『凍りのくじら』を読んだ

辻村 深月さんの『凍りのくじら』を読んだ。
7月に購入し、今日読み切った。基本的に電車に乗っている間に本を読むのだが、最後のあたりは泣く可能性が出てきたので家で読んだ。
結果、涙を流したので家で読み終えて正解だったと思う。

ミステリーではないし、どんな話?と聞かれると難しい。でも私は好きだった。

個人的に主人公の理帆子の語り口調がとても好み。
彼女の「少し・不在」という表現は、言い得て妙だった。
この語り口調は何かを説明するには、単調で過不足がなく分かりやすい。でもそこに彼女の気持ちが入り切らない。
周りと自分が混ざらない感じ。混ざりきれない感じ。混ざりたいのか、混ざりたくないのか、それも確信が付けない感じ。

話を読み進めていく中で、頭の中にイメージがすごく湧きやすい本だった。登場人物の顔や雰囲気、風景や情景、海や夜の森など。
文字を読んでいるのに、目の前で映像を見ているような感じ。普段読む本より、その映像がすごく強かったのが好き。

「少し・不在」と自分を語る理帆子の心の変化というか、自分が今まで周りとどう関わってきたかを振り返り、反省したり変わっていく姿がすごく心に来た。
今まで読んだ本や見てきた映画の誰よりも感情移入してしまったので、わりと読むのがつらくなった時もあったけれど、最終的には素敵な終わり方だったと思う。

ストーリーもよかったけれど、私はこの本の言葉や表現、理帆子の視点がとても好き。
そういう観点でもう一度読み直したいと思った。
間違いなく私の好きな1冊になった。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?