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組織のモチベーション(1)「なぜ革新的事業アイデアは採用されないのか?」

<概要>

 企画は実行してこそ意味があり、事業は継続してこそ、成功へと続いていきます。

それに必要なのは、組織を動かし従業員をその気にさせる、すなわちモチベーションの設計です。

 しかしそれは、簡単なことではありません。何故なら組織は様々な個人の集合体でありながら、組織としても一つの気質を持つからです。そしてこの組織の気質が、個人の行動を左右していきます。

 事業開発、事業改革を成功させるために、このような組織、そして個人の行動原理を研究し、組織と個人、両方のモチベーションをデザインする方法を考察したいと思います。

<本文> 

 私は、2011年ごろから、クライアント企業の事業領域の課題解決に取り組んでいます。

 自社事業に行き詰まりを感じている企業の役員から声がかかり、その企業にイノベーションを起こすような革新的事業アイデアを、直接役員にプレゼンする機会をもらいました。それらの事業アイデアに対する役員の反応は極めて良好で、現場の責任者が指名され、実行プランを詰めるようにとの指示が下されました。

 しかし、ここから問題が発生します。現場責任者は、社内の手続き、承認が必要だからと言って、なかなかプロジェクトを前に進めてくれません。もちろん、組織体制にも少なからず影響があるような革新的提案であった為、社内のネゴシエイションが必要であることは理解できたのですが、トップがやってみようと言っていることが、いつまでも足止めされていることに違和感を感じました。そして、いつのまにか革新的事業を推進するプロジェクトは理由も知らされず消滅してしまうのでした。

 こうしたことが、大手企業2社で、立て続けに経験させられた為、岸と徹底的に原因分析を行なったものです。日本の大企業では、トップが意思決定した改革案に対し、現場が思うように動かずに、足を引っ張り、潰してしまうことがあります。

 なぜそんなことが起こるのでしょうか?

 現場が実質的な決定権を持つことは、ある意味、民主的ではありますが、その反面、独裁的なトップのいる企業でないと、革新的な事業は起こらないようにも見受けられます。

 また、2016年になって、組織の意思と従業員の意識とのギャップから生じる、深刻な労務問題が取りざたされるようになりました。事業改革が従業員の労働環境に変化を及ぼす場合、従業員に対し、“いいから従え”という無理強いは通用しなくなっています。

 そこで、企業に事業領域の革新的事業アイデアを提案し、それを実現してもらうためには、組織の行動原理を徹底的に研究する必要があると感じ、組織論の文献を読み漁ることにしました。そして、これらの現象は、ほとんど全て、“組織と個人のモチベーション・デザイン”で説明がつくという結論に至りました。

 これから、それをご紹介したいと思うのですが、組織論の中でも、特に堺屋太一著「組織の盛衰」という20年以上前に書かれた本を参考にしています。(これから紹介する組織論は、この本で書かれていたことを、現在の事象に当てはめて検証したものと言っても過言ではありません。)

 あくまで私論ですが、「組織の盛衰」は、現代生じている課題を言い当てた預言書のような本だと思います。この本の優れているのは、組織論を生物学的に研究していることです。生物が利己的な遺伝子の集合体であるように、組織は利己的な個人の集合体です。そして、利己的な遺伝子から形成された生物が全体で一つ意思を持つように、多様な個人から形成された組織も全体での意思を持ち、さらには一つの人格のようなものまで生じるようになります。これによって、組織のモチベーションというものが生じるのです。次回は、このあたりから説明します。



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