夜は淫蕩

前のより背後注意
雪くんは好きな人ができると観察し始めるっていう話。





窓の外にある塗りつぶしたような黒い街。星はポツポツと白い絵の具を零したようだ。月が浮寝台に零れた青白い月光りは、寝ている夏目さん身体を不埒に照らし、夜の闇から浮き彫りにする。
俺に好き勝手されて怒って背を向けた夏目さんは一向にこちらを向こうとしないため、俺は御機嫌取りをやめて夏目さんの背中の観察をした。
白い背中は緩やかな曲線を描いていた。
月光によって落とされた影が、夏目さんの背中を照らし白と黒のコントラストを作る。肩甲骨が浮き出ている様子や、背中の脂肪の付き具合、むき出しの肩の柔らかいカーブ。その全てに柔らかいエッジを描いた影が落ちていた。
シーツから出ている足も背中と同様にミルクのように白かった。微かに曲げられた膝から弾力を持ったふくらはぎ。
儚さも強さも特別感じられない肌に、どうしてこんなに惹かれるのか。
温みを帯びた肌。
指の間をぬるりと這う、据えた夜のにおい。
子供のような夏目さんが、ベッドの上で大人にしか出来ない不健全な行為をしているのはなんだか笑えてくる話だ。
かといって子供のやるようなごっこ遊びの性行為をしているわけではないため、やはり俺達のしていることは、アンバランスで、アシンメトリーなのかもしれない。
一番近いところにあるカメラを手に取り、レンズを覗いた。
夏目さんは、レンズ越しで一番淫蕩になる。

「夏目さん、撮りますよ」

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