わたしの好きな音楽 現代音楽編

わたしの好きな現代音楽について書こうと思いますが、正統的なセリーっぽいものよりはエレクトロニカや電子音楽の感覚で楽しめるものを選んでみようと思います。私は単なる愛好家なのでそこはお手柔らかにお願いいたします。
現代音楽に興味はあるものの何を聴いてよいか分からないといった方へのささやかなガイドになれば幸いです。(とはいうものの基本的にはわたしの自己満足でやっています)

Gérard Grisey Les espaces acoustiques: III. Partiels

ジェラール・グリゼーは倍音構造に着目した作風で知られる作曲家。彼とトリスタン・ミュライユを中心とする一派は「スペクトル学派」と言われます。
「音響空間」という彼の代表作からスペクトルを操作するかのような音変化が分かりやすい曲を選んだのですが、低い音域から高音域に音色が滑らかに(グラデーションの様に)移行する様がオーケストラ楽器で実現されているのが分かるのではないでしょうか。


Brian Ferneyhough  Bone Alphabet

ブライアン・ファーニホウは「新しい複雑性」といわれるような、非常に複雑な作風で知られるイギリスの作曲家。
弦楽四重奏などの音程楽器が使われた楽曲だと、それまでの現代音楽と「新しい複雑性」と、どう違うか聴き取りは難しいと思われます。パーカッションの曲ならリズムの複雑さだけに耳を向けられるためまだ分かりやすいかと考え、この曲を選びました。わたしは単なる愛好家ですが、音程楽器が使われた曲でも、ファーニホウを聴いた後だと、ブーレーズなどはシンプルに聞こえたりして、ここがこういう風に複雑なんだ!と具体的に説明するのは困難ですが、ファーニホウの複雑さを耳が欲するということはよくあります。二つ目の動画は作曲家自身が演奏の指導をしている動画だと思われますが、拍とかちゃんと認識してんのかよ!と驚きを禁じ得ません。リズムを口ずさんで指導している様子がうかがえますので、単に理論的に構築したものを演奏させてるわけではなく、作曲家自身の頭のなかで音がちゃんと鳴ってるんですね… こわいこわい


Johannes Kreidler Study for Piano, Audio and Video Playback

 今っぽい現代音楽(頭痛が痛いみたいだな)でかっこいい。
現代音楽の担い手も世代交代があり、音のテクスチャーや雰囲気も時代の空気を反映したものが出てくることも想像に難くない。
このアーティストはTwitterでたまたま知った。現在の現代音楽アーティストを知るためには、コンクールに出てる人をチェックするとか、いいなと思ったアーティストのインターネット上の情報を調べて人脈を追っていく、などの方法があるだろうか。noteでこういうことを始めたので、モチベーションが高まった際にはやってみようかな。


Karlheinz Stockhausen Tierkreis

緊張感の高い作品が続き、わたしもなんか疲れてきたので、少しリラックスできる作品を選びました。
Tierkreisとは黄道12宮のことで、双子座 天秤座 蠍座とかのあれです。それぞれの星座をそれぞれ12のメロディで表現しています。もともとはオルゴールのために構想された作品ですが、どんな楽器で弾いてもよいらしいです。ここでの参考動画としてはピアノの録音を選びました。(恐らく繰り返しなどを省いたダイジェスト的な動画だと思われます)
伴奏とメロディという親しみやすい形態ながら、宇宙的で神秘的な薫りが漂い、ほんと堪らないですね。

黛敏郎 素数の比系列による正弦波の音楽

1954年にNHK電子音楽スタジオで作られた日本最初期のテープミュージック。素数 1,3,5 7,11…の比を用いて音程、音量、持続時間が決められている。
つまり和音もドレミファの音程とは違ったものになるし、リズムも4拍子とかの等間隔を基準にしたものとは違うものになる。StockhauaenのStudieというテープミュージックを参考に作成された。
ノコギリ派や矩形波は倍音を多く含むため、ビーっという音になるが、正弦波は倍音を含まないためポーっというような音になる。正弦波を重ねた音は丸みを帯びていて、おそらくはテープをダビングしたりすることによる劣化も合わさり、無機的な考えに基づいて作られたのに、なんと表現豊かに、チャーミングに聴こえることか。

Helmut Lachenmann  Mouvement

ヘルムートラッヘンマンはドイツの作曲家。シュットクハウゼンなどの巨匠以降、もっとも影響力のある作曲家の一人。現代音楽の世界においてどういう影響を及ぼしたのか、歴史的意義があるのか、といったことについてはわたしは勉強不足で語れないのですが、音楽として大変に魅力的なのでCDなどの録音物はよく聴きました。
聴こえてくる音のみから私が思うことを述べると、楽器の本来的使用からかけ離れた特殊奏法によりノイズを奏でているが、やはりもともとの楽器のアコースティックな特性を伴っており、多種多様なノイズが立体的に交錯する豊かな音響空間を出現させている。また楽器を使うことによりノイズから楽音まで漸次的に(グラデーション的)に移行する音響表現が可能で、それらのアンサンブル、またスピーディーな消滅・発生が、刺激的で飽きない音楽を作り出している。
といったところです。あくまで「私の」感想だということはご留意ください。

アンサンブル・アンテルコンタンポランの演奏動画を選びましたが、なんとDX7が使われている!ラッヘンマンの演奏動画でEMS VCS3が使われていた動画も見たことがあり、シンセ好きの心をくすぐります。電子音楽として前面に出ているのではなく、オーケストラ楽器の一つとして他の楽器と並列なところがいいんですよね。


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