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拝啓、あの頃の私へ

わが子の入学先を、誰にも支持されない中で特別支援学級へ決めようとしているが、これでいいのか非常に悩んでいる、あのときの私へ

こんにちは、未来の私です。今は、わが子が、小学校最後の誕生日を迎えようとする頃です。

まずはあなたに、朗報を伝えましょう。あなたの子は、十分に成長しています。とはいうものの、今のあなたが考えている「成長」とは、違ったものであることは否めません。子を入学させる段階において悩んでいるあなたは、「“みんな”と同じくなれるように、わが子が成長していける」ことを望んでいるでしょう。そして、いつか、普通学級にも入れる子どもになることを願って、そのための前段階として、特別支援学級へ入れようとしています。

でも、あなたのそんな思いは、わが子にとっては無力です。なぜなら、わが子はわが子の人生を生きるのであって、あなたの望む人生を生きるのではないからです。それは、特別支援学級へ入れようと悩むような子だから能力的に親の望みをかなえられない、ということではありません。どんな子も親が望むように生きるとは限らない、という、当たり前だけど、今のあなたが忘れていることなのです。まもなく思い出すでしょうが。

さて、どんな子になったか、お話ししましょう。

毎日の学校の支度や宿題などは、すべてわが子自身に任せています。勉強しなさい、宿題しなさい、なんて叱ることはもうないです。特性的に同一保持性があるので、やり忘れることが非常に少ないということも助けになった部分はあるとは思います。一方でやらなかったときに、私が尻拭いを一切しなかったので、その結果がどうなるのかも含めて、わが子が身をもって知ることができました。
でも、嫌いな宿題が出た時は、誰が言わなくても、何とかそれをやらなくて済む方法を模索していましたよ。一丁前ですよね。なんだか、可愛くないですか?
低学年の頃は、ここまででいいですと自分だけで決めてしまって半分やりのものをもっていく、なんてことも結構ありました。そんなときも、最初こそ私から先生に説明はしたものの、その後、私は仲介をしないようにしました。そのうち、先生からわが子へ注意をじかに受けるようになり、わが子が考えた結果、出された宿題は家へ持ち帰る前に分量を先生と交渉するようになってきました。

一番最近印象的だったのは、家庭科の調理テストの日程や範囲を把握して、調理テストのための練習や復習などを念入りにしていたことです。「テストの日が○日だから、▲日と■日に練習したい、その前の●日に買い物に行きたい」、ここまでの計画を私に話して実行しようとする、そんな成長を遂げました。相談なしに日程を決めて話してくるところや、2回練習したいと考えているのに買い物メモにかかれているのは1回分の分量、なんてところは、人に言わせれば“年齢としては(知能が)足りない“という評価になるのでしょう。しかし、自らの意志で、やりたいことを決め、実現化する方法を考えていく、これが現実に今の我が子ができていることとして、大変素晴らしいと私は思っています。

今のあなたは、親戚の誰にも支持されず、夫にすら「普通学級で何とかなるって!なんでわざわざ、わが子を障害者に仕立て上げるの?」などと、根拠のないお気楽発言だけを投げかけられ理解されず、本当につらいでしょう。
でも、あなたが一生懸命情報収集をし、教育相談にも出向いて相談し、積極的に動いたおかげで、思わぬ助けがまもなく得られます。それは、教育委員会からの「支援学級適」通知です。
あなたには当然だろうとその覚悟もできていることと思いますが、多くの親は希望が潰えたように打ちひしがれる、最終宣告のようなアレです。あなたの夫もその通知に打ちひしがれ、自分の子が置かれている、世間一般からの“視線”や“立ち位置”といったものを理解しはじめ、すでにあなたはわかっていた「気楽に何とかなるだろう、ではないのだ」ということを、やっとやっと、知り始めます。
ですが、どうか、夫とうまくやって乗り切ってください。その後の夫は「教育委員会が言うなら仕方ない」と、拍子抜けするほどあっさり納得するので。
妻のいうことをまともにきいてはくれず、小学校就学の教育相談に一緒に来てと懇願するあなたに知らん顔を決め込んだ、かつての夫の態度は、あれはどうなんだ…と私は今でも若干恨みには思っていますけどね。

そして何より、私があなたに伝えたいのは、感謝です。今の私とわが子が、こんなに幸せな関係でいられるのも、わが子が学校へ楽しく通ってくれているのも、あなたが特別支援学級への入学を決めてくれたから、そして、その上でなお、わが子に適切な視覚支援や手立てをし、本人を仲間外れにしない支援を徹底的にしてくれたからです。

じきにまた、中学へと進学しますが、その頃には私は迷うことはないでしょう。あなたの決断により得られた道のなかで、何より、わが子を信じられるようになったため、わが子の人権を尊重する、わが子自身が信じる生きやすい道を尊重し支援するという当たり前のことに、ためらうことがなくなったからです。

本当に、本当に、ありがとう。

#わが子を特別支援学級へ

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