ルヴァンカップ2018 FINAL
埼玉スタジアムで行われたルヴァンカップ2018ファイナルはJ1昇格1年目で24年振りの国内タイトル獲得を狙う湘南ベルマーレと5年振りのタイトル獲得を狙う横浜Fマリノスの神奈川ダービーとなった。僕は両チームのスタメンを見て、マリノスの松原健、ベルマーレの大野和成に目がいかない訳がなかった。松原は2016シーズン、大野は2017シーズンまで新潟に所属しており、特に大野は新潟出身、ユース育ちということもあり多くのサポーターから愛されていた。実際、両選手の活躍ぶりを一目見ようとはるばる新潟から埼玉スタジアムまで駆けつけたサポーターもいたようだ。
ただ、ルヴァンカップファイナルという晴れ舞台に臨むかつての戦友を僕は素直に応援することは出来なかった。その理由は両選手の移籍の仕方にあった。俗にいう0円移籍である。決して金銭的に余裕があるクラブだとは言えない新潟は、昔からこの0円移籍に悩まされてきた。一人の社会人である選手が年棒の高いクラブに移籍したいと思うのは当然である。選手生命が短いサッカー選手ならなおさらのことである。そんなことはサポーターみんなが分かっている。だから、クラブを離れるならクラブに最大限の感謝の気持ちとして移籍金を残していってほしい。0円移籍をした選手がクラブに愛情や感謝の気持ちを持っていなかったわけではないということも知っている。でも、君が去ったクラブに残された私達はその苦しい状況から立ち上がらなければならない。その時の手助けとして移籍金というクラブへの最大限の感謝の気持ちを残していってくれないだろうか。クラブを去る君へそんなお願いをする僕はよくばりだろうか。
大野和成はクラブを離れる際にこうコメントしている。
「現在の自分、そして今後の自分について、たくさん考え、悩み、多くの方々に相談もさせていただきました。新潟という故郷、アルビレックス新潟というクラブには、深い愛着や思い入れがありますが、もっと選手として大きくなりたい気持ちが強くなり、この決断をしました」
このコメントを読んで悔しさと怒りが入り混じった複雑な感情を抱いたことを今も思い出す。移籍先の湘南はその年、J2優勝を果たし翌年からJ1で戦うことが決まっていた。しかし、これまでの湘南は昇格してもすぐに降格してしまうエレベータークラブというイメージを拭いきれずにいた。そのようなクラブに移籍することが本当にステップアップと言えるのか僕はそう思っていた。
しかしあれから約10ヶ月がたった今日のルヴァンカップ決勝。新潟と湘南の間に大きな差が出来たことをまじまじと見せつけられた。ただただ悔しかった。マイクラブの試合以外であんなに悔しい気持ちを抱いたことは未だかつてあっただろうか。
後半途中に湘南の曹貴裁監督がアップをしているベンチメンバーの所に自ら行き、なにか言葉をかけていたシーンが印象的だった。試合終了後のインタビューによると、こういう時でもいつもと変わらない事をしよう、試合に出る出ない関係なく、何らかの形でチームの勝利に貢献しようと伝えたそうだ。その監督の言葉通り、終始ハードワークを続け、後半途中に交代した梅崎司はベンチに下がった後もユニフォームのままベンチ前でチームに声をかけ続けていた。僕はこの日の湘南の戦いを見て、チームだなぁと感じた。このクラブの歴史を変えてやるんだという選手、監督、スタッフ、サポーター、一人一人の強い想いがタイトル獲得に繋がったんだろうな、本気でそう思った。
今日、感じたこの悔しさを僕を含めた新潟サポーターは忘れちゃいけないと思う。たしかに、彼の移籍の件は受け入れ難いものであった。しかし、昨シーズン終了後に彼が出したステップアップとして湘南に移籍をするという決断は正しかったのかもしれない。
今年のルヴァンカップで湘南がタイトルを獲得したという事実を大野和成の移籍の件に逃げて片付けるのではなく、新潟と湘南の間にできた確かな差にきちんと向き合う必要があると思う。湘南ベルマーレというクラブから私たちが学ばなければいけないことは沢山あるはずだ。
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