第百三十二回 Gt ヒロト|『月刊少年HRT』vol.12

 <特集>
「ツアー『Brutal Revelation』のアーティスト写真に込めたメッセージ」

<付録動画>
HIROTO Guitar Channel
「TOUR STAGE HIGHLIGHT-Brutal Revelation-」


ーー前号で「ライブではストイックに音楽に集中して緊張感あるライブを届けていくという方向性にバンドがなっていった」と仰っていましたが、その時、それとは真逆にあるオンライントリップ、FC旅行のような企画で、メンバーのわちゃわちゃしたところを見せるのは、「音楽的な説得力が無くなるから一旦辞めてみようか」という発想にはならなかったんですか?

はい。僕らはそういうのもできちゃうし、しかも、みんな嫌いじゃないんですよ。でも、そこを毎回日常的にライブに組み込まなきゃいけないとなると、それはそれで変なプレッシャーになる。そこをある程度ハッキリしないと自分たちも「これを求めている人もいるんじゃないか」とか「今はそれはいらない、という人もいるかもしれない」と、ファンの顔色を窺い出すことになりかねない。なので、ちゃんと「ライブはライブ」という風に分けた方が、音楽に集中できるのは確かなんですよね。


ーーしかし、ライブに限っても、アリス九號.はこれまで、ステージで踊ってみたりお芝居をしたりと、色々なパフォーマンスをやりながらステージに立ってきた訳ですから。そこから届けられるものは音楽だけとは限らないですよね。

踊ってみたりお芝居をしたりしたのは、「破綻寸前でもう後がないぞ、どうすんのこれ」という時の奇策というか。「正攻法でいったらそのまま沈んでいくだけかもしれない」という時に絞り出して生まれたのがあれだったと思うんですね。任天堂は日本人なら誰しも知っている会社ですよね?元々は京都の花札屋さんなんです。世の中がコンピューターの時代に移り変わって、「今更花札なんてやらないよな」となった時。任天堂の理念てなんだ?と考えたときに「子供から大人まで楽しめる空間を作りたい」という思いが根幹だから、それさえあれば花札を作っていなくても任天堂なんです。それでコンピューターの時代到来と共に、ガラッと方向転換したんですよね。そうなった時、反対した人もいたと思うんですけど「ウチの理念は花札を作り続けることじゃない。家族みんなで楽しめるエンタメ空間を作ること。それを、これからは花札ではなくコンピューターでやるだけ」とコンピューターゲームの開発に乗り出して、ファミリーコンピューターで世界にまでエンタメ空間を届けていった訳ですよね。ちょっと話が飛躍しましたけど(笑)、だから「アリス九號.」という屋号はそのままに、バンドとして今後も音楽を届けていくために「一時的に業態を変えました」というのがあの時期だったんじゃないかな。

ーーそうでしたか。でも、そんな奇策をメンバー全員、楽器を置いてやってのけてしまうところは、バンドとして器用なところでもあるなと思います。

いやいやいや。僕らはあれをするために3か月くらいの準備期間を費やしているんですよ。その中で週に3回ぐらい、部活みたいに練習を積んでいた訳ですから。別にパッとあれができたんじゃないですからね。それだけ練習して、やっとギリギリなんとかお見せできる形になった、というレベルですから。

ーー器用なのではなく、努力の積み重ねだったのですね。

ですです。それで、今はバンドとして業態を変えるのではなく、コロナでオールリセットされるようなことが世の中的にあって。バンドとしても一番シンプルなところの「やっぱりロックバンドは音だよね」というところに立ち返ったわけです。これはバンドとしての流れでもありつつ、僕のすごく個人的な考えでもあるのですが、「やっぱりロックバンドってカッコいいよね、カッコよくありたいよね」と思うんです。そのためには「スタイルも大事だけど、やっぱり音だよな」と。その音がもたらす、スタイルであったりファッションなんですよ。バンドの音をスケールアップさせるための、照明さんや映像チームの力なんですよ。どれも、まず先に音楽がある。そういうところで、音に立ち返ったということです。

ーーなるほど。

そこで、何かをごっそり突き動かすような音をもう一度ちゃんと作りたいなと思ったんです。その“何か”というのは多分"自分"なんだと思うんです。

ーーヒロトさん自身、ということですか?

はい。この間、シドのあっきー(明希/Ba)と2年振りくらいにゆっくり話す機会があったんです。ちょこちょこ会ったりはしてたけど、話し込むような時間は無かったから、その時久々に深い話をして。彼がソロをやってる時のことについて、すごくいい話をしてたんですよ。彼は「『客席に昔の自分がいる』と思ってライブをやっている」と言っていたんですね。昔の自分が客席にいるファンだったとしたら、今ステージに立っている自分を見て、何にドキドキするか。そういうことを常に思いながらステージに立つ、と。そうじゃないのとでは全然違うなと思って、ガツンと響いたんですね。そのときのあっきーの話が。ファンの人のためになることって、やっぱり自分自身が一番突き動かされるものを作る、演ることだと。まずは、そこからだなと思ったんです。

ーー客席にいる少年ヒロトの心をまずは突き動かせ。それが、ひいてはお客さんにも感動をもたらすのだと。

そう。だから、ライブはめちゃくちゃカッコいいものでいいんですよ。だけど、昔の話でいうと「HEY!HEY!HEY!」とかの歌番組で、西川貴教兄さんはトークがむちゃくちゃ面白くて、ダウンタウンさんに叩かれたりもしてる。でも、ライブ会場で見る兄貴は圧倒的で。LUNA SEAのRYUICHIさんもそうですよね。そういう“コントラスト”がちゃんと作れたら、自分はそれを楽しめるんじゃないかなと思えたんです。

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限りなく2次元に近い2.5Dロックバンド、アリス九號.のオフィシャルnoteです。 毎週メンバーがリレー形式でオフィシャルnoteだけの…

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