KQpeace執事ハワードの思考と行動

・キラークイーン村とは

 キラークイーン村(以降KQ村)とは、人狼ゲームのシステムを使用したデスゲームである。13人の参加者(これは異なるケースもあるが)が集い、トランプの番号(A~K、Joker)と固有のクリア条件、ツールを配布される。

 参加者は、個人間通信である「秘話」とツールを駆使し勝利を目指す。村は自動で生成されるわけではなく、有志のGM(ゲームマスター)が趣向を凝らし設定や条件を練り上げ、開催が告知される。詳しくはKiller Queen Wikiを見ていただくのが良いだろう。

・この記事は何?

 本記事は2020年9月に開催されたKQ村、KQpeaceに参加した際に、自分が何を思いどう行動したかの記録である。ログを読むことでKQ村の全体の流れや雰囲気をつかむ事は出来るが、「参加者が実際どう考えて何をしたか」がわかる物は少ない。(こちらのKQ星狩の宴レポート漫画「デスゲームに参加してみたレポ」はお勧めしておく)

 自分の行動を整理すると共に、もしKQ村に興味を持った人が「実際参加したら具体的に何をどう考えるの?」という部分を知る材料に少しでもなればよいかと思い、この記事を書く事とした。
 なおKQpeaceのネタバレ記事となるので、知りたくない方はここで引き返すのが良いだろう。

・執事ハワードの構築

 KQ村に参加するには、まずキャラクターを決めなければならない。開催される場所は人狼議事国が通例となっており、キャラクターはその国のチップから選ぶ事になる。

 今回選んだ執事ハワードは65歳、傾いた主家のお嬢様を助ける為に自らデスゲームに参加するシリアス設定。「自らが生き残り報酬でお嬢様を助ける」事が至上目的となるので、ゲーム中誰かに依存したり、入れ込んで自己犠牲を払ったりはしないキャラクターとなる。
 この「設定」は、一見ゲームに関係ないようだが、キャラクターの行動指針につながるので自分にとっては大事な要素となる。
 「巻き込まれた」設定のキャラクターの場合、助かりたい為に誰かに依存したり、吊り橋効果で誰かに過剰に尽くしてしまったりが生じる可能性もあったりするし、「楽しみで来た」設定のキャラクターなら、気分次第でどうにでも転ぶ可能性がある。

 今回のハワードは、少なくとも「自分の生存を最優先する」キャラとして誕生したので、プロローグでもそれにふさわしく、誰かと過剰に親しくならないような行動をさせるつもりであった。

・プロローグ

 一般的にプロローグで目指すべきは「自分のキャラクターを認識してもらう」、そして「仲の良い相手をつくる」事。
 前者は交流した相手に設定を語る事、また紅茶を淹れるベタな執事ムーブによりおおよそ達成したと考える。
 後者については設定的に積極的にあちこち走り回って人と仲良くなろうとは思っていなかったのだが、成り行きに任せた結果、多角地帯(RP村用語。複数のキャラクターが存在する場所の事)に留まる事になり、幾人かと良い関係を築く事が出来た。

 良い関係を築けた相手の中では、ガルムという獣耳ヤンキーが気に行ったので、開始後に連絡を取ろうと考えた。レティーシャという少女とも親しくはなったのだが、かなりのサイコパス感が漂っていたので、接触しにいくか迷っていた。結局は互いがどういう条件を引くか次第でもあるので、レティーシャに関しては始まってから決める事とし、ハワードは考えるのをやめた。

・初日開始・情報配布

 KQ村は開始してもすぐに話せるわけではなく、待機時間というものが存在する。GMがルールを配り、参加者が把握しGMと質疑応答をし、それからスタートなのだ。

 ハワードに配られた条件は以下。役職はGMが決めた村のセットの中からランダムで割り振られ、それに即したNoと条件、ツール、そして想定していなかった「ルール」が2つ配布される。

役職「少女」
No.「J」
ツール「恋する乙女の気持ち」:誰かに表(秘話ではなく全員が見られる)ロールで愛の告白をし、受け入れてもらうと発動。相手がその日投票されなくなる。
勝利条件「恋する乙女の気持ちを発動させること」
ルール1「ルールは全部で7つある。」
ルール3「ゲーム進行中に首輪のランプを消す為には、クリア条件を満たした状態で首輪に自身のPDAを読み込ませなければいけない。ただし、クリア条件を満たしていない人物がPDAを読み込ませた場合は首輪が爆発する。」

 KQ村にはよく見られる、告白役職である。絆(片方が死ぬともう片方も死ぬ)があるとバランスブレーカーとなってしまう可能性もあるのだが、今回絆は無い。
 親密になった誰かに告白をお願いし受け入れてもらうのが王道だが、今回は65歳の執事ハワード。恋は厳しい。が、やるしかない。「老執事の愛の告白を受け入れてくれる親しい相手を作る事」が最初の目標となるので、初動はそこに重心を置いて行動する事とする。

 逆に、この勝利条件にNo情報は不要なので、そちらの情報収集に発言リソースを割く必要が無い。無論、No情報があるに越したことはないのだが、発言量は有限である。情報を集める事に発言を使い過ぎると仲間を作れない、仲間を作れたとしても情報共有や方針検討が出来ないと言った事になってしまう。発言は必要な事にきっちり割り振って使うべきだ。

 そして今回初登場した「ルール」。他のルールがわからないが、ルール3は勝敗に直結する内容であり、非常に重要に見える。ツールが他者に対して影響を与えられず自分の身の安全も確保できるわけではない弱い物なので、このルール3を自身の情報価値として戦えという事だと解釈した。(事実は途中クリアしやすい条件の人にルール3が配布されたというだけで、必ずしも隠匿は期待されていなかったようだが) しかし、この考えは後で村全体に大きな影響を与える事になる。

・サイモンの死亡とPDA情報

 「サイモン」とは人狼ゲームにおいて最初に犠牲者となるダミーキャラの事だ。人狼議事国では基本的にサイモンが最初に死ぬ役割となっている。

 KQ村ではこのサイモンも参加者の1人として設定されている事が多く、ゲーム開始後に見せしめ等でGMに殺される。そして、そこにサイモンに配布された情報が記載されたPDA(携帯情報端末)が残される。表発言でこのPDAを覗くと明言することで、サイモンの番号や条件、今回だと配布されたルールを確認できるのが通例だ。

 今回のKQpeaceでもサイモンは爆殺され、現場にPDAが残された。待機時間終了後にまずはこれを見に行く事になるのだが、今回のゲームではここに大いなるトラップが仕掛けられていた。

 待機時間が終了した後、多くの人がこぞってサイモンPDAを見に行った。ハワードは3番手で確認したが、爆発で壊れ虫食いの文字が断片的に読めるのみであった。が、「修復中」の文字があった為、その旨を共有し、結果全員が以下の情報を得る事が出来た。

No.6
クリア条件【自分以外全員の敗北】

ルール1
ルールは全部で7つある。

ルール7
ツールの効果によってセカンドステージへ移行する場合があるが、セカンドステージへの移行は個人単位で行われる。
セカンドステージへの移行は発言待機時間に行われ、対象人物が持つPDAがアップデートされる。

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GMツール「天国への階段」
ゲーム開始直後、あなたは死亡する。

GMツール「タブーコード」
このPDAを覗いた人物を翌日セカンドステージへ移行させる。
ただし首輪のランプが消えている人物に影響は無い。

 この過程で全員がサイモンのPDAを覗くことになったのだが、それによって全員「タブーコード」の効果を受け、2日目「セカンドステージ」に移行することが確定的となる。PDAがアップデートされる、すなわちクリア条件やツールが変わる事が濃厚に予想される事となった。

・最初の仲間、ガルムとレティーシャ

 サイモンのPDA情報を集めると同時に、秘話を獣耳ヤンキーの「ガルム」に対して送信し、早々に仲間になる事で合意が取れる。幸先がいい。
 なお、ここでガルムとハワードが交換したのは、互いのクリア条件とルールのみ。全てを公開してしまった場合、相手がキラークイーン(以降KQと表記。「自分以外全ての参加者の敗北」が条件の人物)だった場合、致命的だ。とはいえ、ガルムの条件は具体的でありKQっぽくは思えない。
 ここでガルムにも了承を取り、ガルムのルール5を拝借して自分が「ルール1,5」を配布された体で行動することにする。無論、当初の予定通りルール3を隠匿する為だ。

 また、プロローグのサイコパス少女「レティーシャ」からもいち早くハワードに連絡があった。というより、誰よりも早く連絡があったのは彼女だった。実を言えば、あまりにも早すぎて他の情報で流れて見落としていたのだった、申し訳ない事をした。
 それはさておき、レティーシャともコンタクトを取り、ガルムも含めて3人体制を取る事とする。ルールはレティーシャが積極的に集めており、7つが早々に揃った。ルール3の他の所有者(ケイイチ)も情報を出し渋っているようで、「ミスると死ぬ」後半部が削除された状態で出回っているのが分かった。本当のルール3をガルム、レティーシャに教えるも、ハワードの内心としては「ルール3隠匿の重要性がわかってるじゃないか、ケイイチとやら」という気持ちになっていた。

・揃ったルール

ルール1
ルールは全部で7つある。

ルール2
ルールは原則各PDAに2つずつ配布される。そのうち片方は必ずルール1が配布される。

ルール3
ゲーム進行中に首輪のランプを消す為には、クリア条件を満たした状態で首輪に自身のPDAを読み込ませなければいけない。ただし、クリア条件を満たしていない人物がPDAを読み込ませた場合は首輪が爆発する。

ルール4
クリア条件の未達成が確定しただけでは首輪の爆発は発生しない。首輪の爆発はツールの効果を含む特定の条件を満たした場合、またはルール違反によってしか発生しない。

ルール5
ゲーム開始時、犯人役は2人存在している。

ルール6
特定の条件によってツールが増えたり、効果が変わる場合がある。

ルール7
ツールの効果によってセカンドステージへ移行する場合があるが、セカンドステージへの移行は個人単位で行われる。
セカンドステージへの移行は発言待機時間に行われ、対象人物が持つPDAがアップデートされる。

 実際のところルール4の後半部はこの時点では欠落していたが、さほど問題のある部分ではなかった。

 展開を考える上で重要なのはルール5、「犯人役が2人」の部分。犯人役とは通常の人狼ゲームにおける人狼の事。犯人役が全滅すればゲームが終了する。犯人側が勝つ為には犯人の数と同数まで非犯人の人数を減らす必要があるが、それはすなわち「犯人側について勝てる人数は少ない」という事。犯人が3人なら最大6人生き残れるが、犯人2人だと最大4人しか生き残れない。
 これは犯人側につく勢力が少ないであろうことを意味し、犯人が正体を現さず潜伏する可能性があることをも意味した。

 我々は3人チームで犯人はいない。つまり、犯人を殲滅する方向で生き残りを目指す。犯人は敵である事がこの時点で決定していた。

 ここでガルムから「アリババ」が2人いる犯人のうち1人であるという情報がもたらされる。アリババは誰にどのルールが配布されたかを調べ、それを答えるのが条件だという事だった。なおハワードは前述したようにアリババへは偽りの情報「ハワードにはルール1-5が配られた(実際はルール1-3)」を教えていた。
 セカンドステージの条件変更次第では、自分が犯人側につかなければいけなくなる可能性も無いわけではないが、現状脱落させるべき相手である事は明白。というわけで、この時点で強い殺意まであったわけではないが、偽りは偽りのままとする事にした。そもそも犯人のクリア条件が「ルール収集」というのに違和感があり、そこから嘘ではないかという疑惑もアリババに対して持っていた。(実際はアリババは正しい条件を伝えていたが)

・情報収集・交流

 ハワード、ガルム、レティーシャの3人チームは出来た。が、それだけでは不十分だ。他の人々の条件を調べ、少なくとも当座は協力出来る人物と誼を通じておく必要がある。
 また、その過程で「ハワードが無害な人物である」情報を流し、積極的に排除する対象から外してもらう必要もある。これに関しては、「絆がない告白条件」である事を、ある程度広める事とした。また、No情報についても、必要だと判断した相手には流す事にする。

 なお、ここで仲間から仕入れた情報を他に流すのはNG。仲間の信頼が下がるし、「簡単に情報を流す人」と思われると、重要な情報が流れてこなくなる。

・ノッカとのコンタクト

 交流中、「ノッカ」から絵札を探しているという話が来た。ややきな臭い匂いもしたが、詳細を聞くと「絵札(J,Q,K)のうち2人死亡、1人生存」が条件であり、協力する絵札を探しているとのこと。
 自身が絵札である事を隠すかどうか迷ったが、リスクを取って絵札である事を名乗り、協力を申し出る事とした。自身が絵札である事はすでに流出している情報であり、ノッカが独自にいつ入手してもおかしくない。なら、自ら名乗って協力関係を築いた方が絶対にプラスだ。
 ノッカからはおそらく協力関係の見返りとして「守護者」であるという大きな情報を得る事が出来た。守護者は犯人に知られると狙われる筆頭候補なので、それなりに信頼してもらえた実感はあった。

 ノッカについては「個人的に協力関係を結んだ」状態なので、ガルムとレティーシャに経緯は報告したものの、3人チームに呼び入れるかどうかは、結局セカンドステージ次第となるので。様子見とした。また、ノッカ守護者の情報はこの時点ではガルムとレティーシャにも話さなかった。

・サラの仲間入り

 ガルムとコンタクトをとっていた「サラ」から連絡が来る。初日にn人選んで2人生存することが条件とのことで、我々のチームと競合しなさそうなことから、ハワードとしてはサラを歓迎する旨を伝えた。また、サラが生存対象にハワードも検討していると聞いたので、個人的にノッカと協力しており、それが自身のリスク(ノッカが絵札である自分を殺す可能性がある)事も伝える。
 サラは簡潔でわかりやすい会話内容で情報には対等な対価を差し出す姿勢を見せ、情か理かで言えば理のタイプだった。仲間として長期的に行動する際に、やりやすそうだと感じた。

・セカンドステージ対策

 セカンドステージになると、条件がアップデートされて今の仲間と協力できなくなる可能性がある。が、ハワードはセカンドステージを回避することが論理的に可能だった。

GMツール「タブーコード」
このPDAを覗いた人物を翌日セカンドステージへ移行させる。
ただし首輪のランプが消えている人物に影響は無い。

 そう、首輪のランプを消せばいいのだ。親しい人に告白しOKを貰い「恋する乙女の気持ち」を発動させる。その上でルール3に従って首輪にPDAを読み込ませランプを消せば、セカンドステージには以降しないですむ。

 が、それはリスクでもあった。早期に条件達成することはKQのターゲットになる事に等しい。KQは「自分以外の参加者の敗北」が条件なのだから、条件達成者を消す必要があるのだ。ノッカが守護者であり守ってくれる可能性もあるが、それもずっと保証されるわけではない。

 検討した結果、この日の告白はしない事とした。いずれにせよ発言も残り少なく、仲間もほぼ発言切れで話せない状態であり、実質的に無理だったのもある。

・2日目、セカンドステージへ

 セカンドステージに突入し、PDAがアップデートされた。更新された内容は以下の通り。

クリア条件【GMツール「★★★★★★★」を起動させる】

GMツール(即時)「★★★★★★★」
あなたの告白を断った人物の首輪を爆発させる。
1回のみ使用可能。
※強制発動
※相手が告白を断るロールを表で回すと発動します
※答えを保留や放置された場合は断られたとはみなしません

 うおおお…これはきつい。それが最初の感想だった。告白して断られなければいけない。そして、その相手は死ぬ。事前に談合して仲の良い相手と出来レースをするわけにはいかなくなった。

 が、よく考えると、任意の相手を選んで告白し、断ってもらえば相手を殺せる。GMに確認した所、告白を受け入れてもらっても自分が死ぬわけではなく、「断られるまで何回でもチャレンジ可能」との事。これは強力な殺害ツールではないか?

 仲間と競合するようになったわけでもないし、ポジティブ思考で良いアップデートだったと考える事にする。無論、告白を断ってもらうための下準備は必要となるのだが。一先ず、自分のアップデートは「生存者からランダムに選ばれた対象に告白する」ものになった体で進める事とする。それなら、あまり親しくない相手に告白しても不自然には思われないだろう。

・仲間の条件確認

 自身の条件変更内容をガルムとレティーシャに伝える。ガルムは「毎日処刑票を一票以上貰いつつ最後まで生き延びる」条件に変化。レティーシャは表で「KQを殺す役割となった」事を宣言しはじめた。ちょっとよくわからない部分もあるが、一先ず仲間内での条件競合は無かったようで、一安心

 サラも本格的にチーム受け入れとの事だったので、そちらにも本当の条件を話す。ハワードが告白の真実を話したのはこの3人のみ。他にはすべて偽装条件「ランダム対象に告白しOKを貰う」を話す事とした。

 また、個人的に交流していたノッカだったが、そもそも初日の条件が偽りであった事を告げられる。「絵札のうち2人死亡1人生存」ではなく、「No.Qの死亡」が条件だったそうな。これが「No.Qの生存」に変換されたそうなので、もしハワードがNo.Qなら改めて協力したいとの申し出だった。
 ハワードはノッカに「絵札」とのみ告げていたのだが、Qではない事を告げ、交流は継続していくことを約束する。この繋がりは後々かなり有効に働くこととなる。
 ただし、初日に嘘をつかれていたので、その分こちらも律義さは薄れ、ノッカ守護者の情報は仲間のガルムとレティーシャに共有する事にした。

・敵か味方か妖精キリノ

 初日にNo.Jを探しているという情報をきき、少しだけコンタクトを取っていた「キリノ」。初日時点ではNo.J生存が条件だったそうだが、セカンドステージで関係ないNoが対象になったと説明される。
 が、全く関係ないNo生存条件に変更されるというのは、少々違和感がある話だった。一番あり得そうなのが、反転してNo.Jの死亡が条件になる事。その場では「反転して私の死亡となっていたら恐ろしいですが」と牽制しながら、会話を終える。
 後に仲間になったケイイチから、キリノの条件がNo.Jの死亡であることを聞かされ、やはり、と思った。

・ケイイチの仲間入り

 ルール3を出し渋った事で勝手に評価していたケイイチが、ガルム、レティーシャ、ハワード、サラチームに参加した。
 が、これは表向きの話。もともとは本当に仲間のつもりだったらしいが、ケイイチはサラのターゲットになったらしく、票と情報を利用して最後には切り捨てる仲間になったと説明された。ケイイチはそれまでキリノと親しくしており、キリノのターゲットがNo.Jであることを教えてくれたので、個人的には非常に感謝していた。こちらのチームにNo.Jがいるのでキリノとはバイバイだと言ってくれるほど仲間に篤い男であったのに、不憫である。

・2日目の方針

 ここで2日目の方針だ。この日から襲撃と吊りが発生する。襲撃対策は犯人と思しき人物に自らの安全性をアピールしていくくらいしかする事が無いが、吊りは票調整が非常に重要だ。自陣営はケイイチの加入で5人いるが、ガルムに1票必要なので、使えるのは4票。現在13人生存、票は少ないわけではないが、多いわけでもない。この日の発言は主に票調整に費やす事とした。が、その時事件が起こった。

・アリババ爆死

 2人しかいない犯人の1人であるアリババが、首輪にPDAを読み込ませ首輪のランプ消灯(それ以降吊り票が入らなくなる)を狙い失敗して爆死、場は騒然となった。ハワードにはアリババが爆死する心当たり(自身の配布ルール偽装)があるので、それをガルムとレティーシャに伝達。犯人がいなくなるのはありがたいが、こんなに早いとは思っていなかった。

 アリババにはルール3の前半部「ゲーム進行中に首輪のランプを消す為には、クリア条件を満たした状態で首輪に自身のPDAを読み込ませなければいけない。」しか伝わっていなかったようで、後半部の「失敗すると自分が爆発する」部分を知らずに決行したのだった。ルール3の隠匿と配布ルール偽装は、ピンポイントでここに効果を及ぼした。

 犯人は残り1人。下手に残りの犯人を吊ると即村が終わってしまう。つまり、自身も今日中に告白殺人を達成しておかないと、いきなり終わって敗北する可能性がある。今日告白をする事も、重要な目標の1つとなった。

・票調整

 票調整は難航を極めた。
レティーシャ:ヤンを吊りたい。
サラ:ノッカを吊りたい
ノッカ:(サラに狙われているのを察知して)サラを吊りたい

 アリババが死亡して現在12人生存。自陣営は5人だが、1票はガルム用なので、11票中4票が有効票。過半数を取る為に、あと2票はどうあっても必要となる。
 ノッカはNo.Qと手を組んでいるはずであり、2票は確実に保持している。さらに占い師「ミナカタ」がノッカの味方として行動しているのも確認していた。なので、ノッカチームと自チームの投票先すり合わせを目指す事とした。サラとノッカが吊り合って票が割れるのは、どちらの陣営にとってもまだ早い。

 ノッカに聞いた話で大きかったのは、「ハワード票が取れればサラを吊れるかも」という物。本当なら5票は集めている事になる。無論ハワード票は入らないのだが、こちら陣営も4票しかなく、浮動票の動向によってはサラが吊られる事になる。今後票が重要になっていくのに味方が吊られるのは絶対にまずい。

 なので、ご当人には大変申し訳ないのだが、自陣営もノッカ陣営も吊って問題ない相手として「カミジャー」を提案した。ノッカが最序盤にカミジャー吊りを口にしていたタイミングがあったので、両陣営の落としどころに出来ると判断したのだ。自陣営には、サラが危ない事を理由にカミジャー合わせを依頼。ノッカにも安全策でのカミジャー合わせを依頼。また、両陣営外のキリノからも、「カミジャー吊りで半数取れそうなら票を合わせる」との言葉をもらっていた。

 ノッカ陣営が乗ってくれるか心配ではあったが、ノッカ吊りやヤン吊りの話もそれなりに流れており、自分が吊られるくらいならこちらの陣営と票を合わせる事を決めてくれたようだった。

・告白

 仲間の為の票調整の他に、ハワードは自らやるべき事があった。それが告白。いきなり適当に告白しても、ただの不審者である。事前の仕込みとして、「生存者からランダムに選ばれた対象に告白してOKを貰う」条件になったので、もし選ばれたらOKして欲しいという話をあちこちに伝える事にした。
 ノッカ、ミナカタは快諾してくれた上に関係性も良いのでターゲットからは除外。「ミサ」は受け入れてもらえそうな匂いがしつつも、最終的には不透明な感触。

 ターゲットを悩んでいるうちに時は過ぎ、皆の発言ポイントも残り少なくなってきた。相手が喋れないと告白そのものが成立しない、やるなら今だ。結局、ターゲットは事前説明をしていなかった眼鏡男子の妖精キリノに決める。彼はNo.J、すなわちハワード死亡が条件なのだ、告白を断ってくれるに違いない。

キリノ様。私は天啓を受けたように貴方様への気持ちに目覚めました。貴方様のクールな出で立ち、振る舞い、そして丁寧な人柄。何を取っても神の似姿と言えるでしょう。
貴方様へのこの私の愛の想い、受け入れてくれませぬでしょうか。

 精一杯上っ面な告白台詞を考え、キリノに突入する。キリノからはこちらの情報を聞かれ、「役職は少女、告白成功した相手と2晩生存することがクリア条件」と伝える。2晩生存を付け加えたのは、即座にクリアと答えた場合に、告白成功後に首輪のランプを消す事を要求されるかも知れなかったから。バレる嘘はつきたくなかった。何となく生々しい条件なのもよかった。

 が、「2晩生存」を聞いたキリノは「その間にハワードを殺せばいい、それまで利用しよう」と判断したようで、あろうことか告白は受け入れられてしまう。困った。これは困った。困りながらも、せっかく告白成功したので、発言が尽きたキリノ相手に一方的にカップルRPはしておいた。

 実を言えば告白より前に、占い師であるミナカタと会話し、妖精であるキリノを溶かしてもらえる事になっていた。告白後ミナカタからは「溶かさないほうがいいか?」と確認がきたものの、「いや溶かして欲しい」とそのまま継続を依頼。さらに占いを妨害する能力を持つケイイチにも、キリノを溶かすので妨害はしないで欲しい旨を伝える。
 すべてはキリノ亡き後、新しい恋をする為。キリノと付き合ったまま別の人物に告白する事もシステム的には可能だが、それではあまりに胡散臭く、警戒されること間違いない。恋人が死んでしまったのなら、後腐れなく次の恋をすることができる。ハワードは悪い男であった。

 このような経緯で2日目の条件達成は失敗した。これで吊る予定のカミジャーが犯人なら敗北してしまうが、それはもう仕方がない。カミジャー犯人だからやめようという声も全く聞こえてこなかったので、恐らく大丈夫だろう。こうして運命の3日目を待ち受けた。

・3日目・吊りと襲撃と呪殺、そして2人の爆発

 吊りはカミジャーに9票、ノッカに3票となった。自陣営の5票、ノッカ陣営の3票、キリノの1票で9票。…ちょっとまて、ガルムに入れるはずの1票が無い。レティーシャが保証していたはずなのだが、何故だ?

 襲撃はケイイチ。仲間票が1つ減ったが、最後には切る予定だったのだから仕方がない。襲撃された理由はわからないが。キリノは呪殺(占いによる妖精溶け)で死亡。ここは予定通り。

 そして、ガルムが「1票も入らなかった事」による死亡。ノッカも突然の死亡。一気に5人減り、生存者の人数は12人から7人になる。

 ノッカの死については「Qが死んで勝利条件達成出来なくなって死亡したのか?」と思っていたが、それはルール4「クリア条件の未達成が確定しただけでは首輪の爆発は発生しない」に反している。後から皆と検討した際に、KQが多くの場合所有している殺害ツールによって殺されたのだろうと結論づける事になる。(実際そうだった)

・ガルムの死を問い詰める

 ガルムの死にショックを受けているハワードに対してレティーシャから連絡が来たが、内容は「ヤンをKQ殺しツールで殺せなかった」事、あとレティーシャの役職を公開しようと思うがどうかという相談であり、ガルムの事には全く触れられていなかった。これはあまりにもおかしくないだろうか?

 何故ガルム票が無かったのかを問い詰めると、「ケイイチがガルムに一票いれるはずだったが裏切られた」との返事。しかし、大事な仲間を生かす為の票を「最後に切る予定の人物」任せにするだろうか?どう考えても信用できない。レティーシャは意図的にガルムを殺した、この時点でハワードはそう断定した。レティーシャはKQの可能性が高いし、もしKQでないとしても仲間を殺す人間を仲間とは見做せない。何故なら、ガルムと同じようにいつ自分を殺しにくるかわからないからだ。

・サラの殺人依頼

 レティーシャは見限ったが、サラは継続して仲間の認識であった。そのサラから「ミサを告白で殺せないか」との打診があった。ミサの条件をサラがツールで調べた結果、「死者で7以上の連番を作る」事が条件であり、サラの番号であるJokerはワイルドカードとして使用可能。つまりNo.7のミサにとってJokerの殺害は必須条件であり、サラが狙われるというのである。

 サラを守る為にミサに告白するのは吝かでなかったが、問題はミサが告白を断ってくれるかどうか。そこが怪しいのでいったん考えさせてほしいとサラに返答し、検討を始める。

 No.7のミサは犯人側についていると聞いており、ミナカタの協力相手だった。ミナカタの条件はセカンドステージで「No.5かNo.7の生存」となっており、No.5は2日目の爆死したアリババ(犯人)であった。となると、No.7も犯人である可能性は高いのではないか?そもそも、死者で7つの連番を作る条件を襲撃能力を持たずに達成できるのか?

 なるほど、ミサは犯人だ。ここを殺すとゲームが終了する。サラはケイイチとノッカの死亡によってクリア条件を達成している。ミサ犯人を知っていて、ゲームを終わらせにきたのだろうか?今日終わるとおそらく条件達成できないレティーシャを見捨てて?

 …うん、それはありだ。ハワードも告白して断られれば条件達成できるし、それで村が終わるなら言う事ない。レティーシャはもう仲間ではないので、気にする必要は無い。レティーシャに何か言われたら、サラに依頼されただけでミサが犯人である事は知らなかったと言えばいい。実際推測しているだけで、知っているわけではないのだから。全てを終わらせる依頼、承ります。

・2回目の告白

 キリノの死を悼んで間もない時間。表ログではレティーシャが役職と目的を公開し、ヤンに対して殺意を向け始めていた。が、それとは無関係にハワードはミサへの告白を開始した。再び上っ面な台詞と花をしたためて。

[4F休憩室に、その女性はいた。淑やかな黒服に黒髪。儚さの中にも芯があるように見えるのは、その強い意志を込めた切れ長の瞳故か]

三佐様、貴女はお美しい。私は、今まで貴女の魅力に気づいておりませんでした。
このような時にと思われるかもしれませんが、愛に時は関係ありません。どうか、私の心、そして愛を受け取ってはいただけませんでしょうか。
この花のように、貴女と私の愛を、今度こそ永遠にしたい。そう思っております。

[ブリザーブドフラワーをそっと差し出し、三佐の目を真っ直ぐに見つめた]

 ミサにも利用目的で承諾される可能性は十分にあった。事前の打診では受けてくれそうな雰囲気もあった。が、そこで奇跡が起こった。

・KQ紅鯨団

 ちょおおおおっと待ったああああ!!!!

 その声は高らかに村中に響き渡った。ヤンがハワードの告白に乱入してきたのだ。ヤンとしては仲間のノッカを失い、ここでミサをハワード・レティーシャ陣営に持っていかれては堪らないという気持ちだったらしい。が、ヤンの条件は「犯人全滅」。ヤンの告白でミサがハワードを断れば、ヤンも条件達成するという奇跡のコラボ。

 さらにその裏ではミサとがっつり組んでいるミナカタがミサを口説いていた。

あんなヨボヨボの爺さんが好いのか?
俺にしとけよ。

 ヤン、ミナカタの説得。そして、これは全く知らなかったのだが、前日ハワードが付き合い、一夜で死別したキリノ。彼がミサの一番親しい存在であったのだ。おそらくこれらの要素が重なり合い、ついにミサはハワードの告白を断った。

 ミサは死亡し、犯人は全員いなくなった…はずだった。しかし、村は終わらない。これは、どういうことだ?

・終わらない村

 犯人は全滅した、そのはずだ。しかし村が終わる気配は無かった。アリババ、ミサが犯人だったのは間違いないはずだ。そして初期犯人は2人。襲撃はケイイチなので、半狼が存在したとしても狼化する暇は無かったはずだ。となると、ルールが間違っている?

 悩んでいると、サラから連絡が来る。ミサ殺害の礼、そしてレティーシャKQを疑っているという内容だった。サラが知らなかったガルム死亡の理由も説明し、自分もレティーシャを疑っていることを伝える。サラとはおおよそ同じ気持ちで行動していたようだった。

 村が終わらない疑問については自分でも調べていたが、サラから「GMの手動処理により狼が全滅してもその場でゲーム終了判定は行われず、更新時間に投票・処刑等の処理が発生します。」と記載されたルールを教えられ、犯人が全滅しても処刑が発生し翌日になってから終わる事を理解する。ここは自分も含め皆認識違いをしていたようだ。村によっても違うかもしれないので、毎回ルールを確認するのが良い部分だろう。

 表では勝利条件が無くなったミナカタが、全ての犯人がいなくなったことを公表する。あとはKQを吊って明日を迎えるだけだ。

・KQを追い詰めろ

 レティーシャ、ハワード、サラ、この3人は固いチームである。傍からはそう見られていたようだった。が、ハワードとサラの心はレティーシャから離れていた。

 サラは、ミサ一匹狼を知っていた事、そしてサラがミサに依頼しケイイチを殺し、そのミサをハワードに依頼して殺した事実を公表する。レティーシャは見捨てられたことを正しく理解した。そして、それに対する返答として「サラを優先してガルムを見捨てたのに」と主張した。

 これは聞き捨てならなかった。レティーシャは「ケイイチに騙されたからガルムが死んだ」と取り繕うのもやめたのだ。レティーシャはガルムの本当の条件がヤバいから殺したと主張したが、ハワードは自分の聞いているガルムの条件と役職を公表し、それを否定した。レティーシャは孤立し、KQ視されはじめていった。

・首輪ランプ消灯

 この時点で、「KQが生きていると条件クリアしても首輪が爆破される」という認識が皆の中にあった。レティーシャが主張した事だったが、アリババの爆発が「条件達成しても首輪が爆発する罠がある」と皆に思わせていたらしい。

 ハワードは、アリババ爆死の原因が自分の配布ルール偽装だったことを知っているし、首輪ランプ消灯ルール3も自前の物なので、そこが偽装されている心配をする必要が無い。余計な不安があるとノイズとなり皆が判断を誤る可能性がある。また、自分の首輪ランプが消灯すれば、自身のKQ疑惑も消える。ハワードはルール3に従ってPDAを首輪に読み込ませ、首輪ランプ消灯に成功する。

・レティーシャのKQCO

 場はレティーシャKQ視に流れていた。このままではただ吊られて終了すると考えたレティーシャは、表でKQCOを行う事にしたようだった。(実際はそれ以前に秘話でハワードとサラにKQCOをしていたのだが、ハワードはよく読んでおらず気づいていなかった、申し訳無さ過ぎて涙が止まらない。)

 レティーシャの主張の主旨は「KQツールは日替わりであり、自分が吊られても発動する。最後に死にたくなければ自分に票を合わせろ」という物だった。だが、流石に吊られても発動する日替わりツールの存在は信じられない。「それが真実なら自分にツールを使うがいい」と(内心怖がりつつ)主張したのだが、KQレティーシャとしてはハワードに殺害ツールを使うのは当たり前(条件達成が確定していて吊りも出来ない)なので、その時点ですでにツールは使われていたのであった。

・最後の疑心暗鬼

 場はおおよそレティーシャ吊りの流れだった。が、心配事はまだあった。この時点で生存者は6名。レティーシャ、ハワード、サラ、ヤン、ミナカタ、そして「オーレリア」。

 オーレリアの勝利条件は、終了時に奇数Noが5人死んでいる事。この時点で本来は5人だったのだが、ノッカのNoがAからJokerに変更されていたことが発覚し、条件達成にはNo.Kのミナカタ、もしくはNo.Jハワードの死亡が必要であった。レティーシャを吊らずにKQの殺害ツールによるハワードの死亡を狙ってくるのではないか?

 サラには首輪のランプ消しを勧めたのだが、この土壇場で実際の条件が違う事を告げられた。「初日に選んだ4つのNoの中の2人死亡」ではなく、「初日に選んだ4つのNoから丁度3人の死亡」であり、最終日に限り選択Noを1つだけ変更できるツールがあるとの事だった。レティーシャを吊ると4人全部死んでしまうが、ツールがあるから大丈夫、との事。
 …そんな都合のいいツールが存在するのか?サラもレティーシャ生存敗北を狙ってレティーシャ以外に投票するのではないか?

 疑心暗鬼である事はわかっているし、もしそうであったとしても自分にはどうすることも出来ない。深呼吸して落ち着き、覚悟を決める。サラのツールについては、その後会話していくうちに実在する感触がつかめたので、その点は安心できた。

・最終投票

 運命の最終投票。レティーシャ5票、ヤン1票。レティーシャは吊られ、KQ殺害ツールが発動することも無く、ハワード、ヤン、サラが生き残り勝利となった。

・総評

 ハワードとしては良い関係性と運に恵まれた展開だったと考える。KQツールがかなり強力だったので、あと1日延びていたらどうなっていたか本当にわからない。ガルム、サラ、ノッカ、ミナカタとは良い関係を築けた(ミナカタの勝利条件は潰してしまったが)し、レティーシャとも最初に組む事でターゲットになるのが後回しになった側面はあると感じた。

 なお、KQ村は一期一会。この記録は「KQpeaceにおいてハワードがこうし考えた」という物であり、異なる村の異なるキャラで自分がどのように考えるかは、全くの未知数である。それがまたKQ村の魅力なのである。

 おしまい。

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