体を葵が内側から砕き、変身した葵が姿を見せる
・葵の創衣は、ベーススーツの上から赤い生地に黒模様が混ざっている、孔雀をモチーフにした陣羽織

暁人「!!!!!」

・ピリついた空気が周囲を覆う

葵「始めよう…真紅に燃える、命のやりとりを…」

第2話へ続く

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