ひきこもり支援と就職氷河期世代支援は分けて考えてほしい

就職氷河期支援プログラム関連のニュースを最近よく見るのだけど、そのたびに引っかかっているのが、不安定雇用や失業者への就職支援のなかにひきこもり支援が紛れ込んでいること。就職氷河期世代の、特に男性と子供のいない女性に関して不安定な雇用形態にある人がほかの世代に比べて多いのは事実だけど、就業率ですら他の世代と明白な差はないのに、ひきこもりが多いという根拠はどこにあるのか。

というわけで調べてみた。

政府による引きこもり人口の試算の根拠となっているのは、内閣府が実施した「生活状況に関する調査 (平成30年度、対象は40-64歳)」「若者の生活に関する調査(平成27年度、対象は15-39歳)」である。調査報告書には、有効回答数、そのうち広義のひきこもりにあたる数、広義のひきこもり群とそれ以外のそれぞれに占める年齢階層別の割合が公表されている。この数字を使って、年齢階層別引きこもりの人口比を計算してみた。

H30調査に基づく人口比
40-44歳(氷河期世代) 2.0%
45-49 0.8%
50-54 1.1%
55-59 1.7%
60-64 1.8%

H27調査に基づく人口比
15-19歳 0.9%
20-24 2.2%
25-29 2.2%
30-34 1.5%
35-39(氷河期世代) 1.3%

H30年調査では、たしかにすぐ上の世代の倍の割合ではあるが、55-59歳や60-64歳とは大きく変わらない。また、H27年調査では、下の世代よりむしろ小さい。

回答率が65%程度、有効回答数約3200人で、ひきこもりに該当するのは50-60人程度、という規模の調査なので、コンマ数パーセントの差を比べるには精度が足りないし、そもそも、ひきこもり人口を調査で正確に把握すること自体が難しくはあるのだが、とりあえず、ひきこもりは就職氷河期世代に特徴的な問題であるとは言えない、くらいのことは言ってもいいのではないかと思う。

そして、就職氷河期支援プログラムの枠組みの中でひきこもり支援を行うのは、単に根拠に欠けるだけでなく、ひきこもり支援としてあまり良いやり方ではないように思う。

私はひきこもり問題に関しては素人だが、最終的なゴールとして経済的自立(≒就労)があるにしても、家の外に出る、他人とコミュニケーションをとる、といった段階で困難を抱えている人には、メンタルヘルスとか行動療法の専門家による支援がまず必要で、就労支援はそのあとじゃないかな、というくらいのことはわかる。

現状、就職氷河期世代支援の内容は基本的に就労支援だし、そもそも3年間の短期プログラムだ。その中に無理やり組み込むんじゃなくて、ひきこもり支援として、全世代向けの恒久的な仕組みを整えるべきだと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?