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自分ができること、自分にしかできないこと

前々から思っていることが私にはあります。
この仕事をやり始めた頃に強く感じていたのですが、大衆演劇について解説していたり勉強できる資料のようなものがほとんど無いということです。
大衆演劇に関する書籍といえば、業界では知名度のある「演劇グラフ」などの情報雑誌や橋本正樹氏による著書「あっぱれ!旅役者列伝」などの役者さんへのインタビュー本などがありますが、大衆演劇の裏方さんとしてこれからがんばろう!と思っている人が知りたいようないわゆるマニュアル本が無いのです。

私の場合は、右も左もわからない新人に懇切丁寧に教えてくださる先輩や上司に恵まれ、仕事で関わる役者さんたちからも多くのことを教わりました。
大衆演劇の裏方「棟梁」として10年近くやってこれたのも、まず勉強の仕方から始まる基本から学び、それを応用する思考法など幅広くサポートしてくださった諸先輩方のおかげです。
それだけでなく、自分が現場を仕切るようになりなんとかやってこれたのも、劇場に対する役者さんからの信頼関係と、現場レベルで役者さんから信頼されるに至った先輩の功績を後ろ盾として引き継げた結果だと思います。
本当に感謝しています。

そうして日々の業務をこなしていく中で、他の大衆演劇の小屋の話も耳に入ってきます。
まぁこちらとしてはいろんな話を聞けるのは楽しいんですが、昨今乱立する劇場の数に対して圧倒的に棟梁が足りていないという事に思うところがあるわけです。
各劇場の人員採用に対する考え方も様々でしょうし、単純になり手がいないという事もあるでしょう。

大衆演劇の役者さんたちは、棟梁のいない公演先(温泉施設やホテルなどのステージ)では演者として舞台に立ちつつ、セットの組み換え時には裏方として作業に当たります。
なので極論、棟梁がいなくてもなんとかしてしまうんです。
ですが「いやいや、ちょっと待ってよ」と言いたい。
「劇場」としてやっている場所に一人も舞台の裏方さんがいないというのはどうかと思います。
あまりにも役者さんの負担が大きいし、お客さんに対してもし「せっかく劇場に来たのに・・・」と思わせてしまっては劇場と名乗るのはきついんじゃなかろうかと思ってしまいます。

ただまぁ本題はここからなんです。

「棟梁いますよ、一人」「最近入ったみたい、一人」・・・一人って!
たまに聞く話の中でこういう事を聞くことがあります。
大衆演劇の劇場と一言で言っても規模も大きさも様々、実務レベルで言えば一人でもまわる場合もあるでしょう。
もっと言えば一人しか雇う余力が無い、という場合もあるかもしれません。
ケースバイケースで仕方ない場合も多いと思いますが、もし「棟梁?一人いれば十分でしょう。」と考えておられる小家主さんがおられましたら是非考え直していただきたく思います。
一人はつらい。これにつきます。
毎日日替わりの公演、一人ではその日その日をなんとかこなすのに精一杯で、プラスアルファの仕事まで手が回らないでしょう。それでもやるしか無い状況なら残業を増やすか休みを削るしかなく、さらに言えば一人体制で交代要因がいないならそもそも休みが取りづらくなります。
幸いなことに、私の場合は私の他にプラスして1人〜2人でまわしており、休みも交代で取れる体制を構築していただいています。
今は人手不足で忙しくしていますが。

業界のそんな流れの中で、興味を持って新しく入ってきた新人くんが続けていけるか、続けていく中でどう役者さんと接しナメられないように(語弊のある言い方かもしれませんが)していくか。
そのための基礎知識や心構えなどをきちんと教えてもらえる環境なら問題ないんですが、たぶん十分でない事が多い気がします。
そもそも1人しかいないなら気軽に質問できる相手も、相談できる相手もいません。
多くの役者さんは棟梁に対して色んな事を教えてくださいます。棟梁という立場を尊重してくださるし、まだ経験が浅いなら成長してくれたほうがお互いにプラスですからね。
とはいえ役者さんは激務で忙しく、つきっきりで指導など望めません。
私がそうだったのですが、全くの未経験で業界に入って何に困惑したかといえば「わからないことが何かわからない」って事です。
先輩と役者さんが打ち合わせや雑談の中で舞台の話をしているのを聞いても、何を言っているのか理解できないのです。

「こちらの言いたいことが伝わらない」とぼやく方もいます。それも上記のような状況ならそうなって当然の仕方のないことで、一概に経験の浅い棟梁を悪くは言えないはずです。
やはり仕事として棟梁をやっていく中で、例えば楽しさを知る前に苦い経験を繰り返し去っていく・・・みたいな人がいたなら実にもったいないですよね。
そういう事にならないように、基礎中の基礎知識をしっかり身につけて、「楽しさ」という燃料を手に入れながら成長していける段階まで行くためには、この仕事は自分1人だけで勉強するには資料や文献がすぐに見つけられないため難しいと思うのです。

大変長くなり申し訳ないのですがここからが本題w

私はそこそこ長く大衆演劇の舞台に関わらせてもらってますが、まだまだ未熟で知らないことももっとあるだろうし勉強中の若輩者であることを承知の上で大言を吐きます・・・
これからこの仕事をやっていきたい、始めてみたものの何もわからないし楽しくない。
そういう方のために「大衆演劇裏方の基礎のマニュアル本」みたいなものを作ってみたい。
たかが10年足らずのひよっこが何を言う?と思われるかもしれませんが、偉そうな事を言うつもりは無いのですが、自分が新人時代に欲しかったようなマニュアルがあればこれから頑張ろうって思う方の一助にはなれると思うのです。

どんな構成で、どんな内容で、どのくらいの量で・・・
まっっっっったくの白紙です!!
いつ完成するのかもわからないし、やり始めたはいいが挫折するかもしれない。
でも何か、大衆演劇の未来を裏から支える棟梁にチャレンジしたいと思う人たちへ、自分の知識や経験を伝える事ができれば、私も大衆演劇という業界を存続させるために少しは役に立てるんじゃなかろうか?
そんな野望とも夢とも言えないようなほんわかしたレベルですが、自分にしか出来ないことが何かあるのならもしかしたらこういう事なのかな?と物思いにふけっております。

まぁどうするにしても構成は考えないとなぁ、それもなかなかまとまらないだろうなぁ、頭の片隅にそんな思考のリソースを残しつつ、明日も私は舞台を組みます。
日替わり舞台は待っちゃくれません。

もしして下さるなら涙流して感謝します!