2021年1月17日

セブンでカフェラテを買ってポストを確認したら封書が届いていて、とても大切そうな雰囲気があって送り主をみたら国からのものでした。
メンバーに『なんか国から届いてる』と伝えたら、アベノマスクが届いた時と同じ反応のメンバー。
タツルボーイが『あれ?今日の20時だっけ?』と言う。
岩さんは『え!?あ!そっか!今日か!』と言いながらヘッドフォンを首まで下ろす。

こっちゃんは封筒をビリビリ下手に破きながら『そうやで!エライぎりぎりやな!ワシら低所得者やからか!』と笑って答える。

え?何が?と私は聞く。

封筒からコンドームのようなアルミ製の四角い袋が4つ出てくる。
小さい丸い薬が入ってるようで過剰な包装だなと思う。

私たちの情報が色々と書かれている保険証のようなものと、指紋が印刷されたカードも入っていて、『これがあくびのやね』とこっちゃんに渡される。

今日の日本時間でいうと、23時以降の時間帯に世界のどこかが消滅するけど、それがどこの範囲になるかまでは2020年の技術では把握できないらしく。
世界中がパニックにならないよう、同じ時間帯にこの薬を服用することが全国民、世界中の人間の義務となっていると。
この薬を飲むと、不安感が無くなり、確実に深い睡眠を得られる。し、10〜15時間個人差はあるけど確実に目が覚めることは無い。
薬の飲み合わせを気にする必要もなく、アレルギー体質の人でも問題なく服用できるので、誰でも安心して飲めるとのこと。

この薬を飲んで安心して強制的に眠り、もし自分たちの国、地域が消滅しなければ、10時間後に目が覚めることになり、
もし、自分たちの国、地域が消滅していたら、眠りながら死ぬことになる。

この薬をこのあと飲むということは、下手すればもう2度とみんなと顔を合わすことがないかもしれないという事実を私は受け入れられなかった。
私の家族知らされてないかも。と思いLINEを開くとお母さんから『今からお父さん、ばばと飲みます。大丈夫だよ。また明日ね!』といった内容が15分前に入っていた。
急いでお母さんに電話を掛けたけど出なくて、岩さんに『変に起こしたら可哀想やからやめとき?』と言われる。
泣きそうになって、トイレに行って手を洗って、ふとゴミ箱を見ると、銀色のゴミがあって、さっきの薬のゴミだと気付く。

誰かもう飲んだの!?っと聞いたら、タツルボーイに『俺さっき飲んだよ!』と言われる。

気付くとこっちゃんももう薬で眠っていて、岩さんがこっちを見ている。
『岩さん、一緒に飲みません?』と提案したら、岩さんはすんなり受け入れてくれて、
『最後になるかもやから、好きな飲み物で飲みたかよね。おいは氷結で飲もうかねー。』と言って冷蔵庫へ向かう。

私は好きな飲み物何だろうと考える。
水、緑茶、カフェラテ、炭酸水。
さっき買ってきたセブンのカフェラテを思い出す。でも、最後になるかもしれない飲み物がセブンのカフェラテもなぁ…と悩む。
ふと気付くとタツルボーイは眠っていた。
こっちゃんの携帯の画面がつきっぱなしで、家族の写真が見える。
何もちゃんと伝えられなかったな。と、思い涙が止まらなくなる。

岩さんが念のため持病の薬も飲んどこう〜とぶつぶつ言いながら氷結を開ける。
私は水で飲むことを決めて、岩さんに薬を渡す。
『あくび大丈夫って!明日みんなでボードゲームしようで!どんな夢みたか聞くのたのしみやん!炊飯器の夢見た人が勝ちにしようで』と言って岩さんはあっさり薬を飲んでしまった。
私は急に中学の修学旅行で行った八ヶ岳の就寝前を思い出す。
さっきまであんなにみんなでケラケラ笑って話していたのに、ひとりひとり意識がここじゃないどこかへ行ってしまって、どんどん1人になって寂しくなって、家に帰りたくなるあの感じ。

『結構すぐ眠くなりますか?』と岩さんに聞きながら、私も早く飲まないとと思い、薬を押し出す。
カランと乾いた音がして、落としてしまったことに気づく。

急いでフローリングの上を探すけど見つからなくて、ソファーの下を携帯のライトで照らすけど見つからない。
私だけ眠れないまま23時を迎えなければいけないのではという恐怖と焦りで心臓の音が部屋中に鳴り響いて、心臓の振動で手が震えて冷や汗が止まらない。

『岩さんどうしよう、薬どっかいっちゃった。薬って予備あるのかな?』
と聞こうとした時、岩さんの寝息が聞こえて私は本当にひとりになった。

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