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シンプルで無駄のないスタートを

スケボーでも遊んでいそうな格好をしている若者3人が入店しました。白いタートルネックのA5サイズ(身長170〜174cm)の子が、グレーのジャケットがほしいというから、条件に合うものを一通り紹介してあげました。若者がまた来ます、と言って去って行きました。
こっちは堅めのテイストですから、もう来ないかもしれないと思ったら、しばらく経ったら戻ってきました。グレーのジャケットに合う黒いパンツもほしいとのことでした。真っ黒のパンツはスーツの組み下しかないのですが、というとガッカリさせてしまいそうですから、単品のパンツなら黒の代わりにチャコールグレーがいいかもしれませんと提案しました。同系色ですし、よりソフトで上品な雰囲気になります。喜んでいただきました。
では、まず本来のテーマであるジャケットを決めましょうか。

濃いめのグレーのほうは、端正な表情でありながら動きやすい素材で都会的な軽さがあります。明るめのグレーのほうは、スーパー120のフランスのウールで出来てジェントルマンらしい高級感があります。
「どんな場面を想定されていますか?」アリスは一歩踏み込んだ質問をすることにしました。
「ホテル。ホテルで食事会を。」と、若者の顔に隠さないワクワク感を浮かびました。
「おいくつですか?」アリスはさらに聞いておこうとしました。
「20です。」
なるほど。まだまだこれから。アリスは羨ましい表情でいっぱいでした。
「ホテルなら、ちゃんとした服を着て行きたいですね。」
「これにします。フランスのウールって、本当にフランスを感じてきましたね。」と若者が高揚した気分になり、決めました。

ところで、気に入った黒に近いチャコールグレーのパンツを試着したら、もっと細いのがないかと迷っていたご様子。言っている意味がわかります。ピタッとしたスリムなラインがいいですね。であれば、ストレッチの効いた黒いデニムとかを売っているお店はいくらでもあると思います。けれども、ホテルで食事をするようなジェントルマンという設定でいくなら、ほどよいゆとりのあるパンツのほうがクラシックでエレガントかもしれません。
というわけで、パンツに納得していただけました。
今度は、「パンツだけでいい」と言い出されました。どうしてですか?どうもフランスのウールのほうは予算オーバーのようです。確かに20の若い子があんなにオールドマネーっぽいジャケットを着ていると、少し背伸びしすぎ感がありますね。と思って、今一度価格と予算と相談して、軽さのあるほう(価格も軽め)に決めました。みんな安堵しました。
経験が少なく、方向性もまだハッキリしていない若者だからの動揺の多いお買い物でしたが、良かった点が三つあるとアリスは思います。
■自分の基本色のトーンが決められたこと。
■目的、予算を伝えて冷静なチョイスができたこと。
■ジェントルマンには程よいゆとりが必要だと理解できたこと。
シンプルで無駄のないスタートを切った若者よ、新しい世界へ思い切って羽ばたいてください。 アリスは祈ります。

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