エネルギーの安定供給とは 〜原子力発電の経済的な意義〜

日本は戦後3回の重大な経済危機を経験している。石油ショック、バブル崩壊、リーマンショックである。経済指標で見る限り、東日本大震災の影響はこれらのような危機とは比較にならないほど小さい。

3回の経済危機の中でも、石油ショックは日本崩壊の危機を国民全体津々浦々にまで思い知らせた事件だった。中東の石油に大きく依存していた日本は、中東のゴキゲン一つで国が簡単に吹き飛んでしまうことを知った。石油価格の変動に余りにも脆弱だった。

そこで日本がそのリスク緩和としてとったのが、燃料備蓄策である。中東情勢による原油価格の短期的変動を、燃料備蓄という緩衝機構でリスク軽減しようとしたのだ。

しかし石油は備蓄には向いてない燃料で、保存に不安定な液体で、嵩高く、そして爆発危険が大きい。一方、原発燃料は、保存に安定な個体で、嵩は小さく、そして分散して保管すれば発火(広い意味の)危険はない。

原発燃料の、発生エネルギー当たりの重量が小さい事がやたら盛んに宣伝されてきたのは、備蓄に向いている、日本経済の安定化に大きく寄与できるからである。採掘や運搬のコストの問題ではない。

今でも石油備蓄量は、民間が国内消費量の約80日分、国が約90日分で半年に満たない。一方、原子力燃料備蓄は約2年あり、中東などの局所情勢の短期的な緊張が日本のエネルギー供給に及ぼす影響は抑えられている。

但し、この石油から原子力へのシフトの原動力なったと思われるこの理屈はかつては正しかったが、今はもう正しくない。

今では燃料価格変動の周期は石油ショックの頃よりずっと長くてこれらの燃料備蓄期間では足らないし、そして石油価格トレンドと原発燃料価格トレンドは並行して動くようになってしまっていて、原発があるから石油ショックのようなリスクは二度と無いとは言えない。

しかし、原発が今ここにある理由は、世界的な燃料価格変動によって日本経済が完全崩壊するリスクを軽減するためであるから、事故リスクと比較参照すべき数字に、日本経済完全崩壊リスクがあることは間違いない。これを無視して原発を語るのは正当ではないと私は思う。

2012年6月8日、ツイッターでのつぶやき

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