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おでかけの一枚 ひと色展

※もう一枚、イシノアサミさんのこちらの企画に参加します(^^;)






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んーっ・・・あと5分・・・

と言い続けて、やがて30分経とうとしている。
中ノ原なかのはら 彩季さきの休日の朝は、2度寝の連続で始まる。
彩季は、ちょうど社会人4年目。個人経営の会社で、事務員として働いている。昨日まで残業続きの日々だった。帰りは早くて21時。遅いときは終電に駆け込み乗車するほど。
なぜそんなに残業があるのか?毎日、事務処理で特に大きなミスをしているわけではない。仕事のペースが特段遅いわけではない。遅いどころか、早くて正確に仕事をこなす。いわゆる「デキる事務員」だった。周りが、彩季を頼り始めて、彩季もそれぐらいなら、といろんな仕事を引き受けているうちに、仕事量がどんどん増えていき、気が付けば、同期の3倍近く仕事をしなければいけない状況に陥っていたのだ。
まだ若いんだし、若い時の苦労は買ってでもせよって言うし、何か将来のためになるなら、と思っていたが、それも3年目まで。3年目を過ぎた辺りから、苦労を買いすぎたなと思い始めるようになった。

布団をばさりと床に落とし、ベッドに腰かけて、うーんと背伸びをする。大きな欠伸をしながら、髪を触る。
「・・・はねてる」
あー、昨日ちゃんと髪を乾かさなかったからかなー。せっかくの休日だというのに、なんて格好なの?っていうか、20代半ばにもなって、彼氏もいないし、いつも遊んでた友達は彼氏と遊んでるし、あー、私のこの生活はいつまで続くのよ?
そんなことを心の中で呟きながら、ひとまず白湯を飲む。そして、ふとテーブルの上にある無料情報誌と目が合った。
「モーニング特集か・・・」
だが、今は9時半。掲載されているお店のモーニングはだいたい10時までだ。お腹が鳴る。
情報誌を見ていると、昨日までの残業の疲れ、いや、3年目からの仕事のモヤモヤ感が不思議と頭から抜けていく。抜けた部分には、美味しそうな料理が埋められていく。さっきまでのうだうだも、どこかへ行き、だんだんウキウキになってきた。
「よし!モーニング食べに行こ!」
その一言で、彩季は「仕事の彩季」から「休日の彩季」に変わった。

《了》




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こちらもギリギリ文字数!
アサミさん!またまた、よろしくお願いします!

記事を書くための栄養源にします(^^;)