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T社の皆さんへ

僕のよくわからない講演のあとに、感想と質問を寄せてくださってありがとうございます。
寄せられた質問に回答します。

Q1.組織開発ファシリテーターになられた経緯が知りたいです。

A1.ひとことで言いますと、成り行きです。もしくは、137億年前にビッグバンが起きたから、です。(すみません大袈裟でした)
詳細はこちらをご覧いただければと!

Q2.長尾先生はどんな子供時代を過ごされていましたか?小学校~中学校は特に、「団結」や「集団行動」を求められる機会が多いと思います。チーム育成のプロフェッショナルである長尾先生は、やはり当時から集団の礎になるような存在だったんでしょうか?

A2.これは今もですけど、集団行動はとても苦手です。だって、一生懸命やればやるほど「彰、自己中」「配慮が足りないよね」「そんなに怒ったらやる気なくす」「もっとみんなに合わせた方がいいよ」って言われちゃうから。
小学生の頃は、「何かやるぞ」ってなったときに「やるやる!」って元気よく始めて、周りの人たちが自分の思い通りに動かないと癇癪を起こしちゃう子でしたよ。
中学生時代は思春期らしく(今でもそうですけど)斜に構えて自意識過剰でホルモンに突き動かされていました。

小学校3年生の彰少年。40年前。

子供時代に何があったかは、こちらをご覧くださいませ。

Q3.心理的安全性のpartにてハラスメントを受けた際にどうすればいいか?というお話がありましたが、組織から抜ける(転職など)というのが一番解決法かと思っておりましたが、それは逃げることになるのでしょうか?

A3.僕はですね、これらがどうにも苦手なんです。
・毎日同じ時間に同じ場所に行く
・自分が合意していない目標や計画を組織の一員として実行する
・権威、権力を利用した他者から、強制・矯正されること
で、これらから徹底的に逃げ続けてきた結果、今の僕があります。

その上でお伝えさせてもらっているのは「組織を変えるか、組織を変わるかは自分で選べる」ということです。
自分で選べる、がポイント。

心理的安全に端を発する関係性の問題は、解決できるのかどうか、ということも考えてみたいです。

僕は関係性の問題は「解決(solution)」するものではなく「解消(dissolution)」するものではないかと思っています。
ロナルド・ハイフェッツさんという方が、企業で生じる問題は「技術問題(technical ploblems)」と「適応課題(adaptive challenge)」に分けて考えると整理しやすくなるよ、って言ってました。
「技術問題」は、既存の方法で解決できる問題のことで、「適応課題」は、自分自身のものの見方や、周囲との関係性が変わらないとなくならない問題のこと。
会社で起きることって、「適応課題を技術的問題で解決しようとする」だからうまくいかないことが多い、と。
「心理的安全性をつくるために」「エンゲージメントを向上するために」といろんな制度や仕組みが作られていくわけですが、そのおかげでますますうまくいかなくなる。

心理的安全性は関係性の問題だから、お互いがadaptive(状況や関係性に適応できるように)なchallengeをする必要がある。
心理的安全性を阻害されるような振る舞いをされる原因が相手だけじゃなくて自分にもあるかもしれない、という視点を持って、「いっしょに創り出す」ことができるとしたら、チームビルディングが始まる感じがしますね。

僕は自分が苦手なことから逃げ続けてきた結果、自分にとっても他者にとっても心地のいいやり方で「会社を変える」という技術が磨かれてきた感じがします。

Q4.「受け身な人生」と仰っていたことが意外で、印象に残っています。
・ご自身で「これがやりたい、成し遂げたい」という野望を持つケースは無かったのでしょうか。
・「頼まれごとを断らない」というのは、自分の思いに反するような頼まれごとでも例外は無いのでしょうか。

A4.野望を持つケース、ありますけどそれも他力本願なんですよね。こちらを読んでいただきたく。
「自分の思いに反するような頼まれごと」って例えば何がありますかねえ。
その頼まれごとが実現することでハッピーになる人が誰もいない、という頼まれごとは断るでしょうけど、今のところそのような頼まれごとはされないです。

Q5.ファシリテーターという位置付け、面白いですね。
長尾先生のお人柄だとコンサルティングより軽やかに組織の中に溶け込んでいるんだろうなという印象があります。弊社の印象はどうだったか聞いてみたいです。

A5.御社の規模で、あの時間帯に、あれだけの人が集まってきてくれていることそのものが素晴らしいと思いました。御社が置かれているビジネス環境は厳しさを増すばかりだとは思いますが、それでも御社が取り組むそのお仕事は、この世界に言葉が生まれてからというもの、人類の豊かな生活に永続的に貢献し続けるお仕事だと思っております(マジで)。
いわば皆さんはシルクロードを旅するキャラバンです。言葉を届けるために命をかけて砂漠を超える旅路の最中にあるわけです。
あなたは、図書館の自由に関する宣言はご存じですよね?
あなたの会社は、この民主主義の日本の良心を護る最後の砦です。

僕は本が好きです。
突然の出会いをくれる本屋さんが好きです。
静かな場所でこの世にはいない著者たちと文字を通じで会話ができる図書館が好きです。

情熱が伝わるといいんですけど、こう思ってますから「御社の印象」はリスペクトしかありません。尊敬です。大事にしたいです。御社の仕事に僕も加わりたいです。次世代のために、我が娘らのために、この世界の子どもたちのために、「稼ぐ方法」をみんなで編み出したい。
そう思っております!

Q6.スライド5枚目のタックマンモデルに関連した質問です。
実際の業務をしている中では、「自分の意見を持っているが出していない人」と「自分の意見を持たない人」がいるように思います。昨日のセミナーに参加させていただき、自分の担当している業務では、少なくとも「ノーミング」のステージまでは到達したいと考えました。そこでご質問なのですが、「意見を持たない人」が自ら意見を持つようなきっかけを作り出すことは可能でしょうか。また、きっかけを作るためには、個人・チーム単位でどのような工夫が必要でしょうか。

A6.特殊・特別なことではなく一般的な取り組みですが、まずはこれらを整えると良いのではと思います。
①心理的安全性を確保する(方法はこちら
 失敗を恐れずに意見を表明できるような機会を設けます。
②小人数で話し合う
 大人数では発言しづらい人も、少人数なら意見を出しやすくなります。2人組や3人組での話し合いから始めることで、徐々に発言への抵抗感を減らします。
③情報共有を促進する
 事前に十分な情報を提供し、各メンバーが自分の考えを形成するための基礎を作ります。関連資料やデータの共有、事前学習の機会を設けます。
④参加を促進する
 全員の意見を求める機会をつくる、話し合わないと個人目標が達成できないような業務設計をデザインします。「意見を言わないより意見を言った方がうまくいく」という体験を積み重ねる。

Q7.チームビルディングがうまくいかない事例、失敗談などあれば参考までに教えていただきたいです。

A8.長文・大作になっちゃいますけど、「こういうときはうまくいかない」というケースを30個お裾分けします。

1.振り返り(内省・詳察・省察)を手抜きする
→時間がないとか、準備不足とか、いろんな言い訳をして体験や思考を言
語化するプロセスをすっ飛ばしちゃうと、「何かをやった感」は残るが
「何を学んだか(学べたか)」が曖昧なままになってしまいます。

2.介入のタイミングが悪い、干渉する
→間を外したり、指示的に過ぎること=干渉し過ぎること、反対に介入せ
ずに「放置プレイ」で終わってしまったときは、その時間の目標が成し遂
げられないことが多いです。

3.支配的でコントロールしようとする
→「学ばせよう」「気づかせよう」「やらせよう」という思考でのアプ
ローチをした時はたいてい、クライアントは「学ばさせられる」「気付か
される」「やらされる」という受動態のままでその時間を過ごすことにな
ります。

4.うまく進めようとする
→体裁を整える事に心を奪われたり、他者(上司・同僚・部下)からの評価を気にするあまりついつい「うまくやろう」ということに囚われすぎると、大体うまくいかないです。

5.強要する、強制する、矯正する
→他者(上司・同僚・部下)の自由を奪うこと、特に選択肢を与えないことや目標を設定する機会やプロジェクト後の振り返りの機会を奪い、一方的な「指示・命令」に終始したときは、伝える内容に正当性があったとしても伝
わらないことが多いです。

6.相手の視座を理解していない、しようとしない
→他者(上司・同僚・部下)が何を見ているか、どのように見えているか、どこまで見えているかを理解しないまま、自分が見えていることを起点にしたアプローチを取り続けてしまうときは、大抵うまくいかないです。

7.相手の警戒心を解かないまま進める
→「なぜやるのか」という動機づけや「どこまでやるのか」というゴール
設定や「何をしてはいけないのか」という前提の共有(OBゾーンの設定、
と呼んでいます)をしないまま、他者(上司・同僚・部下)の心理的安全性を担保せずに事を始めてしまうときは、大抵うまくいかないです。

8.沈黙に耐えられない
→文字通りです。「何でもいいから話してごらん」「いま言おうとしていたのは◯◯ということでしょ?」などと口にしてしまったときは、大抵うまくいかないです。

9.待てない(せっかちとは違う)
→せっかちなのはいいんです。すぐに答えを出そうとすることや、然るべき過程を重視せずに拙速な結果を求めることそのものは別に構わないです。でも、待てないのはだめです。つまり自分のせっかちさを他者に求めることに無自覚になったときが「待てない」状態。6.にも関連しています。待てない時は、大抵うまくいかないです。

10.フィードバックが「評価」「アドバイス」になる
→「事実の提示」であるべきフィードバックが、いつの間にか自分の主観や感想、挙句の果てには「アドバイス」や「上手にできたね」などという自分だけが持つ正解(基準)に基づいた「評価」にすり替わって伝えてしまう時は、大抵うまくいかないです。

11.主導権をいつの間にか握っている
→「自分で考えてやってごらん」などと言いながら時間がなくなってくると「それではやりか方を教えますので」などと主導権を途中で奪ってしまった時は、大抵うまくいかないです。

12.依存させるのが得意
→「私がいないと始まらない」「私がいれば始まる」「私がいないと続かない」「私がいると続く」という状態になった時は、大抵うまくいかないです。

13.自分に正解がある問いを問う
→アプリオリ(自明なこと)な問い、例えば「1+1=2ですか?」「仕事をする上でと協力することは大切なことですか?」といった類の問を意図なく投げかけてしまうとき、あるいは「自分が知っている正解を相手に答えさせるための問い」を投げ続けてしまう時は、大抵うまくいかないです。

14.過度に外向的、過度に立板に水
→やたら明るく、楽しく、面白がらせる話術で、淀みなく、隙を見せないトークで話す時は、大抵うまくいかないです。

15.混乱、対立、衝突を恐れ、避ける、もやもやを嫌い、すっきりしたがる
→「自分に都合がいいように、思った通りに進められること」に囚われたり、1つの作業やワークフローを「すっきり終わらせること」に囚われたりする時は、大抵うまくいかないです。

16.思考の枠組みがshould
→「〜しなければならない」という外発的・外圧的動機に動かされてしまう時は、大抵うまくいかないです。

17.相手のメッセージを受け取らずに返信・返答する
→言語的なメッセージも、非言語的なメッセージ(表情・態度・姿勢)を十分に受け取らず、話を最後まで聞かなかったりメッセージを受け取らないままで返してしまう時は、大抵うまくいかないです。

18.言葉の意味や使い方に鈍感
→「しっかりする」とか「ちゃんとやる」とか「意識する」とか、言葉の定義や前提を共有しないままに事をすすめる時は、大抵うまくいかないで
す。

19.決められたタイムテーブル通りに進めようとする
→計画やマニュアルに囚われて過ぎて、「予定通り」に進めることばかりに気を遣う時は、大抵うまくいかないです。

20.参加者の思考・態度・行動の変化に鈍感
→個の変化、集団の変化、そして自分自身の変化について「見取り」や「見立て」ができないとき、あるいは観察する余裕がなく起きた変化についての言語化ができない時は、大抵うまくいかないです。

21.「ファシリテーター」を演じすぎている
→どこかの誰かが「ファシリテーター」っぽかったから、その人を真似て「っぽく」やってしまう時は、大抵うまくいかないです。

22.賢者の演出
→「私はわかっている。私は熟達社であり君たちは未熟である。」「私は完成されており、君たちは未完成である。」ということを態度や言動で伝えるのが「賢者の演出」。「先輩だから先輩らしくしなきゃ」「役職者だから役職者らしくしなきゃ」も賢者の演出。賢者の演出が前面化し自らの存在を権威的に振る舞うと、大抵うまくいかないです。

23.作業そのものが目的になっている
→「やること」そのものが目的になる、つまり手段が目的になるときは大抵うまくいかないです。例えば棚卸しをなぜやるのか(why)・どうやってやるのか(how)・何をするのか(what)が共有されていないときも、大抵うまくいかないです。

24.言いたくて教えたくてたまらない
→自分の中の答え、誰かの出した答え、をすぐに伝えたくなっちゃう時は、大抵うまくいかないです。

25.問いが漠然としている
→例として「今のちゃんとしたの?」「反省した?」「どう?」という抽象度の高い問いは、相手にとって漠然とし過ぎて答えられない時があります。そんな問いを連発しちゃうときは、大抵うまくいかないです。

26.負荷が不適切、目標設定が下手
→難しすぎたり簡単すぎたり、強すぎたり弱すぎたり、濃すぎたり薄すぎたりして、できるだろうかと不安になったり簡単すぎてつまらないと思ってしまうような場面を設計・設定をしてしまった時は、大抵うまくいかな
いです。

27.観察してない、観てない、聴いてない
→「次に何しようか」「次に何を問おうか」などと相手を観ず・聴かずの状態のままでいる時は、大抵うまくいかないです。

28.視座・視野・視点の調節が下手(全体と部分を分けたり統合したり、
の感覚が鈍い)
→「相手の見えている範囲」に合わせてどこから見えているか(視座)・どこまで見えているか(視野)・何を見ているか(視点)を理解しないままの時は、大抵うまくいかないです。

29.自分の言葉でまとめちゃう
→「じゃあ最後にまとめると、あなた達が言いたかったことは、これね」ってほわいどボードに書いたり、「今日の仕事はよくできましたね」と自分の主観でまとめちゃったり、「私はこう思うよ」などと言って、役職者の言葉で
状況を結論づけてしまう時は、大抵うまくいかないです。

30.上記に無自覚
→1.~29.を文字通り無自覚に、内省や省察や反省をせず、自覚できないま
まあるいは真似していることも気づかないままで何かする時は、大抵うま
くいかないです。


というわけで長くなりましたがひとまずこんなところで今日はおしまいです。
またお会いできますように!


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