AIが創る僕らの輝かしい未来について

この記事は LeapMind Advent Calendar 2019 14日目の記事です。

AIが創り出すちょっと未来の楽しい話について、技術Forecastを交えつつ書いていこう!・・・なんて思っていたら厨二ディストピアっぽくなった。

こんなAdventでいいのか?!
今は反省している。ごめんなさいごめんなさい...

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・・・ 2032年 某日某所 ・・・

♪-♪-♪

耳障りのよい、それでいて聞き流すことができない音が空間を満たす。

朝...か。

ブラインドが上がり部屋が一気に明るくなる。これでは寝ていられない。今日もまた起こされてしまった。

寝巻きを脱ぎ捨て、制服に袖を通し、顔を洗う。寝起きの頭を一気に覚ます冷たさに思わず悪態をつきそうになるが、そういえば晩秋の時期でも心地よい室温だな、と改めて感じ、ため息のみをつく。

部屋を出て食堂に向かう。

早めの時間帯は人が少ない。こればかりは有難いと感じてしまう。

朝食はもう用意されている。朝から和食・・・まあいいか。

そう思ってしまうのは、この食事が自分にとってきっと悪くないからなんだろう。

けれど、たまには別のものが食べたい。何かはわからないけど、とにかくこれ以外の別の...

赤だしの熱さが胃に染み渡り、心地よさを感じて忌々しくなる。

人が増える前に食事を終え部屋に戻ると、いつもの分厚い紙が机に置かれていた。

今日の活動指針だ。これだけはざっと目を通す。

あとは前日の活動成績・睡眠の記録・健康状態・長期計画からの乖離状況か。電子メールでいいのに。どうせ見ないから。

見る振りをして、それすらも見透かされているような気がして、急いで学校へ行く支度をする。と言っても、持ち物は身の回りのもの以外はタブレットくらい。

鞄を背負い、アンクルバンドを掴み上げ、部屋を見渡す。

この肌になじむ足かせ、天井の片隅に堂々と備え付けられたカメラ、初めから備品としてある家電や家具、壁や床にまで埋め込まれたセンサ群...

それらは僕を吸い上げ、過去を記憶し、現在の行動を指示し、そして将来を規定していく。

今日も僕は、推論されている。

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AIが先進国の間で爆発的な普及時期を迎えた7年前、日本では倫理や法整備などにより周回遅れのレースをひた走っていた。当時の内閣は、世論と経済界からの要請を背景に、起死回生策として人を使ったAI開発を例外的に許可するための特区を設立。そこでは、住民がAIと共に生活し企業はあらゆるデータを集め新しいAIを作り出し社会実装を行う、という営みを、ある一定の安全性や倫理感に配慮しつつも超法規的に実施可能とするものであった。この法案が成立した当初、国内外のメディアはモルモット工場と揶揄していたが、特区のインフラや設備などが明らかになるにつれ批判が下火となり、日々増ていく募集倍率や限定情報を熱狂的に伝えるようになっていった。勿論、参加企業の中にLMなどの世界的なAI企業が含まれていたことも加熱に拍車をかけていた要因の1つであろう。そんな中、自分が選ばれたことは宝くじに当たったようなもので、周囲からは随分と羨まれたものだった。

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寮から逃げるように出て、一人乗りの自動運転車に乗り込む。

シートベルトを締めエンジンを掛けると車が動き出し、窓ガラスにニュース番組が写し出され景色が見えなくなる。これで事故が起きても僕のせいじゃなくなった。

でも外の風景が見たい。

そうつぶやくと、映像がハワイの景色に切り替わった。

学校。学年という概念はない。学習の進度に合わせた専科の履修に、やたらと多いコミュニケーションという名の元の共同作業。優秀な成績を修めていれば、すぐにでもAI開発に実戦配備されるとか。

今日の指針は...確か体を動かせだったか...

思い出し、それでもささやかな反抗として個人学習のみの時間割をタブレットに入力するもののエラーとなる。1時間をジムでの体力作りに切替えるがまたエラー。3度のエラーで自動カリキュラム、それだけは避けたい。裏技で帰宅を徒歩にするか。。。うわっ、最悪だ1時間分がコミュニケーションに切り替わった!

個人学習はいい。誰にも気兼ねせず、自分のペースで進められる。苦手なところもすぐに克服できる。VR端末とハプティクスを使った擬似体験も好きだ。世界地理では移動せずに他国の文化を体感できるし、化学実験では安全に危険を冒せる。過去の歴史映像も、数学や物理の視覚的な理解も。

コミュニケーション。最悪。今日は6人3チームでのディベートのようだ。端末でタイムキープが行われる。お題は...将来の技術革新と課題について、か。チームメンバーは...まぁ何回か見たことがある奴等だな。とりあえず頭だけ軽く下げておく。そういや誰かが言っていたな。よく会う奴とは将来結婚させられる運命だとか。ないわ。絶対。向こうが笑顔で会釈してきたからって関係ない。終わったら皆で昼食?ちょうどいい時間だし仕方ないから行くよ。ついでだし。

・・・ケッお前らできてんのか・・・行かなきゃよかった・・・

帰るか。

車は使えない。

でもいい。

今日はバイトやサークルに時間を割り当てずに済んだ。

学校から住宅地を抜け川縁の道を抜ける。朝見れなかった景色だ。

高台の公園に寄り道して、遊具の上から街を見下ろす。

人が歩いている。車が動いている。学校も、店も、会社も、なにもかも。

動かされている。

僕たちは。

ちょっとばかりの快適さに堕とされて。

この街には時計がない。

部屋にも、学校にも、公園にも、、、どこにも。

あぁ時計がみたい。

秒針の動く音が聞きたい。

時計を見て、想像したい。

落ちていた棒切れで砂場に丸と文字盤を描き、真ん中に突き刺す。

日時計だ。

嬉しい。

眺めていれば動くのかな。

・・・影が動いてる!

でも明日には消えているんだろうな。

僕の、僕たちの、不確定な未来と一緒に。

また明日がはじまってしまう。

そしてまた、

推論されていく。

動かされていく。

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