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おやつの一枚 ひと色展

※この記事は、イシノアサミさんのこちらの企画に参加しております。





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「じゃーんけーんぽん!」

色づいた葉っぱはすっかり落ちて、季節は冬。
だが、葉っぱが落ちて木が枝だけになろうと、どんなに北風が吹いていようとも、公園で鬼ごっこをする子供たちには関係なかった。
「あ!また玲樹れいきが鬼だ!」
「あ・・・また、ぼくがおに・・・」
「れーきぃ~、マジでじゃんけん弱いよな~」
「これで連続5回じゃね?」
「え?もいっかい、じゃんけんする?」
「・・・だ、大丈夫だよ!ほ、ほら、数えるよ!」
明日から小学校最後の冬休み。学校から解放された子供たちは、久しぶりの晴れ間に、さらに解放に拍車がかかり、鬼ごっこにも熱が入る。
「いーち、にー、・・・」
玲樹は目をつぶって、顔を手で覆い、10数え始めた。

10数え終わった玲樹は、ぱっと目を開ける。
「い、いくよー!」
玲樹は遠く離れた友達の元へ向かうべく、一歩を踏み出す。最初はゆっくり、そして、近づくと地面をたんっと蹴って走り出す。
追いかける。逃げる。追いかける。逃げる。追いかける。
「・・・つかまえたっ!」
玲樹は肩で息をしながら、友達の肩をがっしりと掴む。捕まった友達も肩で息をしながら呟く。
「なんで・・・すぐ捕まえるんだよ・・・鬼のプロかよ」
玲樹は「鬼のプロ」と言われて、少しニコッとした。
じゃんけんは、めっぽう弱く、体格もクラスで一番小さく、性格もとても控え目なのだが、足は速いし、持久力も抜群だ。

「れーきぃ!ここまで来てみろよー!」
別の友達の挑発に乗って、玲樹がまた一歩を踏み出した。
追いかける。逃げる。追いかける。逃げる。あと少し。
その瞬間、玲樹の身体が宙に舞った。
「れーきぃー!大丈夫かーっ!?」
みんながそれぞれの逃げ場から玲樹に声をかける。だが、玲樹はまだうつ伏せになったままだ。
最初に捕まった友達が玲樹の元に駆け寄る。すると、玲樹はむくりと起き上がった。手に何やら握っている。
「ねえ!みんなでこれ食べよー!」
転んだ瞬間にズボンのポケットに入れていた一枚の板チョコが玲樹の手に飛び出してきたのだ。

鬼ごっこは、どこへやら。
ほっぺたを真っ赤にした子供たちの笑い声が公園に広がっていた。

《了》



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ギリギリ1000文字!
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記事を書くための栄養源にします(^^;)