第百二十七回 Ba 沙我|ノーズマウンテン・ラジオ「生きるか死ぬかの冒険しようぜ」
昨年末、ツアーファイナル終演後にスクリーンに映し出された “LAST DANCE” という文字…。それに対して、「夏に答え合わせをします。」とSNSを通じてコメントしたのは沙我だった。「2022.5.19」と日程が記された告知ビジュアルには「刃を研ぎ澄ます 張り詰めた音色のために 命を燃やした舞踏を」というキャッチコピーに続いて「ALICENINE. Funeral」という単語が綴られていた。これらにはどんな意味があるのか、そのきっかけとなった出来事について、沙我が語る。
ーー現在はアルバムの制作中なんですよね?
「絶賛制作しまくっているところですね。最近はそっちが忙しすぎてアーセナルの試合も全然見られていない感じです」
ーーアルバムの制作に入ったのはいつ頃ですか?
「昨年の自分のバースデーライブからずっと続いてる感じですね。"次に何を作るべきか"というのはその時点で明確なものが見えたので、今こうして制作に入っていてもビジョンがすごくはっきりしてるんですよ。だから、今は求められているものを作り上げていくというよりは、あらかじめ見えていたビジョン、それをだんだんと形にしていっている感じですね」
ーーそのビジョンは、昨年「SAGA SEA」を行った時からすでに見えていたものなんですね。
「そうです。僕の心の中にはありました。自分たちのバンドに対してもそうですけど、このシーンに対しても今すごく不満がありまして。今までを振り返ってみても、自分がものすごく制作意欲が湧く時って、やっぱりマイナスの何か…不満やストレスが自分の中にあって、周りや自分を変えたいと思った時で。それがパワーとなって、ものすごく制作意欲が湧くんですよ」
ーーネガティブな感情が大爆発した時こそ、創作意欲が自分の中に漲っていくということですか?
「そうですね。ネガティブな感情が、結果的に自分を突き動かすポジティブなパワーとなって。僕はそういうパターンが多いんですけど、それが久々にズドーンと来たんですよ」
ーー久々なんですか?
「そうですね。来たのは10年ぶりぐらい?『GEMINI』以来じゃないですか」
ーーそのズドーンというものが無い時期というのは、どんなものがモチベーションとなって制作に向かっていたんですか?
「"バンドを壊さないようにうまく世に届ける"ということですかね。そういう気持ちの面が強い中で制作には挑んでいましたね。制作だけでなくライブもそうですけど。今進んでいる道を続けていくこと、そこに一番重きを置いていた感じじゃないですかね。俺たちのバンドの歴史を紡いでいくためにも、もちろんファンのためにも。そのために俺たちが楽しく演奏し続けて、道を紡いでいく。そういう感じでしたね」
ーー歴史を紡いでいくためにも、メンバーもファンも"これだったら面白がって楽しんでくれるんじゃないか"という最大公約数的な中で、創作を続けていたと。
「そうですね。『GEMINI』以降、それが10年ぐらい続いていた感じです」
ーー逆にいうと、その間はそこまで自分の中でネガティブな感情が大爆発することも無かったといえますか?
「そうですね。活動面では、事務所から独立してその中ですごく大変なことは色々あったんですけど、クリエイティブな面では無かったんですよね」
ーーそれが、昨年のバースデーライブをきっかけになぜ一変してしまったんでしょうか。
「まずあれをきっかけに、何かを打破するというか、"壊す"という気持ちが自分の中に生まれまして。そういう意味で、あの日は自分たちの曲は一切やらずにカバーだけをやるというライブに挑んだんです。自分たちの現状を壊すために。あれが、僕の中では本当に大きかったです」
ーーバースデーライブの時の心境はnoteを通して過去に語っていただいていますが、そこに“現状を壊す”というテーマが潜んでいたという話は、今初めて伺いました。
「やってる最中っていうのは感覚で動いてるんで、うまく言葉にできないんですよ。そこから時が経ってみて、こうして言葉にできるってことが多いですよね」
ーー「SAGA SEA」は、"現状を打破したい"、そんな強い衝動がトリガーとなって生まれたものだったんですね。
「今振り返ってみるとそうですね。10年前、『VANDALIZE』や『GEMINI』を作っていた頃も、本当にそれと同じようなモードだったんですよ。すごくシーンに対しても、自分たちの現状、例えば周りからの見られ方一つとっても、その全部に対して不満があって。それをぶっ壊すために作ったようなところがあったんですね。だから、今と似たような原動力なんですよ」
ーーでは「VANDALIZE」、「GEMINI」以前に、"何かをぶち壊したい"というモードで制作に向かったことはあったんでしょうか?
「それは無かったですね。だから『VANDALIZE』、『GEMINI』、あの時が僕の始まりだったと思います。壊すところから、"自分"というアーティストとしての方向性が始まったというか。僕というコンポーザーが目覚めた瞬間といえばいいんですかね。その時から、バンド内での自分の立ち位置としてそういうものが明確に目覚めて始まった感覚なんですよ。それまではなんかフワッとしてて。なんとなく"こんな曲かな?"って探り探りやっていたと思うんです。だから、自分はわりと大人しめな感じだったんですよ」
ーーそれが、いきなり"ぶっ壊したい"モードへとシフトしていった。
「ええ。例えば、今自分がいるシーンもそうなんですけど。"何かを変えたい"とか、"これなら自分でもできるじゃん"って。"ぶっ壊したい"という欲求の始まりは、結局は自分の場合は"否定"から入っていくんですよ。"うわ、超カッケー、これやってみたい!"じゃなくて、"カッコいいとは思うけど、それこうじゃね?"って。それが『VANDALIZE』の頃に大爆発したんですよね。覚醒したというか」
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アリス九號.オフィシャルnote
限りなく2次元に近い2.5Dロックバンド、アリス九號.のオフィシャルnoteです。 毎週メンバーがリレー形式でオフィシャルnoteだけの…
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