気持ちは不可侵だ。

私が推しているアイドルグループのうちの1人が、先々月、突然グループ活動を終了した。

歌がとても上手な子で、聴いている人の心に真っ直ぐ届く歌い方をする子だった。
こういうご時世ということもあり、卒業公演のようなものはなく、本人からの文章をもっての活動終了だった。
活動終了に至るまでの気持ちの変化や理由を、包み隠さず最後まで真摯に、真剣に、丁寧に、しっかりと言葉を紡いでくれたこと、そういうところが本当にその子らしくて大好きだな、と思った。
もちろん辞めて欲しくはなかったけれど、素直に次の人生を応援したい!という気持ちになった。

と、いうのは、活動終了するまでの話。

活動終了した次の日から、彼女は変わらずアイドル時代のアカウントで、アイコンと名前の部分だけを変えて、ツイートを続けた。

アイドル時代のツイートや写真は、全て消されていた。

「アレアレ〜〜?なんかおもてたんとちゃうゾ??」となったのは、たぶん、私だけではなかったと思う。
自分を推しているファンのことを、特に大事にしている子だった。
アイドルであることを誇りに思っていて、メンバーの中の誰よりもアイドル然とすることに拘っていたように思う。
だけど、今の彼女は、アイドル時代のファンを踏み台にしているようにさえ思えてしまう。

全くの、別人なのだ。

私が今まで見ていた触れていたものは何だったんだ?と、自分の感覚を疑ってしまうほど。
それほど、アイドル時代のあの子と、彼女の間には大きな隔たりがあって、酷く混乱した。というか現在進行形で毎日混乱している。

彼女にとってアイドル活動は「作品のひとつ」だったのかも知れない、でも、過去のことを全部消してしまうことで、「全部嘘でした」って言われてるみたいな気がしてずっと苦しい。

私は、彼女のことをきっと一生許せないと思う。
「黒歴史ではないよ」と笑いながら、あの子が歩んできた足跡を、残してきた言葉や姿を全部消し去ってしまったこと。

友達でも好きな人でも家族でも何人であっても、私の気持ちには不可侵だ。
私は私の気持ちをいちばん大切にしてあげたい。
だから、私は私が見てきたアイドルのあの子を絶対に忘れないし一生覚えてる。ずーっと好きでいる。それでいいと思う。

新しい人生を選んだ彼女のことは、やっぱり応援できない。

私の、今の気持ち。

この文章を書いて、ずっと悩んでいたことを終わりにしたかった。
彼女がアイドル時代のアカウントをそのまま使い続ける以上、グループのメンバーしか入れていないリストから外せないし通知も切れなかった。
でも、やっぱり別人なんだよ。
そんなことないって信じたかったし、期待もしてたけどやっぱり別人なんだ。
応援してあげたかった、嫌いになんて、なりたくなかった。

私の中のあの子の言葉や思い出は、私自身が絶対に忘れないから、全部終わりにする。

これは、私なりのけじめ。