逐次通訳試験を受けて感じたこと

はじめに

昨日サイマルアカデミー(通訳者育成スクール)のレベルチェックテストを受けて感じたことがいくつかあったので、記録として残しておく。レベルチェックテストでは日本語→英語、英語→日本語の逐次通訳をした。

日本語が30秒流れる→その後に英語で吹き込む ×4
英語が30秒流れる→その後に日本語で吹き込む ×4

という試験だった。
※人生で逐次通訳を実践でやったことがないので、ぶっつけ本番です笑

まずは日本語→英語

まず、30秒程度で流れてくる内容をどう処理するかである。僕はタイピング速度に自信があるので、流れてきた情報の90%ぐらいの精度で文字通りタイピングして記録した。

試験のテーマは秘密保持契約があるので明かせないが、流れてくる30秒の内容は以下のような内容である。

気候変動は地球全体の生態系や人類の生活に影響を及ぼす重大な問題です。
単に海面上昇や気温の変動だけでなく、農業の生産性、経済、健康など多岐にわたる要因が絡み合っています。

日本は四季の変化がはっきりしており、気候変動の影響を直接的に感じやすい国です。
長い海岸線と多様な地形が織りなす風景に、季節ごとの変化が加わります。

しかし、気候変動による異常気象が増加する中、それらの風景も変わりつつあります。
農作物の収穫時期の変動や、温暖化による生態系の変動など、私たちの日常にも影響が出始めています。

市場やスーパーでは、気候変動による影響を受けた食材の価格変動や品薄が見受けられることも。
未来の地球環境と私たちの生活を守るため、気候変動問題に真摯に向き合う必要がある。

最初に思ったのは、「な、ながくね!?」ですw

まず、私のメインウェポンである母語の日本語で流れてきたので、一言一句聞き取れるし、文章の意味も理解は当然できる。
しかし、以下を同時に行うのは至難の技であった。
1.  話者のメッセージ(言いたいこと)とその根拠を構造的に捉える
2.  情報を正確に記録する
3.  自然な英語で発話する

僕は、2.に注力しすぎ、1がおろそかになった。でも「いったん記録した文章をそのまま英語に変換して読み上げちゃえ!」と考え、英語でその場で読み上げた。しかし「多様な地形が織りなす風景」みたいな表現は英語で出てこんw。めちゃくちゃ不自然な英語で時に言葉に詰まってしまった。僕の発話だけ聞いていると、「コイツ、英語話せるのか?」と思われるようなたどたどしさだった。

おもっクソショックでしたw

次に英語→日本語

次に、英語→日本語パートである。日本語→英語の反省を生かし、英語で流れてきた内容を直接日本語でメモすればきっと簡単になる!と思い、英語の内容を日本語でメモしました。内容は有名な経済学者と起業家が、哲学者の名前を交えて話をしているような内容でした。

流れてくる英語を日本語でメモしていった結果、

1.  話者のメッセージ(言いたいこと)とその根拠を構造的に捉える
2.  情報を正確に記録する
3.  自然な日本語で発話する

のうち、今度は3はできたんですが、肝心の1と2がおろそかになった。日本語の文章としてはほぼ成立しているけど、内容そのものの正確性が欠けた。全然ダメじゃん俺

痛感したこと

まず、僕は母語である日本語の生産性が圧倒的に英語よりも高いことを痛感した。僕は日本語であらゆる勉強をしてきたし、ビジネスでは弁護士と共に日本語で戦うことさえしてきたわけである。私は日本語であれば、突然ビジネスシーンで言語的に発砲されても、咄嗟に会社を守るために鋭い言葉を並べて発砲し返す戦闘力があるわけである。その場で最適な論理構造と言葉選びをし、生死をかけた戦いをするなら日本語でしかできない。

それに対して、英語はビジネスでも問題なく使えるし、スラングも分かるし、Netflixも字幕なしで見れるし、特に生活で不便することは全く無い。しかし日本語ほど磨かれているかというと、全くそんなことは無い。例えば「現在のロシアとウクライナの戦争について、あなたの考えを論ぜよ」という課題があったときに、日本語だと30秒あれば論理を組み立ててそこそこに人を感心させられる話をできるが、英語だと2分はかかる。

僕が英語で論拠を組み立てる場合は2パターンの方法があって、
パターン1:(時間がある場合)日本語で論理を組み立て、それを英語で説明する
時間があるときはこちらを採用する。例えばロシアとウクライナ戦争であれば、キーワードとして僕は「代理戦争」「ブロック経済」といったキーワードをホイホイ日本語で挙げ、思考を整理する。そしてその後に英語でその主張をする。英語で発話する際に、英単語で鋭くある概念を表現する方法を知らない場合は、少し考える必要がある。例えば、「代理戦争」はそれに相当する英単語を僕は知らないので、"Outsourcing of warfare" みたいな独自の表現を考えて概念にラベルを与える必要がある。そんな感じで時間を要する。

パターン2:(即時性が求められる場合)直接英語で論理を組み立て、英語で発話する
いきなり英語で思考すると、日本語で思考したら出てくるアイデアも出てこないことが多い。主に英語で思考する場合は英語で学習した概念が優先的に出てくるので、論拠としては日本語で考えた場合よりも弱くなるし、中学〜高校レベルの表現になるだろう。それでもまぁ、ビジネスの現場の9割は「ウクライナとロシアの戦争」級の難題が出ることは少ないので問題は無いのだが、残りの1割の場面で日本語と同じ生産性を英語に求めるとかなり辛い。

理想は、英語でも日本語と同等の生産性を獲得すること…とも思ったが、通訳者は新しい概念を自ら生み出す必要はない。発話された内容の意味を正確に捉えて別の言語で表現することが重要なはず。なので同時通訳者になるという意味においては、母語と同等の生産性を第二言語で求めなくても良い気がした。

一方で、最低ラインとして、第二言語でも母語と同水準で物事を理解して脳内で整理する力は必要だろうなと思った。

自分がこれから取り組みたいこと

日本語では、ある文章を読んだときに、著者の主張とその論拠がスムーズに脳内にマッピングされる。そしてクッキリと残る。
英語の場合は、脳内に概念をマッピングした後、日本語ほどクッキリと概念が残らない。感覚的には、「代理戦争」「ブロック経済」という単語は頭の中でハッキリと日本語で残ってくれるんだけど、それを"Outsource of Warfare" "Bloc economy"と英単語で脳内にマッピングすると、単語が長くてうまく脳内にとどまらない感じなんですよねー… 端的に物事を表現できる漢字ってやっぱ偉大だと思う。

英語で論理構造を脳内で整理して定着させるには、テーマごとにひたすらinputとoutputを増やすしか無いのかなと感じています。日本語の本は月に10冊以上は買いますが、英語の本は月に1,2冊程度なので、もっと英語の本を読んで英語に磨きをかけようかなと思いました。

以上!

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