4国周遊記②(四万十川 山みず木)

8/9(火)

結局3〜4時間くらいしか眠れず、明るくなると同時に降りはじめた雨の音で起きた。今日のプロテインは高知駅で買ったカツオ。超鰹力とかいう商品名でサラダチキンのようなパッケージで売っている。全く水分の含まれていないザバスよりだいぶ食べやすかった。コンビニに売ってたらこれ買っちゃうな。


四万十川へ向かう道、片道およそ100km。車は何故かナビもETCもない旧型ミライース。石川が運転する助手席でナビ役をやった。宿では眠れなかったけど車では寝られるだろうという甘い考えは有料道路入り口に置いてきた。ウサギに乗ってサバンナを駆けているかのような気分だった。これが食物連鎖最下層。高速なのに片側一車線が多くて不安だ。煽られても嫌だし、かといって時速100km以上出したら吹っ飛びそうだ。ドライブといえばお決まりの稲川淳二の怖い話(Apple Musicにある)をかけるがミライースの発する雑音で何も聞こえてこない。
途中のパーキングでアイスクリンを食べた。なんかこの味安心する。

さて、あと半分くらいだ、石川。事故らずに頑張れ。などと願っていると、だんだん風景が伊豆みたいになってきて伊豆にきた時と同じくらいテンション上がった。トンネルには横浜とか書いてあるし、自分達の思い描いている場所のイメージとちがう。もしや俺たちは既に死んでいるのか?
四万十町に着いた瞬間にスコールに見舞われた。昔、家族で沖縄旅行にいったときにスコールに何度も見舞われるわ父親が仕事の電話ばかりするわで険悪なムードになったことを思い出した。
本当はレンタサイクルを借りたかったが、沈下橋の近くの駐車場まで車で移動することにした。すると、すぐに雨は上がった。

駐車場に車を停めて坂道を下ると、急に視界が開けた。湖のように広い川の向こうに緑色の山と高い空があった。その間に幅の狭いコンクリート造の橋が掛かってる。手すりもなく、そのまま川を覗き込める。よそ見して歩いたら落ちそうだ。


最初はこの橋を車で渡ろうかという話もあったが、石川なら本当に川に真っ逆さまということもあり得るので怖くて断念した。しかし、とりあえず乗り物で渡ってみようという人は結構いるようだ。実際、俺たちが歩いて渡る間にもバイクや車が数台往復していたり、パトカーも通行していた。そのたびに歩行者は川へ弾き落とされるんじゃないかという気持ちでよけることになる。橋の真ん中だけ少し幅員が増えるが、乗り物同士のすれ違いは厳しいだろう。(パトカーもコンパクトカーのマーチだった)

橋を渡ると、河川敷に降りる道があった。俺たちの他に3〜4組くらいカップルや家族連れの客がきていて、川で釣りをしたり、足を入れたりしていた。俺たちも、ここまで来たならさすがに足ぐらいは入れようと靴下を脱ぐ。さっきまで雨雲に覆われていた空は晴れて、暑い日差しが差している。川の水は冷たかった。

気付くと俺たちは肩まで川に浸かっていた。最初は膝までで留めていたがどのようにしてここまで進んだのか。
わからない、思い出せない。夏だから。(5・7・5)



着ていたTシャツも張り付くので二人で上裸になった。ここで前回の記事で出てきたEXPEDのDRYBAGが浮きとして役に立った。抱えているだけでぷかぷか浮かんでいられる。橋の上から見るととても穏やかに流れる川だが、実際に中に入ってみると穏やかながら力強く流れているのがわかる。流れに逆らって泳いでみてもなかなか元の場所には戻れない。油断していると石川からかなり遠くに離れている時もある。胸のあたりの深さからスタートして、橋桁に差し掛かった時には川底に足がつかなくなっていることに気付いた時は相当焦った。こんな穏やかな場所にも一歩間違えば死ぬ危険が潜んでると気づき、自分がいかに無力な存在か改めて実感した。にわかに自然への畏怖や崇拝を身近に感じた時間だった。そしてめちゃくちゃ気持ち良かった。

川で泳いでおいて今更だが、水着は持ってきておらず、俺は普通の短パンがビショビショになり、石川はあたかも水着を履いてるような顔をして普通に下着だった。手持ちの着替えも決して充実していない。車内なら自宅と同じ扱いで全裸が許されるのではないかと考えたが、ガラスはスモークでもないし、普通に考えて軽自動車に全裸の男性が二人並んで乗っている画はきつい。俺たちは四万十のローカルを荒らしに来たわけではない。
着替えていて気付いたが、浮き代わりに使っていたバッグに若干浸水した跡がある。多分振り回した時だ。財布が濡れている、というか札が全部濡れている。カーエアコンの吐き出し口に札を挟んで乾かした。

スーパーで買い出しをし、そこから20分ほどの場所にあるキャンプ場「山みず木」へ向かう。四万十川沿いに下流に走り、カーブの急な細い山道を入ったところだ。受付を済ませて、自分たちのグランピングのサイトまで車で向かう。このような細い道では今まで裏目に出ていたミライースがとてもよく活躍する。

もう日も傾く頃だったので、到着するなり夕食の支度を始めた。ダッチオーブン料理とバーベキューの二本立てだ。人数分以上に買った野菜の下処理を石川に任せてるうちに俺は火おこしをした。近くの木立に紐をくくりつけ四万十川で濡れた衣服を干したが、煙の匂いがつくだけで大して乾かなかった。1時間ほどして料理が完成したが、その間ほとんど動きっぱなしだったのでかなり疲れた。焼くだけの焼肉の味付けの濃さがめちゃくちゃ沁みるし、ダッチオーブンはすごいおしゃれでヘルシーで美味かった。




時間制で貸切風呂もあるらしいが火の管理があるので二人同時には行けず、焚き火をつついたり月を見たりしながら石川が戻るのを待った。夜になると風が涼しくて気持ちよかった。平日だがグランピングサイトはほぼ満員で、結構若い人たちがそれぞれ飯を食べたり酒を飲んで音楽をかけながら楽しそうにしてた。キャンプ場で貸し出ししてるゴルフカートに四人乗りで爆走してる世紀末っぽい連中もいた。西日本の無法地帯って、こんな感じなのか。
貸切の露天風呂は開口が広くて、夜じゃなければ河口と太平洋の広大な景色が楽しめるんだろうなと感じた。茶色い湯だったと思う。大自然の中で温泉独り占めはすごく贅沢だったけど、石川が心配で長居しすぎないよう戻った。

その心配は的中した。残った野菜をオリーブオイルで炒めるようお願いしたのを頑張ってやってくれていたが、明らかに油が多い。焚き火みたいな火力の調整がきかない場所だと危ない気がした。俺がマッキーとビデオ通話してる時に事は起きた。使い終わったスキレットを上げようとした石川が自分の足に油をこぼして火傷した。わざわざ俺の目の前を横切ってのタイミングだったので俺にかかってもおかしくはなかったが、俺は何ともない。とりあえず水をかけて冷やすよう伝え、冷蔵庫を使って冷やしタオルを作ったりした。石川はおとなしくなって、火傷した箇所を気にしながら野菜を食べていた。可哀想だ。マッキーのビデオ通話は相変わらずひろゆきみたいな画角だ。何故?

飯を食べ終わったタイミングで寝ることにした。テントだから周りの音が筒抜けだ。眠れるのか?と不安になったが、疲れてたのか気付いたら眠っていた。



二日目が終わった。

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