見出し画像

guilty-A 第2話

[解説]
『ハイパーソニック・エフェクト(HS・E)』
人の耳に聴こえない超高周波音と、聴こえる音が複雑に組み合わさった音によって、脳の深い部分『基幹脳』が活性化され、免疫系や脳血流、認知機能の活性化が起こる

第2話[彼らの創る世界]

・ノアはいつでもレナスに攻撃できる状況を作り、1分だけエリーに説得を託す

ノア(エリー…上手くやってくれ…)
(この際、嘘でもいい…レナスの気を引くんだ…)
(お前は嫌がるだろうが…乗客の命には代えられん…)
(なんとしてもレナスの脳波を下げろ…)


エリー「レナス…正直に言うよ」
・エリーはレナスの肩に手を置く

レナス「ん?なぁに、エリー♡」
・レナスはエリーの目をじっと見つめる

エリー「僕は君を恋愛の対象として見たことはない…」

レナス「………えっ…」
・エリーの腰に置いていたレナスの手が緩む

レナス「………な、なんで…」
「…そんなこと言うの?」
「………酷い…酷いよ…!!」

ノア(エリー!?なぜ今そんなことを!?)
(レナスの脳波が3Hz以下になれば、拘束か転送、どちらかのカードを切れるんだぞ!?刺激するな!)
・ノアは少し焦りの表情を見せる

エリー「でもね……レナス、聞いて…」
「僕は君のことを『人』として愛してる」
「…嘘は、君への侮辱になるから…」
「こんな状況だけど…君の好意を受け取る訳にはいかないんだ…」
・エリーはレナスの目を見つめたまま話しを続けた

レナス「どうして!?…私はこんなにもアナタを好きなのに…」
「どうして、わかってくれないの!!?」
・レナスはエリーの手を振りほどく

エリー「ごめん…レナス…」
「それでも、僕は君を本気で助けたいと思ってる」
「その気持ちに嘘はない!」

レナス「うぅ………」
・俯き、拳を握りしめるレナス

エリー「一緒に帰ろう…きっと、またやり直せる…」「僕が全力でサポートするから!」


レナス「……ズルいなぁ…エリー先生は…」
「もっと好きになっちゃうよ…」
「なんでそんなに優しいの……」
「嘘でも好きって言えばいいじゃない…」
「その方が楽なのに…」
「楽に死ねるのに…」

・レナスは鋭く研いだ空気を右手の人差し指に集め、空気の刃を生成

・至近距離でエリーの左横腹を刺す

エリー「!!!」

[場面が移り]

夜のネオンが一際眩しいビルの最上階の一室で、1人の男がピアノに向かう

フランツ・リスト作曲
『愛の夢 第3番』の演奏が始まった


[場面は771便に戻る]

エリー「うぐっ……うっ…」
・左横腹を刺されたエリーは体勢を崩す

ノア「エリー!!!」「貴様ぁつ!!」
・ノアは銃口をレナスに向ける
ノア『雷皇神楽らいこうかぐら・壱式!!』

・ノアが放った銃弾は雷を帯び、大きく屈折した軌道でレナスの右手のみ・・・・を貫く

レナス「ぐぁっあっ!」
・レナスの右手は雷撃により痙攣

エリー「ノア……大丈夫だから…」「それ以上撃たないでくれ!…」

ノア「何を言っている!?奴はもう、お前の知ってるレナスじゃない!!」

エリー「……いや…レナスは、レナスだ…」

・エリーは横腹を刺され、出血した状態で立ち上がり、レナスの頭を自分の胸に押し付けるように抱きしめる

レナス「!!!!」

エリー「大丈夫…僕が…付いてる、から…」

レナス「………なんで…」
・無表情のレナスの目から涙が溢れる

・ノアが右耳に装着していた無線+脳波の測定器が反応する
ノア(!)(レナスの脳波が低下し始めた…?)

エリー「言った…だろ?…君を…本気で助けたい…って」
・大量出血で意識が薄れていくエリー

レナス「あ……あぁ…ああああーっ!!」
・エリーから離れて頭を抱えるレナス

ノア「エリー!」
・エリーに駆け寄ったノアはすぐに止血を開始

ノア(出血が止まらない…動脈に刃が届いたか…)
(レナスの脳波は…)
(5…4…3…2…)
(2Hzまで急激に低下…)
(墜落まで3分を切った…でもこれなら!)

レナス「どうしよう…エリー先生が…」
「死んじゃう…」
「私のせいだ…私の…」
・レナスはその場で泣き崩れる

・無線で連絡を取るノア
ノア「こちらノア・マーヴェリック!」
「対象の脳波低下を確認!至急転…」
・ノアの無線のマイクを塞ぐエリー

エリー「ノア…転送は、ダメだ…」
「拘束して…レナスを心理・療法部に…」

ノア「……こんな状況でもレナスの心配を…」
「本当にバカだよ…お前…」

エリー「頼んだよ…ノア…」

・脳波が急激に低下し、慣性力を保てなくなったエリーは771便から振り落とされてしまう

ノア「!!」「エリーーーーっ!!」
・咄嗟に手を伸ばすノアだったが、エリーを掴むことはできなかった

レナス「!?」「先生…?」
・顔を上げたレナスの目には、落下するエリーが映る

レナス「エリー先生ぇーーーーっ!!」
・レナスはエリーを追って771便から飛び降りる

ノア「!!?」「なに!!」
・771便にかかっていた過重力が解除され、機体は高度を上げ始めた

・ノアは無線で連絡を取る
ノア「エマージェンシー!副部長!至急、時空間移動の準備をお願いいたします!!」

無線「ノア!!何があった!?」

ノア「説明してる時間はありません!」
「落下地点、おおよその座標…」

無線「ノア、落ち着いて!」
「私の時空間移動にも制限があるの!」
「座標の問題じゃない!」

ノア「!?」

無線「私が扉を開けるのは、一度行ったことのある場所」
「その半径20m以内…」
「つまり、認知できていない場所には開けない!」

ノア「………そんな…エリー…」

無線「とにかく、戻れるならアナタは先に戻って、状況の報告と対策を!」
「771便はもう大丈夫だから!」

ノア「………くそっ!!!」
「…こんな、こんなことでっ!!!」
・拳を機体に叩きつけるノア

・脳波測定器がさらに反応
ノア「!?」
「これは…再びレナスの脳波が…」


・高度を上げる771便
・乗客の1人が、小窓から外を見つめていた


[場面はビルの最上階へ]
・ピアノの演奏を続ける男
男(アリス症患者の脳波が30Hzに達し、ある条件を満たした時…)
(ハイパーソニック・エフェクトにより認知機能は最大に高まる…)
(その力は人の域を超え…)
(自身の思い描く世界へと『現実を完全に書き換える』)
(さぁ…レナス・オルティーヌ…)
(見せてくれ…)
(君の創る世界を!)

・意識を失い、落下を続けるエリー
・レナスはその後を追っている

レナス「エリー先生っ…!」

・落下しているエリーに追いつき、手を掴もうとするレナス


[回想]
・薄暗く狭い部屋の扉が開き、黒衣を着たエリーが中に入ってくる

大男「!!?」「なんだテメェは!」

幼いレナス(………誰?)

・エリーが大男に手をかざすと、大男の体が一瞬で切り刻まれる

幼いレナス(!!!)

・怯えるレナスに歩み寄るエリー

エリー「もう大丈夫だよ」
・差し伸べられたエリーの手をレナスはゆっくりと握る

・レナスはメディエルセブンに引き取られ、エリーから精神治療を受けていた

・わがままなレナスに、エリーはいつも優しく接する

・それがエリーの仕事だと分かっていながらも、レナスはエリーに恋心を寄せていった

[場面は戻り]
・落下するエリーの手を掴み、レナスは彼を抱きしめる

レナス(あぁ…きっとこのまま死んじゃうんだ…私たち…)
(…エリー先生…ごめんなさい………)

・レナスは自分の過ちを悔いる様に涙を流す

レナス(わかってた…片想いだって…)
(それでも…いつか想いが届くかも…って…)
(どこかで…うっ…期待…してた…)

・この時のレナスの脳波を観測できた者はいなかったが、彼女の脳波は無意識に上昇し、周波数βベータ27Hzヘルツ

・メディエルセブンの医師たちでも、自力で・・・ここまでの数値を出せた者はいない

レナス(うぅ…痛い…頭が痛い…)
・1Hzヘルツから27Hzヘルツへの急激な脳波の上昇は、彼女の脳神経を蝕む

レナス(…バカだよね…私…)

・薄れゆく意識の中で、エリーの手が離れていく

レナス(駄目…やっぱり…先生だけは…)
(私のせいで…死なせ…たくない)

・29Hzヘルツ
・レナスの肉体は微弱な光を放ちながら崩壊を始めた
・全身の毛細血管から無数の出血
・皮膚は剥がれ落ちていく

・ビルの最上階では男の演奏が終わりを迎えようとしていた

・走馬灯の様にエリーとの思い出が蘇るレナス

レナス(…先…生…)
(………生き…て…)
(…大…好き…)
(だった…よ…)

・レナスはイメージの中のエリーに手を伸ばす

・30Hzヘルツ
・眩い光が夜空を照らす
・その刹那、世界中の全ての人がレナスの声を聞いた

・そして男の演奏が終わる

・男はグラスにワインを注ぎ、夜空に向けた

・そのグラスには一筋の光が…

男「…すばらしい…演奏だったよ」
エリー・ヴァイオレット・・・・・・・・・・・


第3話へつづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?