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guilty-A 第3話

第3話[父の遺産]

・エスタノール航空771便の事件から8時間後、医療看護部の病室で目を覚ますエリー

エリー「う…っ…僕は…どうして…」

ジェレミー「おはよぉ、エリー氏ぃ」

・エリーが寝ているベッドの横で椅子に座っているジェレミーは、ホログラムを触りながら気さくに挨拶をする

エリー「…?、ジェレミー?」
「ってことは…ここは、医療看護部…」

ジェレミー「いやぁ、よく生きてたねエリー氏ぃ」
「やっぱりハイパーソニック・エフェクトの効果かなぁ…ふむふむ…」

エリー「ハイパーソニック・エフェクト…」

ジェレミー「そ、レナス・オルティーヌが起こしたんだ」
「凄いよねぇ、君の父親パピー以来じゃないかなぁ」

エリー「…レナス?」
「………………レナス!!!!」
・エリーはベッドから急に起き上がる

・ジェレミーが人差し指を下すと、エリーの体が過重力によってベッドに沈む

エリー「…くっ、ジェレミー…なにするんだよ」

ジェレミー「まだ寝てなって、ってかデータ取らせてぇ〜」
「今の君は貴重なんだから♡」

エリー「…なんか、ぼーっとして過重力の中和ができない…」
「レナスは…どこにいるの?ノアも…」

・ジェレミーはホログラムの切り替えをし、エリーとレナスが墜落した・・・・状況の映像を見せる

ジェレミー「メディエルセブンから北西27Km地点に君たちは墜落した」
「こんな巨大なクレーターを残してねぇ…」
「あ、ちなみ771便の乗客は全員無事だよ」

エリー「!!!」
・直径200mほどのクレーターを見たエリーは驚く

ジェレミー「エリー氏は・・・・・無傷」
「レナスは意識不明の重体さ…」
「なんとか生きてるけど、全身のあらゆる箇所がボロボロで」
「ただ生きてるってぇ、状態…」
「今こっちで保管してるよぉ…転送者達・・・・と一緒にね」

エリー「……なんで…」
「なんで僕だけが無傷なんだ…あの高さから落ちて…」

ジェレミー「………レナスが…」
「レナスがそれを望んだ・・・・・・からだよ、きっとねぇ…」
「自分のイメージ通りに現実を書き換える…」
「それがハイパーソニック・エフェクト」

エリー「!!」

ジェレミー「とは言っても…反応は一瞬だったからぁ、自分の体は治せなかったみたい…」

・医療看護部の管理下にある液体の入ったカプセル、その中にレナスは入っていた
・これは脳波の調整が困難になった者が強制的に入る生命維持の液体で…

エリー「あの液体に入って復帰できた患者はいない…」
「うぅ…ごめん、レナス」
「君を…救えなかった……ごめん…」

・エリーは顔を両手で隠しながら涙を流す

ジェレミー「僕にも聞こえた…」
「レナスの…『生きて』って声が…」

ジェレミー「彼女は望んで君を助けたんだ…」
「決して、救われていない訳じゃない・・・・・・・・・・・・
「…と思うけどなぁ…」

ジェレミー「それに、まだ生きてる…」

エリー「…………そう…だね…」
「……………」

エリー「…ありがとう…ジェレミー…」

・涙を拭ったエリーは拳を強く握った

エリー「………レナス…」
「…いつか、必ず……」

ジェレミー「さってとぉ〜、僕は少し離れるけど、休んでる間にノアにも礼を言っておいた方がいいんじゃない?」

・椅子から立ち上がり、部屋を出ようとするジェレミー

ジェレミー「君たちをクレーターから救出したのはノアだょ」
「相変わらず暑苦しい奴ぅ!」

エリー「………ノア…」


・エリーが目を覚ます少し前、ノアは心理療法部の部長室に呼ばれていた

アーサー「運良く被害は出なかったものの…」
「…ノア、なぜ無断で臨床心理士を同行させた?…」
『心理療法部・部長 アーサー・マーヴェリック』

ノア「申し訳ございません」
「彼はレナス・オルティーヌの精神状態に深く影響を与える者だったので、説得をさせるために急遽私が無理やり・・・・・・同行させました」
「処分は受けます…」

・アーサーは少し黙った後、軽くため息をつく

アーサー「息子のお前に『神楽』を与えたのは、好き勝手やらせるためではない…」

ノア「………」

アーサー「…わかっているな?」
「…次は迷わず・・・転送しろ」

・メディエルセブンの理事長が部長室に入室する

イザベル「まぁ、そう怒るなマーヴェリック」
『メディエルセブン理事長 イザベル・フォスター』

アーサー&ノア「!!!」

アーサー「理事長!?」「ご苦労様です」
・2人はイザベルに頭を下げる

・イザベルは部長室にある椅子に腰掛ける

イザベル「君の息子はワシの命の恩人・・・・じゃ」
「今回は許してやってくれ…」

イザベル「丁度、乗っておったんじゃよ」
「昨夜、771便にのぉ…」

アーサー&ノア「!!?」

アーサー「理事長!なぜ言って下さらなかったのですか!?」
「もしもの事があれば…!!」

イザベル「まぁ、大丈夫じゃろ…」
ノアきみが失敗しても、乗客は全員助ける予定じゃったからの」

ノア「………!」

アーサー「……では、昨夜の771便の事故は、理事長を狙ったものだと…」

イザベル「…どうじゃろうな」
「誰の仕業か知らんが、目的は別にありそうじゃ…」

アーサー「………レナス・オルティーヌ」

イザベル「…うむ、というより…」

ノア「……………」
「……ハイパーソニック・エフェクト」

アーサー「…お前も聞こえたのか?彼女の声が」

イザベル「自力でハイパーソニック・エフェクトを引き起こした者はおらん…」
「脳波の異常な上昇から考えるに、恐らく投薬されて・・・・おる」

アーサー「しかし、私が知る限りそんな薬は存在しません…」

イザベル「その通りじゃ」
「それに関して、少し心当たりがある」
「調査のため、君の息子を貸してもらえるかな? 」

ノア「!?」

イザベル「出発は3日後、同行は2名までじゃ」
「…では、よろしく頼むぞ」
「ノア・マーヴェリックよ…」

・ノアに極秘の仕事を頼んだイザベルは部長室を出る


[心理療法部・開放病棟の監視室にて]

ミラ「これは…どういうこと?」
『心理療法部・副部長 ミラ・ガルシアン』

・彼女は昨日、エリーがレナスのメディカルチェックを行った時間帯の監視カメラの映像を確認していた

・カメラには、通路で急に振り向くエリーの姿が映る

ミラ「…この感じ…」
「たぶん、ヴァイオレットさんは何かを見てる…でも…」
「…彼の他には誰も映っていない・・・・・・・・

・しばらくして、急に苦しみ出すレナス
ミラ「!!?」

・カメラには音声も記録されていた

レナス「エス…ノール…航空…」
「……便…」
「20時…」

・夜の映像では、レナスが病室の壁を破壊し、脱走する姿が映る
・その後、レナスは突如現れた空間の切れ目に入り、姿を消した

ミラ「!!!?…消えた?」
「私のアリスに似た…時空間移動…」



[高層ビルの最上階の一室]

・2人の男が密会している

エリーとすれ違った男(以下、男B)
「申し訳ありません、イザベルを仕留め損ないました…」

ピアノを弾いていた男(以下、男A)
「あのジジィはあの程度じゃ殺せんよ…」

男A「お前には伝えていなかったが…」
「イザベルはフェイクだ……」
「…当初の目的は果たしている」

男B「?…その、目的とは?」

男A「…ある男が残した遺産だ」
「いずれお前にも分かる…」


[医療看護部の病室]

・ベッドの上で、ノアに連絡を入れるエリー

ノア「なんだ?」

エリー「あ、ノア…」

ノア「俺も、お前に連絡を入れるところだった」
「理事長から極秘の仕事を預かったからな」
「3日後、お前とジェレミーを連れていく」
「準備しておけ」
「じゃあな…」

エリー「ちょっっっと待ってぇーー!」
・通信を切ろうとするノアを止めるエリー

ノア「なんだ?」

エリー「……いや…」
「…………ごめん、ノア…」
「僕が君の邪魔をしたから…」

ノア「…気にするな、お前のケツは何度も拭いてる」

エリー「………そうだね…」
「…ほんと、いつもありがとう…ノア」

ノア「…切るぞ」

エリー「あっ!」

・通信を切られたエリーは、少し微笑む

・ベッドから立ち上がり窓辺まで歩くエリー

エリー「強いなぁ…ノアもジェレミーも…」
「…このままじゃ…僕は誰も救えない」


「…父さん……」


[人の立ち寄らない廃病院にて]

・廃れた部屋に残されたパソコンのモニターに電源が入り、勝手に文字が入力されていく

『The mistakes of those who try to draw near to God』


つづく

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