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「愛する人の他者性」

表には出せないけど、完全に「裏」にもしてしまいたくはない、心の中にあるまだ熟していない思いについて綴るマガジンです。お金、恋愛、コンプレックスなど、日々の生活の地続きにあるけれどA面ではなかなか出しづらい部分のこと。このマガジンに書かれている内容は、シェア禁止でおねがいします。週に1度は更新する予定です。

発売されてすぐに購入し、ずっと読もう読もうと思っていたのになかなかまとまった時間が取れずに置いてしまっていた、平野啓一郎さんの最新刊『本心』をようやく読み終えた。読み始めたらおもしろくて手が止まらず、450Pもあるのにほとんど昨日と今日で読み切ってしまった。

この小説の舞台は2040年。今から約20年後の日本が舞台になっていて、最愛の母を亡くした主人公・朔也が、VF(バーチャルフィギュア)という先端技術を使って母を仮想空間に蘇らせ、「自由死」という死の形を望んだ母が生前に何を考えていたのか、その本心を知ろうと行動する……という内容の物語だ。

帯にも「愛する人の本当の心を、あなたは知っていますか?」とあるように、そして「本心」というタイトルにもあるように、これは愛する人の本心を探ろうとする話である。そして小説のラストシーンでは、その「本心を知ろうとする」行動は、「愛する人の他者性と向き合う」という言葉で言い換えられていた。

愛する人の他者性。

その言葉に込められた意味は何なのか。他者が「他者」であるとはどういうことなのか。この本を読んでみて、感じたことなどをここに記しておきたい。

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2,094字

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