マーケティングとあえて距離をおいてみるブランディング
神戸の地で「株式会社AKIND」というブランドマネジメントに特化した会社を経営している岩野翼です。
本記事から3回に分けながら、私なりの「ブランディングの新解釈」について、書いてみたいと思います。
ぜひ、お付き合いいただければ幸いです。
ブランディングの新解釈
英国で研究したブランディングの新たな可能性
世の中の記事で語られている一般的なブランディングに対する解釈は、広義の意味でのマーケティングの一部として位置付けられていますが、私が考えるブランディングは、マーケティングとあえて距離を置くことを意識しています。
ブランディングについて論じる前に、少しばかり、私が「ブランディングの新たな可能性」に関心を持った経緯を話してみたいと思います。私のブランディング経歴は、2016年に英国のBrunel Universityのブランディング&デザイン戦略修士課程にて「Brand Spirituality」というテーマの論文を書くことから始まります。当時は、今のようにSDGsやESG投資などのサスティナビリティというテーマがまだ一般的ではありませんでしたが、英国では「Ethical Consumer」という名前の雑誌が出ていたり、フェアトレードのブランドが誕生していたりなど、商業一辺倒とは違うトレンドが登場してきていました。
商業的なブランド理論とは何か違う「パタゴニアの経営哲学」
ブランディング研究のため、様々な書籍を読み漁っている中、新たに注目を集め出していたエシカルなブランドのあり方が、どうしてもナイキやコカコーラーなどを代表とするような商業的なブランド理論と合致しないことに関心を持ちました。そんな中、パタゴニアの創業者であるYvon Chouinardの「Let My People Go Surfing(和訳:社員をサーフィンに行かせようーパタゴニア創業者の経営論)」と言う書籍がその年に出版されました。その本で語られたパタゴニアの経営哲学と一貫した組織文化へのこだわりを知り、私の中で衝撃が走りました。
この本から、パタゴニアのブランドを支えているのは、お客様以上にアウトドアを心から楽しんでいる従業員の生き様であり、その働き方を支える組織文化にあることを学びました。前述の私の修士論文では、パタゴニアのような環境や社会に対して意識の高いエシカルなブランドを対象に、「ブランディングの新たな可能性」について研究を行いました。ここでは、論文の中身には触れませんが、ブランディング理論に対して、宗教学や社会学の考え方を軽く触れながら、「資本市場を超えた存在(Brand Transcendence)」や「お客様も従業員も共鳴できる信念や世界観(Shared Belief & Vision)」の重要性を論じました。
NPO法人など非営利領域でのブランディング
卒業後は、東京のブランドコンサル会社に勤めながら、副業でPhronesis Inc.と言うチームを設立し、修士論文で研究した私なりのブランディング手法をベースにしながら、NPO法人を中心に非営利領域でのブランディング・プロジェクトに挑戦していました。これらの非営利系ブランドは、いわゆる市場や競合というものがあまり大きく影響しないため、いわゆるベンチマークや差別化要因というアプローチよりも、「社会にどんな貢献をしようとしているのか」、「自分たちが大切にしている価値観は何か」ということを明確化し、伝わるようにすることが重要でした。そんな経験を重ねながら、資本市場の中だけで考えるのではなく、社会における存在意義やステークホルダーの個人的な思いを起点としたブランディングのアプローチを私なりに構築してきました。
おわりに
初回の記事では、個人的な振り返りを中心に書きました。ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。
次回は、もう少し具体的に「ブランディングの新解釈」について、まとめていきたいと思いますので、引き続きお付き合いいただけると嬉しいです。