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No.7|プランナーができること

 COVID-19の影響で、都市計画審議会や計画策定委員会、その他の都市計画・まちづくりの会議も平常通りには開催されなくなった。一部の自治体はWebexやFaceTimeを使ったオンライン会議の準備を進めている。多くの会議は延期か書面開催。書面開催の場合は、資料を読み込んでコメントを作成するが、これはこれまでも欠席する会議に対してはやってきたことなので慣れている。内容によってはお断りしていた「事前説明」もなくなり、スケジュールが楽になった。ところで、日程調整をエクセル表で行う習慣がなくならないのは残念だ。
 一方、自治体によっては、特に調査・研究や計画策定の業務の優先度が下がっているようで、これは公務員の数が少ないこともあり止むを得ないが、With/Post COVID-19の都市計画やまちづくりのことをあれこれ考えても実行されずに終わってしまう心配がないわけではない。東京都の「新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた当面の都政の運営について(依命通達)」にも、「集中的・重点的な取組に注力するために休止する事業」の例には、建設系公共事業のほか、行政計画、統計調査、都民・大学研究者等による事業提案制度、調査研究が含まれている。
 そのような中、American Planning Association の COVID-19 Resources のページにプランニングの方法やツール(Planning Methodology and Tools)に関する記事へのリンクがあったので、いくつか読んでみた。当然、米国の文脈で書かれているので、日本にそのまま通用するものではないが、重要なポイントは共通しているように思うので、ここに整理しておく。この他、このページには、市民参加、経済影響、国・州の支援、住宅、インフラ、土地利用、交通などの情報へのリンクがある。

1.なぜプランニングが引き続き重要なのか:プランナーが今できる10のこと

・自宅から「エッセンシャル・ワーク」を行う。プランナーの仕事の多くはデータ・情報収集、市民参加など現場で行うことが多いが、これらの仕事の多くは在宅でできることが分かってきた。

・リモート・ワークを進める。プランナーや行政職員の在宅勤務環境を整備することは、COVID-19感染拡大防止に貢献する。

・自治体の防災・減災・緊急対応チームにプランナーとして加わる。

・参加とアウトリーチの仕事を進めるために、バーチャル手法を身につける。Zoom、WebEx、Map.Social、GoToMeetingなどのプラットフォームを駆使することができる遠隔会議の専門家になる。

・許認可業務・審査業務をオンライン化する。

・プランナーは調査・データ分析の技術を持っている。健康、公共安全、公園、廃棄物管理、建設、環境、住宅、交通などの担当者に必要なデータを整理して届けるなどの協働作業を行う。

・シナリオ・プランニングの技術を学ぶ。異なるアクションがどのような異なる結果をもたらすのか分析する。緊急対応の基本は、ハザード特定・ハザード分析・影響分析の3ステップのリスク評価プロセスである。シナリオ・プランニングはハザード分析と影響分析のギャップを埋めることができる。戦略的なシナリオ・ベースのプランニングが役に立ち、これはプランナーが先導できる部分である。

・国や自治体の通達を理解し、住民、開発業者、他の自治体職員等と会話する際にキー・ポイントを強調する。

・マスタープランや土地利用規制の改定の準備をする。緊急対応が重要な時期ではあるが、その後のことを考えてデータ・情報収集、調査研究、市民参加手法検討などの準備をしておく。

・今後の自治体財政・サービスの縮小のことを考える。土地を保全する開発方針、公共交通とそれへの投資、アフォーダビリティ・密度・公共交通や他の公共サービスへのアクセスを考慮した住宅政策、全ての政策に社会的公正の観点を意図的に統合する戦略など。

2.規制の巻き戻しに対応する7つの方法(のうち4つ)

・変化するニーズに対応して現行計画・規制を調整すべきだが、引き続き望ましい(With/Post COVID-19時代にも掲げるべき)長期的目標を取り去るような施策には抵抗する。焦ってはいけない。

・提案された施策は、利害関係者の多様な視点から評価すること。パンデミックの前から不評だった施策は、パンデミック後も不評である可能性が高い。こうした施策の是非に関わる検討では、フィジカル・ディスタンスを確保しながら市民参加を行う必要がある。

・法の支配は民主主義の基本であることを知らせる。回避しようという圧力があっても、既に決まっていること、指示されていることには従う。

・パンデミックとその後に有用な実験的な施策を進める。パンデミックによって従来の運用ができなくなっているが、それは、「よいプランニング」の原則に基づきこれまでやってみたいと思っていた施策を進める機会でもある。短期的なパンデミック関係の課題を解決しつつ、長期に渡ってコミュニティに利益をもたらすような取り組みがベストである。ドローンによる宅配、歩行者・自転車環境の改善など。

関連ウェブサイト

新型コロナウイルス感染症の状況を踏まえた 当面の都政の運営について(依命通達)
https://www.metro.tokyo.lg.jp/tosei/hodohappyo/press/2020/05/05/documents/03_00.pdf

American Planning Association COVID-19 Resources
https://planning.org/resources/covid-19/

Why Planning Is Still Important: 10 Things Planners Can Do Now
https://planning.org/blog/9198752/why-planning-is-still-important-10-things-planners-can-do-now/

7 Ways to Respond to Regulation Rollbacks
https://planning.org/blog/9200079/7-ways-to-respond-to-regulation-rollbacks/

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