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俺様イケメンに壁ドン「する」乙女ゲーを作った話

※これは「ゲーム制作にかかわる人が自由な記事を作る Advent Calendar 2022」の12/11の記事になります

突然ですが、

力が、欲しいか……

と悪魔から囁かれたらどうしますか。
当然YESですよね。しかし力を手に入れるには相応のリスクがつきもの。
でもノーリスクで力を手に入れられる方法があるんです!!


それがこの、「私こそが学園の女王様」というフリーゲーム。
今年の8月に公開した乙女ゲームです。 このゲームをやるだけ!!!
え??? 乙女ゲーのどこが力なのかって……?

イケメンに壁ドンをすることができるからです。
されるんじゃなくてする側です。

攻撃力を高めれば押し倒すことも可能(全年齢)

主人公のアヅサ(名前変更可)は生まれ持っての女王様気質で、転校初日から学園中の男子生徒達に跪かれてしまうほどの圧倒的なオーラの持ち主。
このゲームは最強の女になり出てくるイケメン全員抱く(全年齢)乙女ゲーなのです。
これが「力」だ……。

ここまで見てこのゲームをネタゲーだと思った人も多いでしょう。
アプリなんかだと、壁ドンをネタにしたカジュアルなゲームをいくつか見かけたことがあります。
でもね……


私はこのゲームを「本気」で作ったんだよ……

・・・

話は少し前にさかのぼります。
2020年に「守って!勇者さま」というゲームを公開しました。

攻撃ができないユーリイを守りながら戦う戦闘システム

城を追われた元女騎士のカルラが戦うのが苦手で料理が得意な男の子ユーリイと共に旅をするRPGです。
このゲームのヒロインはユーリイの方です。
力は強いが精神的に未熟なカルラが弱くて戦えないが思いやりのあるユーリイと共に過ごすことで成長していくみたいな話なんですよ。
でも男の子をヒロインって言っちゃうのどうかなーと思っていたのですが、感想を見て驚きました。
カルラの方に抵抗があったというコメントの方が多かったのです。

騎士としてうまくいかなかったカルラは、自分の正義を示すため勇者を目指す

私はとにかく強くてデカい女キャラが好きで、カルラはその趣味を反映したキャラでした。
もちろん万人受けするキャラだとは思ってはいないのですが、「女の見た目で敬遠してたけどやってみたら好きになった」という感想があったり、「スクショ見てやらないつもりだったけど評判がよさそうだからやってみたら良かった」という感じの人もいました。
ゲームをやって好感を持ってくれた人の感想でこれですから、書いていない人はもっとそうだということです。

作中でもその見た目から勇者らしくないと言われるカルラ
いかにも怪しい見た目の男に同情し信用してしまうことも。

守って!勇者さまはストーリーに力を入れていて2年たった今でも一番やってほしいゲームなほど気に入っているんですが、ここで見た目からキャッチーで面白そうだと思ってもらうことの重要さみたいなものを痛感しました。

回想ここまで。

・・・

まもゆの反省から、私こそが学園の女王様は可能な限りキャッチーにしようと思いました。
中身を見てもらうために、目を引く外側であろうと。

小さいサムネになっても読めるくらい大きな字で選択肢を作ったこともひとつの工夫です
(これはスマホでプレイしやすくするためでもあるけど)

具体的にどうしているのかというと、ギャグテイストであることを前面に押し出しました。
ギャグゲーとしても遊べて、強い女主人公の乙女ゲーがやりたい人にもうまみがあるというのを目指したのですが、このギャグとホンキのバランスみたいなものにすごく気を使いました。

特にゲームの序盤はギャグを多めにしました。
代表的なイベントが12日目に起こる「超・芋煮会」。

芋を煮ろ!!

わた王はと〇メモ方式の育成SLGなのですが各コマンド(勉強・部活など)の最初の実行時は攻略キャラのあいさつイベントになり、芋煮会は休日をのぞけば顔合わせをしただけでほとんどパラメータを上げるヒマもなく発生してしまう最初の学校イベントです。

この時点ではまだそれぞれがどんなキャラクターか、そもそも名前ですらちゃんと把握できていないくらいの頃ですから、キャラクターのやりとりよりも大きなオブジェクトをメインに絵的なインパクトを出すことにしました。

そうしたらなんとゲームをプレイした人がこの芋煮のことをつぶやきバズったことにより自分のゲームの公開ツイートも1万RTいく事態に。わお
ゲーム冒頭に飽きさせないイベントとして作ったのですがさすがにこんなことになるとは思ってなかったので驚きました。
そもそも乙女ゲーで芋煮ってもう意味わかんないじゃん(今さら

んで本気の部分はどこかっていうと主に攻略対象の好感度イベントです。

従順度なので全股が可能(超理論

まあこのゲームではなく好感度じゃなくて従順度なんですけどね。
主人公は女王様なので。

従順度イベントは1人につき告白を含め4回。
それぞれ起承転結になるように作っています。

起:出会い
名乗り、表面的な属性を示すイベント
承:日常
普段の様子、内面的な属性を示すイベント
転:急接近
主人公が攻略対象に影響を与えるイベント
結:告白
主人公に影響をを受けて変わった姿が見られる

こんな感じですね。
さらっと書いてるけどここはかなり悩みながら作っていました。
可能な限りキャッチーに作ると決めていたので「わかる人にはわかる」感じでありながら「わからない人でもわかる」を両立させたいと思っていました。
その部分をどこで成立させるかというと一番手っ取り早いのはパロディ的であることかなと。このゲームの主要な部分はどこか見たことがあるようなイベント・展開でありながら、主人公によって少し違った趣になってゆくというところを芯にしています。
とはいえ、その部分が一番難しかった!
何が難しいかっていうとね……ないんですよ。参考にできるものが。
後でもう少し詳しく書きますが女の子の方が強い女性向けコンテンツというのは本当に少ないんです。あっても最後には「安心していいよ!この子は本当はか弱くて優しい良い子だからね!」という終わり方がほとんど。
このゲームの主人公は最強の女王様なのでこれでは参考になりませんね☆彡
登場人物の貞操を破壊しつくしてやろうかとか平気で言いますし。

なので悩んだ時はギャルゲーをやったりギャルゲーのセリフ集を読みあさったりしました。

……え? なんでギャルゲーなのかって?

攻略対象は全員主人公に抱かれる運命にあるからだよ。
(※このゲームに18禁要素はありません)

メイの家出イベントはずっと細部の表現に悩んだ!

あとキャラによりそれぞれ雰囲気は違いますが、イベントによっては無理にふざけたりしないように気を付けました。
ギャグ要素が強めのゲームですが、女の子の方が強くてリードしていく部分はボケではなくこだわりを持って作った部分なので男子が受け身だったり弱気な態度をとった時には茶化したりバカにしたりすることもなるべくしないようにしています。

このゲームの主人公は気が強くて自信があってなんでもできる女王様。
普通の乙女ゲームのヒロインとはかけ離れた存在で共感や自己投影をぶん投げたキャラなので「攻略対象が主人公のことを好きになる理由」をしっかり描いて説得力のあるシナリオ作りをすることも心がけていました。

その結果……

バトル漫画か???

俺様イケメンに鉄拳を喰らわせました。

いや好きになる理由どこ!?!?!?

と思った人、ゲームをやってくれ
そこに答えがある。手に入れろ、力を。

と、ここまで色んなこだわりや工夫を書いてきましたが公開する前は「まあこのゲームはあまりよくは言われないだろうな…」と思っていました。

このような女性向けの女性優位コンテンツのことを俗に「女攻め」と言うのですが、そもそもこの言葉すら定義があいまいなほど女性向けでは数の少ないジャンル。
なんで少ないかって言うとね……これが苦手な人が多いからなんですよ……
私はBLには詳しくないのですが、BLでも主人公が攻めのコンテンツはかなり少ないと知って驚いた記憶があります。主人公が女性ならなおさら少ないわけです。

私は強い女が好きすぎてこのゲーム作ったんですが女攻めはどっちかというと「地雷」な人が多いイメージがあって、正直公開したら「こういうの苦手だから見たくないやめろ」みたいなことを言われまくるだろうと思っていました。
そもそも女攻めが好きな人の中でも可愛げのない偉そうな強い女主人公ってあまりスタンダードじゃないんですよね。茨の道のそのまた茨なのである。

なので作っているときは誰に文句を言われても自分だけはいいゲームだと思えるゲームを作ろうと思っていました。
どんな評価を受けてもこのゲームを作ってよかったと言えるゲームにしようと。自分のこだわりを曲げずに、楽しく作って暴れまわろうと。

いざ公開してみると、想像以上に拡散されてびっくりしました。
思っていたような批判もほとんどなく(合わない人も当然いることはわかっています)、それどころか「ずっとこういうゲームをやりたかった」「自分の求めるゲームはこれなんだと思った」等の感想をたくさんもらって感動しました。
「乙女ゲー初めてやったけど面白かったです!」という感想には
初めてがこれで大丈夫か!?とは思いましたが。

長年フリゲを作ってきたなかで「万人受けするすごいゲームを作らなきゃ」と思って悩んだ時期もあったのですが、近年は自分にはもうそういうのは作れないから好きなことをやるしかないと思っていました。どうせ一生底辺作者なんだから好きなもの好きなように作っていくしかないと。
でも好きなものを作ってたくさんの人に遊んでもらえたのはやっぱりうれしかったし、作ってよかったと思いました。
というか数字よりも、「こういうのがやりたい」と思っていた人に届けることができたことが一番うれしかったです。
このゲームだけじゃなくて、「守って!勇者さま」や他のゲームを作ってきたことも全部自分の経験として、このゲームを作る上で大事なものだったと思っています。

このゲームを作ってよかった。
今までゲームを作ってきてよかった。


かっこよくてかわいい絵!

そして最後に、立ち絵を描いてもらったことも挑戦でした。
今までの自作ゲーではほとんど自分で描いてきましたが、私は絵がお世辞にも上手いとは言えないことと男の絵を描くのが苦手なので女性向けのゲームを作るなら人に頼んでみたいと思っていたのです。
絵を描いてくれる人が現れなければこのゲームを作るのはやめようかと思っていたほどです。
素敵な絵を描いてくださったいな子さんには感謝してもしきれません。


というかこのゲームの評判の良さは90%以上立ち絵のおかげな気がする。

おしまい


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