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お米とステーキとサステイナビリティ

この記事を書き始めて、1ヶ月以上が経過致しました…アイタタタタ。その間に、シアトルでは20年ぶりの大雪とやらが降ったり、私は日本に弾丸帰国をしてテストを受けたり、戻ると同日に日本からホームスティの学生さんを迎えたり、シアトルでリーダーシップトレーニングなどを行うNPO団体iLeap(http://ileap.org/ja/who-we-are/)からインターンの学生さんを受け入れてメンターをして「環境と鮭」の関係についてレポートを作ってもらったり、可愛い蘭ちゃん*1が遊びに来たり、雪の影響で押せ押せになった仕事が大変なことになったり…。目が回るほど忙しい日々を過ごしておりました。そしてハタと気がつくと、もう3月も終わりではないですか…。今年は少し異常気象で、まだ寒いながらも晴天の日の多いシアトル。りんごや桃、桜の蕾も膨らみはじめ、ちょっとエンジンがかかり始め…いや確実に焦りの方が大きいかな。

*1(去年ホームスティで来た女の子。本当の娘の様に愛でて止まないのだけど、娘と呼ぶのはちょっと恥ずかしかったり、烏滸がましかったり。代名詞が難しいので「可愛い蘭ちゃん」で。あと「可愛い●●」子達が数名おります。)

(写真は最近お邪魔したLummi Islandにあるファームのりんごの木。蕾が膨らみ始めました)

さて、この会社を初めて約1年。今までにも会社やレストランを立ち上げた経験が数回ありますが、今回はずっと心に止めている事があります。それには「お米」を大事に、ビジネスを進めろと教えてくれた父の影響がありました。自分がはじめたエンジニアリング・メーカーを40年以上経営してきた父からは、夢や理想を追いかける仕事と、日々の糧になる仕事とのバランスについてアドバイスを受けました。「お前は美味いステーキを食べる計画ばかり立てているが、美味しい米を実直に作っていれば、君たちのコツコツ働く姿勢を見て、米とステーキを交換したいという人や、他にステーキを食べる機会に恵まれるかもしれないだろう。第一、腹は空かない。派手な事をしようとせず、地道に仕事に励みなさい」と。

そうですよね。何の実績もない(歳は取っているけど)立ち上げたばかりの会社に、融資をしてくれる人は希少だし、出来ることを一歩一歩確実にやって行かなくては。牛を買う資金を出資してもらうには、日々の草むしりを一生懸命して、今立っている農地を整備しなくては。自分の都合で日本とアメリカの真ん中で仕事をする!と夢見る夢子さんな私はつい大きなことを考えがちですが、まずはスタッフと一緒にキッチンに立って皆さんに「心と身体、そして環境に優しいお料理とお料理お助け材料」を日々お届けすることが今の私の仕事だ!と日々喝を入れています。大きな夢ばかり追いかけて、家族に寂しい思いをさせたり、スタッフに不安な思いをさせたり、ファーマーと一緒に土に触る時間がなかったり、お客様にご迷惑をかけたり、忙しすぎて自分の健康状態も精神状態も悪くて、家事や犬の散歩もままならない…なんて、本末転倒も甚だしく、サステイナブル(ずっと出来ること)じゃないですよね。サステイナブルに暮らして、サステイナブルに食べて、サステイナブルにビジネスの事を考えていると、今まで私たちがどんなに無理をして生きてきたのかわかるような気がします。

シェフは実は私生活での日々の食事が最低だと言われています。私の行った調理師学校の未婚男性シェフ達は、家ではカップラーメンを食べていると言った人がほとんどでした。高級レストランは、賄いで食べさせてくれる場合はいいけれど、シェフの薄給ではお店で自分で作っているものを食べられないなんてこともあります。長時間の肉体労働でクタクタな上に、家に帰ってまた調理をするのはキツイという意見もあります。でもそれってあんまりに悲しくないですか?人間の生きるという事の本質を考えたら「食べる」という活動はプライオリティーが高いはずなのに。料理が出来ても時間がない。仕事で疲れてエネルギーがない。時間があっても料理は不得意で作り方がわからない。以前は家族の団欒の時間で、お料理上手なママが子供達に作り方を教えてあげていたはずの「手作り」で「時間をかけて」作る食べ物(イタリア・マンマの手作りパスタとか、餃子とか)は、いつの間にか大量生産されるものを使うのが当たり前。最初は便利だった加工食品は、市場が飽和状態になるに連れ利便性を追求するがばかりに、料理を普段からする人には「なぜ?」と思うような商品が氾濫し。(すき焼きのタレとか。醤油・酒・みりん・砂糖…自分で作った方が安価と言う噂も。)添加物や保存料の健康被害は怖いけど、便利なものを安価で買うためには仕方がない。だってTime is Moneyだもの。…何かが違うような気がするのは私だけでしょうか?

話はちょっと変わりますが、今日のキッチンは私たちの「同志」でありクライアントのMr. Green Finger Popcorn (https://www.facebook.com/mrgreenfingerspopcorn/) のCopack(OEM製造の事)作業が行われていて、ポップコーンの香りでいっぱいです。このポップコーン、スピルリナという中南米やアフリカの湖に自生する藻類をスパイスのベースに使っています。スピルリナは乾燥すると約60%以上がタンパク質というスーパーフードで、原産地の人々の貴重な食糧源として以前から利用されてきました。この商品を販売しているTummy Templeは(https://store.tummytemple.com/collections/mr-green-fingers) ワシントン大学の近くのRevenna地区にある主に消化器系疾病の治療をメインとするクリニックで、西洋医学・漢方や鍼灸などを使った東洋医学・薬草を用いた自然療法・食事療法などを合わせた治療を行なっています。このポップコーンに使われている材料は、オレゴン産のオーガニック・ポップコーン、オーガニック・スピルリナ、カリフォルニア産のオリーブオイルやオーガニック・ココナッツオイルなどを使用。パッケージングもコンポスト可能な素材を使っています。マイクロウェーブポップコーン(アメリカで売られている袋ごとチンするタイプのポップコーン)より確実に身体にも、心にも環境にも優しいスナックで、子供さんたちのウケも最高。実はこのプロジェクトは、学生時代には日本への留学経験もあるオーナーのティムさんの息子さんたちがレシピ開発やレベルデザインにも関わり、「子供達にビジネスを教えるいい機会にも役立っている」とティムさん。

普段、私たちのお料理では「ローカル」が重視されるため、オリーブオイルやココナッツオイルは使用しませんが、それら油に含まれるオレイン産や、オメガ3脂肪酸などはワシントン州で栽培されている油種からは摂取不可能なものもあり、製造のお手伝いをすることにしました。こうやって少しずつ私たちと同じように考え、同じようなことに価値を見出し、一緒に少しでも多くの人に「心と身体と環境に優しい」食品を提供する同志を見つけて行く活動も、私たちの大切なお米作りだと思っています。

さてと、偉そうな事を言うのはそろそろやめて、ポップコーンの袋詰め作業に戻ります!

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