1948年2月2日衆院本会議山崎道子代議士「国内治安に関する緊急質問」より寿産院事件の部分抜粋

国会会議録より引用して、SNSに分散投稿したものをまとめました。文中にある番号①〜25は投稿時の通し番号です。14番に優生保護法に言及した発言があります。


①第一回国会におきまして審議決定いたしました児童福祉法の総則におきましては『全て国民は児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるように努めなければならない』
②『全て児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない』ということがはっきりと規定されているのでございます。ところが、現在の児童の生活面におきまして、はたしてこれが活かされておるでございましょうか。

③経済的、社会的事情のもとにおきましては、子を産むことによって母子ともに不幸に陥ることを知りながらも、何ら保護されることもなく産まねばならない悲しい母が数多くあること、生まれた子は保護されるべき国家社会機関皆無の今日におきましては、母子心中をするか、
④あるいは悪とは知りつつも捨子をするか、これもできない弱い母心は、内情を知りつつも、石川夫妻(寿産院経営者)のようなところへ泣きつかねばならなかったことを知らなければならないのでございます。

⑤現在では不幸な事情のもとに生れる子にいたしましても、また両親に愛育さるべき子にいたしましても、およそ生まれ出た子は、全て生きる権利を持って生まれてきたのでございます。
⑥しかるに、赤ちゃんに対しての生活条件は実に最悪の不幸にさらされているのでございます。薪炭不足は入浴を阻み、保健の面におきましてはゼロでございます。生まれてまず第一に必要とするおむつは、やみの浴衣を買って作りますならば、一人前一万円はかかると言われております。
⑦しかも、わずかな綿製品の配給すら入手困難でございます。もし母乳なき子であったなら、それこそ悲惨目を覆うものがあります。配給のミルクでは、とても生命はつなげない。やみで買えば、1ヶ月にニ、三千円はかかるといいます。

⑧一般主食は欠配となれば国民的世論となるが、声なき赤ちゃんの主食は牛乳生産から足りないからやむを得ないという政府のあり方、国民また、我々の叫びに対しまして、大した反響を示してはくれないのでございます。⑨最近の新聞は牛乳、ミルク、ララの乳製品、7ヶ月後の者に与えられる育児食を加えましても、わずか一日二合五勺を確保できるとあった記事を見て、私は実に情けなくなったのであります。一体、一日二合五勺で赤ちゃんが生きられるのでありましょうか。
⑩子を産むことを最大の不幸とさえ嘆く母は、なんと不幸なことでありましょうか。しかも、闇には大切な乳製品あり、街の喫茶店では、ミルクが堂々と販売されている。

11国家は来年度におきまして、全国60ヶ所の産院、30ヶ所の乳児院の計画があると聞きますが、これではたして事足れりといわれましょうか。児童福祉法が泣くことでありましょう。
12寿産院は氷山の一角が波間にただ現れただけでございまして、この氷山はいかに大きなものを波の下にもっているかということを想像しなければなりません。
13声なき者の声を聞く耳を政治は持つべきでありましょう。産院、乳児院、保育所、母子寮、授産所等の社会施設を公衆機関によって一日も早く設置し、愛と涙ある法の運営によって、一刻も早く最も弱き者の救われることに努力が払われるべきでありましょう。
14また、奉天を初め中華民国等の各所にあります保嬰院のごとき捨子施設も考慮すると同時に、一日も早く優生保護法の制定によって、諸種の不幸な実情にある者の産児調節も考えるべきであると存じます。 
15また、生きることの不可能な量より配給のできないミルクを、私はこの際母乳なき子の主食として確保するために、一切他の方面への使用を禁止すべきことを要求いたしたいと存じます。
16なお、所管が農林省にある牛乳その他の乳製品を、この際一切厚生省へ移管し、もって赤ちゃんの万全を期すべきを強調いたしたいと存じますが、この点に対しまして、縄張り的な考えを一掃して、赤ちゃんの幸福のために解決されんことを切望するものであります。
17右施設面を強化拡大すると同時に、母親教育の必要性も忘れてはならないと思うが、現在いかなる方法で教育が行われているのでございましょうか。併せて伺いたいと存じます。

18寿産院事件は、石川夫妻の手に次々と殺された幼き者の霊を悼み同じ運命の子が再びかかる犠牲にならざるよう切に祈る心から、犯罪防止を併せて申し述べたのでございます。
19これが取扱いに当たった警察当局あるいは医師の無責任役所の怠慢も追及したいと存じます。本来産院は子を産ませる機関です。ところが、社会の必要性はいつか子を預かり、かつこれが養育者への斡旋までもやっていたということは、現在の社会生活においてその必要性がかくあらしめたと存ずるものでございます。 
20従いまして、幾多の産院、これが国民の要望にこたえまして、この大きな使命を果たしていたということも考えまして、不正なまたは悪質な産院は、この際取締りを強化いたしますると同時に、
21こうしてよき意味で社会に貢献いたしておりまする産院施設に対しましては、この際これを施設として認めまして、ますますこれを育成していくよう努むべきだと存じまするが、これに対しましてはいかがにお考えでございましょうか。

22この寿参院に関連いたしまして、施設のことを強く私が申し上げますることは、先日の、あの離婚されました妻が、わが子を井戸へ投げこんで、そうして自殺をはかったという、
23実に悲しむべき犯罪をも併せ思いまするとき、ぜひとも弱い母や子のために温かい施設を持ちたい。もし、この母にいたしましても、温かい母子寮の施設が手を広げて待っていてくれましたならば、そこに安心して働く授産所施設がございましたならば、
24決してかわいいわが子を殺すようなことはいたさなかったと思うのでございます。こうして今までは、できたものを検挙するとか、犯罪にいたしましても、そういうあり方に重点がおかれました。これからの日本は、是非とも未然に防ぐ方へ重点をおいていただきたい。
25医療にいたしましても、臨床医学から予防医学へ、犯罪から防犯の方へ重きをおきまして、根本に流れておりまするところの生活不安除去に、政府は根本的な対策をいたさるべきだと私は考えるものでございます。

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