親しい仲でもあなどってはいけないテキストチャットの議論における「情報の非対称性」と「限定合理性」
こんにちは。
SpecteeでVPoEをしております、おーのAです。
「情報の非対称性」と「限定合理性」について、Slackなどのテキストチャットでの発生しやすい状況に触れたので、こちらについてまとめます。
情報の非対称性や限定合理性については「エンジニアリング組織論への招待
」を参考にさせていただいています。詳細はそちらをご覧ください。
情報非対称性と限定合理性
情報の非対称性による衝突
コミュニケーションの課題の一つに、情報の非対称性があります。情報非対称性は、チームメンバー間で利用可能な情報の量や質に不均衡が存在する状態を指します。この不均衡は、プロジェクトに関する誤解や非効率を引き起こす可能性があります。特に、異なる専門知識を持つチームメンバー間や、現場と経営陣との間で顕著に現れることがあります。
エンジニアリング組織論の招待では、情報の非対称性が存在することは当たり前であるとし、その上で「人は、自分の抱えている状態を他人も把握しているはずだと勘違いして願望に基づいて行動してしまう」としています。さらには「そこに害意や悪意を見出してしまう」とまで記載されています。
情報の非対称性は必ず存在するにも関わらず、衝突するような思考にまで至ってしまう危険性があります。
思考に限定合理性があることを認識する
人間の認知能力には限界があります。限定合理性はある人にとって個人的に合理的であるが、全体にとって必ずしも合理的ではなく、限られた合理性しかないという性質のことです。元を辿ると経済学者のハーバード・サイモンが提唱した経済学の考え方です。
認知能力の限界があるにも関わらず、人はお互いが自分の認識の中での合理的な思考や行動を選択しまいます。
参考まで、限定合理性の考え方は私が受講中のORSC®︎(システムコーチング)の「誰もが正しい、ただし、全体からすると一部だけ正しい」というORSCルールと考え方とも似ていると考えます。
テキストチャットで起こりがちな情報の非対称性と限定合理性
テキストチャットでのコミュニケーションの一例
私がついやりがちなこととして、Slackのテキストチャットで何か意見の食い違いが発生し、特に過去に相手と特に似た話題で議論が起こった時、端的な文章で議論してしまうことがあります。こういったことは良くあることではないでしょうか。
ここで、具体例を上げてみます。
A:hogeの件について、改めて考え直したのですが、取り組むことにしました。
B:hogeについては、以前から話しているように私はあまり良いとは思いません。XXの予算は限りがあります。
A:そのコストについては、hugaのようにできないか考えています。
B:私は反対です。
A:いや、でもxxxxxx
<続く>
※実際の例ではないのでわかりにくかったらごめんなさい
普段から会話しているからこそ情報の非対称性と限定合理性に注意を向ける
具体例では一見ちゃんと議論しているように見えますが、ここには情報の非対称性が存在しています。
Aさんが考え直した背景
Bさんが「以前から話している」から伝わっていると思っている情報
Aさんがhugaのようにできると考えた背景
hogeやhugaのコストへの考え方のお互いのズレ
Bさんが反対している意図
具体例のような、情報量が少なく端的に伝えるようなテキストチャットは特に普段から話している相手と発生しやすいと考えます。
普段から話しているから相手は「自分の意図を理解しているいるはず」とか、「何度か似た話をしているからお互いに合意しているはず」という前提の上でテキストチャットであるにも関わらず、口頭での会話をするようにコミュニケーションを進めがちです。
こういった情報の非対称性を無視して個々人がそれぞれの認識の中で合理的に判断しようと思っても、限定合理性がある中でそれぞれが振る舞うことによりが衝突が生まれます。
日常的に会話している相手との間にも必ず、情報の非対称性と限定合理性が存在しています。親しい仲だからこそ、情報の非対称性と限定合理性があることを忘れてはいけないのです。
テキストチャットで議論が始まった時に気をつけること
情報の非対称性が存在していることを意識する
まずは「情報の非対称性が必ずある」ということを認知することです。
相手からの意見を受け取った時、「またその話か」とか「ぶり返された」とかそういった思考で怒りを覚えるかも知れません。その前に情報の非対称性が存在していることを意識することで感情のコントロールをすることに大いに役立つと考えます。
テキストチャットを継続するなら丁寧に情報の非対称性を解消していく
情報の非対称性が存在していることを意識できたら、その後のコミュニケーションは容易だと思います。「何がそのような判断につながっているのか」など、丁寧に紐解いていく必要があります。
テキストチャットで時間をかけて丁寧に紐解いていくことで、文章として記録も残るし、認識の差を埋める上では有効な手段です。一方でテキストチャットで認識の差を埋めるのデメリットは時間がかかるということです。
結局は口頭での対話をするのが1番早い
結局のところ、口頭での対話に勝るものはないと思います。テキストチャットで丁寧に会話をしようとも、結局のところ非言語コミュニケーションは欠落してしまいますし、時間もかかります。
議論を円滑に行いたいのであれば、結局のところ口頭でコミュニケーションすることが議論を早く終わらせる術だと思います。
ただ、口頭でのコミュニケーションを空中戦で行ってしまうと、結論に至った経緯など、認識のズレがあれば、新しい非対称性を生む要因になるため、議論の記録を残すことや、簡単な議事メモを残しておくことも大切です。
まとめ
今回は私の経験から『テキストチャット議論における「情報の非対称性」と「限定合理性」』について書いてみました。
この観点でまとめてみた理由として、自身のコミュニケーションのクセを知ることの一歩にしていきたいと思ったからです。
特定のコミュニケーションの時に取ってしまいがちな自分の思考や行動をメタ認知することで、より質の高いコミュニケーションを行えるようになれたら良いなと思います。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
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