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魂は近くにいる

 死んだ人の魂が近くにいるサインは、いろいろあるらしい。私も次男が亡くなってからそのほとんどを経験している。 
 そのひとつは「耳鳴り」だ。
 耳鳴りがずっとしている。閉めきった部屋の窓から、家の近くの公園の蝉の鳴き声が断続的に聞こえてくる…というような音だ。蝉よりは少し高い音だけれど。意識すれば「蝉が鳴いてる」とわかるけれど、テレビを観ているときには気にならない、みたいな感じで、ずっと続いている。
 次男が亡くなってしばらくしたころ「魂がそばにいると耳鳴りがするっていうけど、どんな感じなんだろう?」と考えていたら、いきなり、耳の奥で音がしはじめた。それ以来ずっとしている。意識しなければ忘れているような音なので、不快な感じはしない。病気が原因の耳鳴りではないようだ。ということは、これが魂が近くにいる合図なのか?そうにちがいない。次男は私の側にいる!と思うことにした。
 でも、「意識し始めたとたんにするようになった」という耳鳴りなので、もしかすると次男のこととは関係なく、ずっとしていたのかもしれない、とも思う。だとすれば、私の周りには、私を守ってくれる魂がずっといたけれど、次男が亡くなって、私が「魂の声」に耳を澄ますようになったから、それに気づくことができたのかもしれない。
  月影のいたらぬ里はなけれども
  眺むる人の心にぞ澄む
                                               法然上人御詠歌
 魂とはそういうものなのかもしれない。

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