ウィスキーとワインとジャズとクラシック(2)
以前何かで、
「クラシックが衰退した訳」
に対して
「だってモーツァルトもベートーベンも新曲出さないじゃん」
と言う無敵の回答を出した人がいたそうなんですね。
真面目に笑いました。なんて素晴らしい答えなんだ、と。
多分、この人天才です。
ただですね、実はこのモーツァルトやベートーベンなどの著名な作曲家達のすごい所は、衰退したとは言え、300年経った今でも愛され続けていると言う事なんです。
しかしなぜ、モーツァルト達は300年経った今もなお愛され、そして演奏され続けているのでしょうか。
こんな言い方をしては怒られてしまうかも知れませんが、EXILEが300年後も変わらず愛され、カラオケで歌われ続けているとは思えないんです。
まあ、300年後も変わらずカラオケがあるとも思えませんし、もしかしたらタイムマシーンくらい出来てるかも知れないんですけどね…
とにかく、クラシックと呼ばれる音楽が今もなお愛され続けているのには、大きな理由があるのではないかと考えています。
おれの考える、現代音楽との決定的な違いをここで説明して見たいと思います。
実は、今生きている人達の中に、モーツァルト自身が演奏した音を聞いた事がある人って1人もいないんです。
録音技術が無い時代に作られ、演奏された物を本当に知っている人って実は1人もいないんです。
この「本当に知っている人がいない」と言う所がポイントなのだと考えています。
今演奏されている曲達は楽譜をもとに演奏されています。
この楽譜にはリズムや音程だけでなく「こんな気持ちで」とか「少しだけゆとりを持って」とか「ゆっくり」とか「元気に」とかって言葉も記録されているんですね。
音を残せないので、出来るだけ言葉などに残しておく必要があったんですね。
中には「それどんな気持ちだよ」ってツッコミたくなる様な訳のわからない表記もあるそうです。
例えば「疲れて」「食べ過ぎないで」「謎めいて」「偽善的に」など…
もう何も言えません…
そこで、先日の記事にも書いた「感度」が出てくる訳です。
どのくらいゆっくりなの?元気ってどんな感じ?とか。
実際に本人の演奏を聴いた訳ではないので、「ゆっくりってこのくらい?」を自分なりに解釈して表現する必要があります。
となると、モーツァルトが生まれ育った国は?どんな時代なの?どんな物を食べてどんな暮らしをしていたの?どんな場所で演奏されていたの?どんな人が聴いていたの?モーツァルトってどんな性格だったの?もしのんびりした性格なら「ゆっくり」はとてもゆっくりなのかも知れないな。とか。
時代背景やその人となりを勉強して、感度を磨いて行く…
はっきり言ってキリが無いんです。
マジで終わんないんです。
誰も正解を知らないから。
だからこそいつまでも飽きられないのではないでしょうか。
いつまでも完成する事がないから。
本人が歌った音が残っていると、一応完成した事になってしまいます。
それを正解とする事になってしまいます。
それを超える技術を追い求めたりする事は出来ますが、根本的な部分を変える訳にはいかなくなってしまうんですね…
答えの無い問いかけを追い求める。
はっきり言ってしまえば「変な人」です。
答えが無いどころか、そもそも誰も自分に問いかけて無いですからね(笑)。
勝手に興味を持って、勝手に追求しているだけの「オタク」でしかありません。
本気で誰かに理解してもらおうと思ったらかなり凹むと思います。
マジメに、バカにされる覚悟が必要です(笑)。
そうなんです。
これもやっぱり「理解」するものではなく「感じる」物なんです。
より多くの事を感じたいなら、より多くの事を理解する必要はありますが、最後はやっぱり「感じる」んです。
ジャズはクラシックほど古くはありませんが、やはりまともな音源が残っていない様な時代から愛され続けている音楽です。
しかもジャズは譜面通りに演奏するだけでなく、その瞬間の閃きとアドリブを楽しむ要素が少なくない為、また違った感度が大切になってくるんですね。
さて、第1弾ではウィスキーやワインと同じ様に、ジャズやクラシックも「歴史と算数」で語られる、と終わりました。
「歴史」に関してはすでに触れた通り、作曲家達の生まれ育った時代背景やその人となりを語る訳ですね。
誰に何を伝えたかったのか、どんな気持ちだったのか…妄想…じゃなくて想像力を膨らませて、語り、夢を見るんです。
傍から見たら気持ち悪いやつですけどね(笑)。
でも、要は時代劇を見ている様な物なので、そう気持ち悪い物でも無いんですよ?
真田丸、おれは好きですよ。
キリちゃん、おれは好きですよ。
貰った櫛をあんなに大事にしてくれるなんて…
恋のライバルの梅ちゃんをあんなにも大事に出来るなんて…
やっぱりおれ、気持ち悪いね…
……
……
では、もう一つのキーワードの「算数」とはどう言う事なのでしょうか。
これも足し算だと考えていただければ問題無いと思います。
「和音」という言葉を聞いた事がありますか?
言ってしまえばハモる事です。
複数の音を重ねる事ですね。
例えばピアノには88の鍵盤があります。
そして手の指は全部で10本あります。
と言う事は、88の鍵盤の中から10種類の音を選び、和音を作る事になります。
これが音楽の足し算です。
足して行く数はピアノ一つとっても10。
オーケストラともなるととてつも無い数の足し算になりますが、それでも基本はただの足し算です。
1+1+1+1+1+1+1+……………
シンプルでしょ?
さらに、そこにリズムや強弱などを足して行く事で音楽が成り立っています。
オーケストラの指揮者が尊敬される理由はここなんですね。
ものすごい数の足し算を積み重ねて、壮大なハーモニーを作り上げている指揮者。
イタリア語では「マエストロ」と呼ばれています。
この「マエストロ」は、日本語に直訳すると「巨匠」となります。
巨匠と言う言葉がそのまま指揮者を意味するくらい、ヨーロッパでは尊敬されているんですね。
そして、その足し算を紐解いて行く事により、その指揮者や演奏者がどんな解釈をしたのかを読み取ります。
その解釈が気に入ったのかどうか、共感できるのかどうか、逆にどこの足し算がどう合わなかったのか、それを語っているんです。
「算数」…いかがでしたか?
オーケストラの様な膨大な計算をする物はともかくとして、ピアノ曲などのシンプルな物なら行けそうな気がしませんか?
何度も言いますが、答えなんてありません。
好きか嫌いか、それだけなんです。
ジャズもクラシックも長い歴史の中で、一つの曲を色んな人が演奏しています。
色んな人の色んな解釈を聴き比べてみるのも楽しいですよ?
こうして見ると、ウィスキーもワインも、ジャズもクラシックも同じ事なんですね。
正解の無いテーマを自分なりに解釈する。より好きな物を探し続ける。
歴史や算数を紐解いて、作品に込められた想いに気持ちを寄せる。
それだけなんです。
「ウンチクを語るインテリ」…とは少しイメージが違ってきませんか?
「愛を語るオタク」…なんですね。
それはそれでだいぶウザいですね…
えー…フォローになるかわかりませんが、
とりあえず難しく考える必要は無く、ただ作品に気持ちを寄せてあげれば良いんです。
そして自分なりに感じれば良いんです。
写真は先日納品された香川県産のレタスの箱です。
なんかわかるけど…よくわかんない…
そんな感じで良いんだと思います。
さあ、あの「ウザい」人達に言ってやりましょう。
「フォースと共にあれ」
↑うぜーっ!!!!!
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