見出し画像

遙かなる時空の中で7 佐々木大和攻略感想

※個人の感想です
※ネタバレあり

 攻略四人目は佐々木大和、ヒロイン七緒の同級生であり、小学生からの幼なじみでもある。
 対になる朱雀の片割れが「宮本武蔵」であることから、大和は「佐々木小次郎」のポジションなのだとわかる。
 歴代地の朱雀の特徴を踏襲して、髪も肌も色素が薄い。母が外国人とのハーフ、つまり大和はクォーターである。

 遙かシリーズには各タイトルに、ヒロインと同じ世界(遙か7の場合は令和の日本)出身の八葉が出てくる。私は遙か5だけ未プレイだが、プレイ済みのタイトルには全てそういう八葉が登場した。そのポジションには、ヒロインが召喚される時に巻き込まれる形で異世界に来てしまうパターンと、「実はヒロインと同じ世界出身」と後に明かされるパターンの2種類がある。
大和(と五月)は、前者。つまりヒロインと共に現代から異世界へとやって来たパターンである。ヒロインは基本的に向こうの事情がわからないまま異世界に行くことになるから、大和や五月のようなポジションの八葉は、ヒロインと共にその状況に困惑してくれる心強い仲間といえる(逆に言うとそのポジションの八葉がいない遙か2、遙か6のヒロインはきつそうだった)。
 ただ、今回のヒロイン七緒は、理由もわからず唐突に異世界に飛ばされたのではなく、諸々の事情を最初から知ったうえで自分から異世界に向かう。兄の五月という護衛役兼解説役も伴っており、これまでの神子たちよりも格段に心構えや覚悟を持って異世界に行ったのだ。それは、幼い頃から事情を知らされていた兄の五月も同じである。
 つまりこのゲームでは大和だけが「星の一族も龍神も何もかもわからんまま異世界に行った人」なのだ。ヒロイン七緒よりも、むしろ大和の方が歴代神子たちの状況に近いといえるだろう。

 大和は生まれつき霊感が強く、幼い頃から霊障や霊視に悩まされてきた。現代日本で「見えないものが視える」と主張するのは厳しい。五月も同じように霊能力が強いが、彼は星の一族の家系であり両親も自分と同じだ。この家系なら霊感の強さはむしろ歓迎されるところだろうし、霊障などのトラブルへの対処も両親から学べただろう。だが、大和は一般家庭の子どもである。霊障に悩んでも、霊の存在を訴えても誰も理解してくれない。大和は「おかしなことを言う薄気味悪い子ども」として学校ではいじめを受け、父親には遠ざけられる。クォーターというマイノリティであり、両親が離婚している父子家庭育ち、しかも転校生の大和には、ただでさえ孤立する条件が揃っていたのだ。
 学校にも家庭にも居場所がなかった大和だが、小学生の時に天野兄妹と出会うことになる。自分と同じ霊感持ちの五月と、その五月や両親をそばで見てきた七緒なので、大和の霊感も全く気味悪がらなかった。大和が天野家に出入りするようになるのは当然の流れだっただろう。

 さて、なし崩しとしか言いようがない状態で異世界に行き八葉になった大和だが、異世界の状況や生活に驚きつつも徐々に慣れていく。大和にとって、この異世界は意外にも悪くない場所だったからだ。
 前述のように大和は幼い頃から霊視霊障と、その辛さを誰にもわかってもらえないという苦しみを背負って生きててきた。それが孤立といじめと家庭内不和の遠因だったのだが、異世界では誰にでも怨霊が見える。怨霊自体がわりと当たり前にうろついているので、大和の「自分は他の人と違う」という悩みはほぼ消える。彼がここで生きやすく感じるのは当たり前である。
 そして大和は、これまで自分が持っていなかったもの、持つことを避けてきたものをこの世界で少しずつ見つけていくことになる。

 大和は熱血もスポ根も苦手で、特殊な趣味も特技もなく、霊感を除けば、ゲームや音楽が好きな今どき高校生という感じがする。めんどくさがりで常にダルそうなところも、そのへんにいそうな高校生そのものだ。何事にも熱中しないタイプだが、かといって宗矩のようにクールというわけでもない。
 そんな大和だが、彼には自分でも全く気づかなかった天賦の才があったのだ。
それが「剣」である。
 なにしろこれまで剣など持ったことがないにも関わらず、幼い頃から剣の稽古に勤しんできた武蔵をあっさりと負かしたのだ。
 理屈はよくわからないが、大和には剣術のセンスがあったのだと思う。対峙したときに相手の微妙な心の動きや身体の動きを感じ取る能力が高く、相手の隙をつく判断力に秀でているのではないだろうか。そういう感覚は、きっと反復練習だけでは補えない部分、つまり「天才」なのだ。実際、剣道の指導者が「すごくセンスのある剣士は、こちらが「え?」というタイミングで有効打突をとってくる」と言っていた(テレビで)。
 大和はそういう感覚が生まれつき鋭く、剣をやる上で的確な足の踏み込みや綺麗な型の素振りがすぐにできるのかもしれない。
 何事も上達していくときが一番楽しい。現代日本で真剣を振り回したら犯罪だが、この世界では才のある剣士は尊ばれる。強くなれば八葉としての役目にも好影響で、悪いことなど何もない。いつも通り「やれやれ」という態度で稽古を始めた大和だが、次第に剣に熱中していく。天与の才能を加えて、やればやるほど上達が目に見えてわかり、さらには一緒に練習する仲間もいる。何より、剣を振るうのがシンプルに楽しいのだ。これでハマらないわけがない。
 しかし、剣の腕が上達していく中で大和は、剣があれば自分を排除しようとする者を黙らせられる、認めさせられる!というような事を言い出すのだ。陰口を言うやつ、無視するやつ、罵倒するやつ、そういう人間を「黙らせたい」、「自分を認めさせたい」という気持ちが大和の剣を曇らせる。
 しかし闇堕ちしそうな大和が踏みとどまれたのは、仲間と七緒のおかげである。
 理解者がいなかった幼い頃と違って、大和にはもう自分を大事に思ってくれる仲間がそばにいる。仲間にはすでに認められている。なのに、「認めさせたい」とは何事か。誰に認められたいのだ、と七緒に詰め寄られる大和。
 大和は人に背を向けられることで何度も傷ついてきた。だが、かといってその痛みに慣れることはない。だから、ここで得た仲間にも背を向けられる事になったら…とか、親しくなった人たちが離れていってしまったら…とか、まだ起きてもいない事を考えてしまう。後で傷つくくらいならいっそこっちから離れよう、そっちを見ないようにしようと思うのが大和なのだ。七緒が言うようにそれは「怯え」であり、これまでさんざん傷ついてきたがゆえの防衛本能だろう。
 だが、仲間に背を向けると、自分からは仲間が見えなくなってしまう。大和のことを大事に思う仲間の姿が。
 それはもったいないよ!と言いつつ、ジャイアンの母ちゃんみたいに大和の頬をギリギリつねるという七緒の荒療治により、大和はきちんと仲間と向き合うことになるのだ。
 七緒にビシッと怒られて目が覚めた大和は『仲間』の元に戻る。今後、もしこの世の誰もが自分を忌避するような事態になったとしても、七緒だけはそばにいてくれる。大和はこの時そう思ったのだろう。
 ここから大和は七緒にはっきりと惹かれ始めたのだなとわかる。
 なぜならこのあと、七緒が阿国と顔をくっつけてイヤホンで音楽を聞くイベントが起きるのだが、大和がここで初めて嫉妬らしきものを見せるからだ。それに気づいた七緒も「ん?」と少しそれを意識する。また大和は七緒のことを「可愛い」とさらりと褒めたりもするのだ。
 共通ルートのラストは、これまで恋が絡まなかった幼馴染二人の関係に変化が訪れたところで終わる。

 大和ルートのラスボスは宗矩ルートと同じく、鬼のターラである。怨霊を使う動機も宗矩ルートと同じで「自分たち鬼を迫害する人間への復讐」。ただし、大和ルートでは彼女がなぜそこまで人間に憎悪を向けるのかが詳しく描かれていない(そこがストーリーの柱ではないので)。だから、宗矩ルートよりも先にこのルートやった人は、ターラがかなり浅薄な動機で呪詛をしているように感じられるのではないだろうか。宗矩ルート未プレイの神子様方には、ぜひとも宗矩ルートのターラに出会ってほしいところだ。
 ともあれ七緒たちは一度ターラを退けるのだが、それでターラが消滅したわけではなく、傷を癒やしつつ虎視眈々と力を蓄えている。人間全体に復讐するというざっくりした動機がターラを動かしているので、力はいくらあっても足りないのだ。七緒を狙うのも、存在が邪魔だと言うよりはその力がほしいからだ。
 そんな中、龍穴が開いているうちにと、七緒たちは一旦自宅に戻ることに。その際、大和もまた自宅に帰るのだが、そこで待っていたのが父親。大和はかねてから折り合いの悪かった父から、アパートを探してやるから家から出ていけ、というようなことを言われる。しかも父親はもうすでに再婚の算段をしていて、そのためには大和が邪魔なのである。
 大和が受けたショックはいかばかりか。
なにしろ、これだけ明確に「親に捨てられた」のだ。大和だって「いずれ家を出る」とは思っていただろうが、いくらなんでも高校在学中に「もうここに来るな」と言われるとはさすがに思っていなかったはずだ。気の合わない父親であり好かれているとは思っていなかったが、そこまでとは……という驚きがあったと思う。
 呆然とするほどのショック。そしてその後に襲いかかるのが、怒りや悔しさや哀しさ、憎しみといった負の感情である。悪いことに、異世界ではそんな負の感情が瘴気となって怨霊の糧になるのだ。
 元々大和は、幼い頃から自分が「異分子」という意識を常に持っており、心に傷を抱えて生きてきた。つまり、積もり積もった負の感情を常に身のうちに抱えている状態なのだ。
 共通ルートでも大和がもつ瘴気の暴走があったが、それでも、その負の感情は七緒や他の仲間のおかげで抑えられていた。しかし、今回の父親の件でそれが決壊。大和は前後不覚のまま自分から湧き出る瘴気に操られ、仲間に刃を向ける。
 もちろん大和には操られている自覚がなかったのだが、いつ何時そういう状態になるかわからない。大和自身にもそれは制御不能だし、さらに彼には剣才があるため、操られるままに剣を振り回させたらえらいことになってしまう。危ないし、なにより操られて仲間に剣を向けたら傷つくのは大和自身だ。ということで、大和は刀をひとまず持たないよう言われる。
 大和がこの異世界に来て得たものは大きく分けると、『仲間』『居場所』『剣』の3つだと思う。しかし、ここで大和は一時的にとはいえそのうちの一つ『剣』を奪われることになったのだ。さらに、自分がいなくても、八葉がなんとか怨霊に対抗できていることを知り、「俺なんていてもいなくてもいーじゃん」と、大和の中の『居場所』が揺らぐ。
 そしてそのモヤモヤした感情は容易に瘴気に変わるので、完全な悪循環なのだ。そんな大和を見逃さなかったのがターラ。基本的にいつも人材不足のターラなので、八葉内部に大和のような瘴気発動タイプがいるのは実に都合がいい。
 大和はターラの罠とは知らず大量の怨霊と対峙するために、洞窟で見つけたワケありの刀を手にしてしまう。その刀は大和を待っていたかのようにしっくりと手に馴染み、振るっても瘴気を撒き散らしたりしない。もう負の感情に支配されてみんなを傷つけずにすむ。それを他の八葉にも認められ、大和は再び剣を握れるようになる。
 再び刀を持って仲間とともに戦えることが、大和には嬉しくてたまらなかっただろう。しかし、大和が手にした刀は実は妖刀。振るうたびに周りにいる人の生気を食ってしまうのだ。しかも刀の持ち主だけは影響を受けない。そうとは知らない大和は「めちゃくちゃ調子がいい!」と刀を振り怨霊と戦う。
 それを繰り返すうちに、いっしょにいる仲間たちは次々に倒れてしまい、大和は自分のせいで仲間が倒れたのだということをターラに知らされる。ターラとしてはこの件で大和が八葉から離脱するか、剣を振るえなくなってくれたら万々歳である。
 人に恐れられ封印された刀が、同じように周囲に気味悪がられてきた大和に共鳴したのかどうかはわからないが、とにかく大和はこの妖刀にめちゃくちゃ気に入られてしまったのだ。しかもさすがは妖刀であり、棄てても勝手に大和のところに戻って来る。
 どうやっても物理的にこの剣を捨てることは出来ない。だが、このままこれを持っていたら仲間が傷つく。悩んだ大和が選んだ道は、自分から仲間の元を去ることだった。大和が異世界に来て得たもの『剣』『仲間』『居場所』のうち、今回は『仲間』と『居場所』を奪われたことになる。
 仲間のためにと姿を消した大和だが、それでも七緒は諦めずに大和を探し出す。自ら離れたとはいえ、七緒が探しに来てくれて、大和はどれほど嬉しかっただろう。
 ちなみにここで、七緒が大和探しをすることを五月がさりげなく後押しするのだが、なんていいヤツなんだと思う。自身のルートでは「おっと……?」というような態度が目についた五月だが、今回は七緒に対する距離感と見守り方がちょうどよい。お前はどうしてそれを自ルートでもやらんかったんや!と思わなくもない。

 それはそうと大和だ。七緒の側で戦い、彼女を守りたいと思うのに、刀を振るうと七緒を苦しめてしまう。一緒にいたいのにそばにいたら傷つけてしまうというジレンマを抱えるが、七緒をはじめとして仲間たちが常に気にかけてくれている状態が大和を救う。
 精神的に強くなった大和は、今まで「どーでもいーし」「別に気にしてねーし」と、目を背けてきた自分の弱さに真正面から向き合い、刀の呪いを解くことに成功する。この妖刀、やはり大和のことをナカーマだと思って懐いていたようなのだが、悪いヤツではなく、これからも大和の刀として共にあることに。
 『佐々木小次郎』の愛刀といえば、『物干し竿』と呼ばれる長い刀なので、そこを取り入れたのだろう。
 刀の呪いを解いた大和は、このあと龍脈を辿って、自分を捨てようとしている父親に会いに行くのだが、そのイベントがすごく良かった。そこに七緒が一緒にいるのもこれまでのストーリー上、自然な流れだ。
 大和は父親に、自分がこれからどこに行くのか、そこでどうしたいのかを話に行くのだ。異世界残留エンドを親に説明しに行ったキャラはシリーズ初ではないだろうか。
 遙かシリーズは7作も出ているが、「これから自分は異世界で生きていきます。探さないでください」と、きちんと親に断りを入れてから異世界で暮らし始めた奴は意外といないのだ。神子を含めて異世界残留エンドを迎えたこちら出身の誰も彼もが、現世の家族に何も告げないままだ。
 もし私がこの子らの親だとしたら、いきなりいなくなった高校生の息子や娘を毎日探すし、なんならビラを配る。
 せめて龍神が家族にうまいこと言って丸く収めたり、神子が両親に事情を告げに行く時間をもらう、みたいな描写がほしいと思うのだが、ゲーム内には描かれていない。それを入れると変にリアルになるからかもしれないし、龍神や娘や息子にそれを説明されたところで「異世界に行くから二度と会えない?よっしゃ、わかった!いってらっしゃーい!」と納得する親御さんはいないからかもしれない。
 しかし大和は違った。たとえ妄想だと思われようともきちんと経緯を説明し、これからの話をする。大和なりのけじめであり、この世界との決別の瞬間である。
 ここで父親が「ライバルに『宮本武蔵』がいるならお前は『佐々木小次郎』だな」みたいなことを言うのだが、その後異世界に戻った大和は自ら『佐々木小次郎』と名乗るのだ。以前の大和なら、父親発案の名前など死んでも名乗らなかったと思う。しかし、その名をすんなり名乗ったことで、彼が本当に父親の件は納得してさっぱりとしたんだなとわかる。

 八葉の仲間たちも大和を待っていてくれて、打倒ターラに一丸となり、大和と仲間との雰囲気はこれ以上ないほど良くなるのだが、七緒との恋はといえばなかなか進まない。
 お互いに大好きで、この時点で二人はそんな感じのこともぼんやりとは伝え合っているのだが、はっきりと「好きだ!」「私も!」という雰囲気にはならない。大和は何度も告白しようと意を決しているのだが、そのたびに「ウッッ、無理無理無理照れる」という感じで、告白しかけて途中でやめるのだ。それが悪いのではない。逆だ。すごく良かった。
 この二人は幼馴染なので、お互いの距離が元々近い。だが、好きは好きでもゲーム開始当初は全然恋していない。だから幼馴染としての「好き」が恋心による「好き」に変わった時に妙な照れが入るのだろう。
 何度も気持ちを伝えかけて、それなのにはっきり告白に至るのはラストだ。それが幼馴染らしくてとても良かった。

 その後、ターラとの決戦に臨むのだが、大和の存在はこの世界の勢力争いに食い込んでいないので、西軍東軍ではなく遊軍として、戦場で大暴れしそうなターラと怨霊を止める、というような流れである。
 プレイヤーとしてこれまでの苦労を見ていただけに、ここでの大和の「佐々木小次郎」としての名乗りには胸が熱くなった。 
 大和は例の刀でターラを倒す。
 ただ、ターラを倒してハッピーエンド!とはなかなかならない。というのも、この世界の異分子ターラと、あっちの世界の異分子大和、重なる部分が多いだけに、正直「これでターラだけが孤独なままで大和ばっかり幸せいっぱいになったら、なんか寝覚めが悪いな……」と思ってしまうからだ。特に、宗矩ルートを先にクリアしてターラの事情を知ってしまったプレイヤーの中には、私と同じように彼女を心配した人も多いのではないだろうか。
 しかし心配ご無用。
 ここで登場するのが、カピタンである(な、なんで!?)。
 ターラとの利害の一致により手を組んでいたのは知っていたが、途中で出てこなくなり、決戦でも最期まで現れなかった男だ。
 私がこれまでクリアしたルートのラスボスは平島とターラだけなので、マジでお前何なんだよカピタンという気持ちでいっぱいである。日本侵略やら悪魔の指輪とやらも「は、初耳だが?」という感じで、つまりカピタンとやらは「なんかよくわからんが悪いことをしようとしていた奴」という程度の認識だ。
 このカピタンがなんとターラに愛を告白。
 まんざらでもなさそうなターラ。
 そして唖然とする一堂(とゲーム画面前の私)。
 カピタンは自分と似た境遇で孤独、かつ誇り高いターラに惹かれて、以前から求愛していたらしい。
 なるほど。
 いや、全然なるほどではないが、なるほど。
 我々はいま何を見せられているのかとは思ったが、ま、まあターラが幸せならそれでいいか…という気持ちになった。

 こうしてターラとカピタンは去り(なんだったんだ一体)、ラストはこの世界に残ると決めた大和が七緒に想いを伝える。
 ここで七緒に「好きだからそばにいてくれ!」とか言わないあたりが大和らしくて実に良い。自分はこちらに残るが、七緒が向こうに戻ったとしても自分の居場所は七緒、いつでも想う大事な場所であることは変わらないと告げる。
 ここで七緒も大和と一緒に異世界に残る選択をするのだが、「離れていても七緒が大和の居場所」という確たるものがあるだけに、その後大和がちょいちょい剣術修行に出かけていっても大丈夫なんだろうな、遠恋が不安になったらなったで、また七緒が会いに行くんだろうなと思えた。
 それまで大和の求める『居場所』について、ストーリーを丁寧に丁寧に積み重ねたおかげで、エンディングの大和が言う「ただいま」が一層輝くのである。

 良かった。
 大和は現代人で、しかも三鶴のいる五月と違ってこちらの世界との関わりがない。だから、どうしてもストーリー上「戦国末期が舞台ならではのダイナミズムあふれる展開」という部分では一段落ちてしまうのだが、それを差し引いても面白かった。
 特に、大和と七緒の距離感がいい。
 ネオロマに限らず、乙女ゲーにおける『ヒロインと幼馴染で同級生』の男は、とにかくヒロインとの距離が近い。近すぎる。幼馴染だからといって、付き合ってもいない女に構いすぎる奴が多いのだ。もしリアル世界にそんな幼馴染がいたら普通は気持ち悪い。それが許されるのは二次元だからだ。
 だが、大和と七緒の場合、高校の同級生で幼馴染でもある異性(恋仲ではないがよく話す)が実際にいたらこんな感じなんだろうなと思える範疇で収まっている。
 大和と七緒の恋は「恋仲でもないのにやたらと近いし構ってくる」状態から始まるのではない。「仲はいいけど、頭ぽんぽんとかされたらキモッと思う」みたいな状態からスタートする。
 だからこそ、初期状態の「好き」と、恋愛感情を抱いてからの「好き」との違いがはっきりわかるし、大和が「やっぱ何でもない」となかなか告白出来ないシーンに納得できるのだ。なんとなく照れくさいのだろうな、と説得力があったし微笑ましいと思った。
 大和は、これまで私がやってきた乙女ゲーの「同級生かつずっといっしょに成長した幼馴染」キャラの中で一番好きかもしれない。それくらい、大和と七緒の距離感が自然だったと思う。

 あと全然関係ないけど、このルートのカピタン、あいつはマジで一体なんだったんだ。
 オオ、プリンセーザ!(声に出して読みたいポルトガル語)
 ほ、ほんとに他の人のルートをやったらちゃんとわかるんだろうか。
 次は黒田長政に行こうかと思う。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?