金色のコルダAS神南 芹沢睦攻略感想

※個人の感想ですよ。

ASは、コルダ3のヒロイン小日向が「もし」星奏学院ではなく神南、至誠館、天音に転入していたら…というifストーリーになっている。
物語の正史たるコルダ3では、幼い頃に煌めくほど持っていた才能を開花しきれずにいた小日向が、冥加からの手紙(匿名)によって一念発起し星奏に転入する。しかしAS神南では、小日向を奮起させるキーパーソンは律になっており、冥加は介在しない。正史では共に優勝に向けてアンサンブルを組んでいたハルや大地だが、ここでは完全に初対面でライバルとなる。代わりに、小日向は神南メンバーと夏大会に臨むわけだ。
以前から小日向は、律と夏大会ファイナルのステージで会おうと約束していたのだが、今の実力では無理。それを先生に指摘され、先生の薦めにより神南に転入してレベルアップを図ることに決める。
時は高2の夏。長野から神戸に単身転入するにはあんまりな時期である。先生にはもうちょい早く神南を勧めて欲しかったし、どうせなら小日向も高1の春から神南生になりたかっただろう。
それはともかく、セレブ校である神南に「我こそは牧野つくし!」みたいな状態で乗り込んだ小日向。ここから物語が始まる。

ところで私がプレイ済みのコルダ3関連のゲームは、コルダ3(プレステ2版)、コルダ4、オクターヴである。
というわけで、折角の初AS、これまでに攻略したことのないキャラから行こうと思い、芹沢を重点的に追いかけることにした。
芹沢は小日向と同じ2年生だが、相手の年齢に関係なく丁寧語を使う。ビジュアルは中肉中背の、派手ではないがキレイ系。他キャラと比べて特別長いわけじゃないのに、黒髪直毛のせいか、前髪にハサミを入れたくなる私的ランキング第二位(一位は俳優窪田正孝)。
私はコルダ3の発売当時を知っているが、芹沢は当時からサブキャラとしてはかなり人気があったと思う。「なぜ攻略対象じゃないんだ」という嘆きとともに、識者の間では「どうせ遙か3の知盛のようにそのうち芹沢も攻略できる追加が出るだろ」という話が出てもいた。
つまりASによってそれが現実になったわけだ。
しかし発売当時から、私はそれほど芹沢に興味は持っていなかった。嫌いではないが、私の芹沢への印象は「執事」というか「顔のいい樺地」というか「君は光僕は影。オスカルじゃなくてアンドレの方」というか、まあそんな感じだった。

しかし、ASでは良い意味で裏切られた。
イベントをひとつ起こすごとに、
芹沢ーーーー!君いいよーーーー!!めちゃくちゃいいキャラしてるじゃないかーーーー!
と芹沢の持つ隠し剣鬼の爪(各自ググって下さい)によって、すれ違い様に何度も胸を突き刺された。
それまで私は芹沢が執事的なことをするのが好き、もしくは、なんだかんだ言っても手のかかる部長と副部長の世話を焼くのが性に合っているんだろうな、と思っていた。でも、実際は無茶苦茶めんどくさそう。従っている理由は「逆らうより従った方が楽」という低モチベーションから。
つまり、芹沢があの2人と管弦楽部にやたらと尽くしているように見えるのは「こういう裏方の仕事が好きだから。性に合っているから」ではなく、「自分がやった方が何かと早いし、後から発生するだろう面倒事が最小限で済む」みたいな動機からである。それが最高にいい。
同じ執事的なポジションでも「こういう事をするのが好き」という男と「実は面倒だと思ってる」という男では、私は後者が好きなのだ。等身大の人間くさくて親近感がわくし、仕方なしにやってるくせに手を抜かない方が、一層仕事ができるなあと思うからだ。
芹沢が最初は小日向に冷たいというか、ビジネスライクなのもいい。これからその丁寧語とクールフェイスをぶっ壊してやるぞ!と、攻略するこちらも俄然ファイトがわく。
芹沢の魅力はまだまだある。中でも私が好きなのは、仲良くなってくるとちょいちょい丁寧語が外れるところだ。
そもそも私は下天の半兵衛や刀剣乱舞のへし切長谷部のように、敬語や丁寧語と普通の話言葉が絶妙に混じっている喋り方が好きだ。
これで芹沢の一人称が「私」だったりしたら、その萌えは半減する。丁寧語や敬語に「俺」を混ぜるからより一層いいのだ(個人の感想です)。
同学年の敬語キャラの良さは、普通の話言葉になるだけで「おっ、仲良くなってきたぁ!」と実感できるところだ。芹沢の場合、さらにそこに関西弁が加わる。家族との会話から、普段は関西弁で話していることが判明するし、それを聞かれて恥ずかしそうなのもいい。
私は東北生まれ東北育ちなので、西の方言に憧れがある。その点でも芹沢の関西弁にはかなりときめいた。
この時点で私の芹沢イメージは、世話焼きな執事キャラ→嫌でも任されたことをきちんとやる仕事のできるキャラ(関西弁遣い)、とだいぶ変化している。
さらに彼には、毒親寄りの母親との笑うに笑えないエピソードがあったり、柔道をやっていたりという意外性がある。
一体お前はどれだけ懐に爪を隠してるんだ。
神南アンサンブルを支えているピアノだって、最初はいやいや習い始めたらしいし、あの2人にスカウトされて芹沢が喜んでいる様子は皆無である。
このように、芹沢が行動する動機のほとんどは、「引き受けた方が面倒が少ない」「抗うより流された方が間違いなく楽」というめちゃくちゃ消極的なものばかりだ。それは母親の影響が大なのだろうが、何だかんだできちんとこなしてしまう有能さと「やるからには舐められたくない、完璧にこなしてみせる」という負けず嫌いな性格にもよると思う。本意ではなく流されていても結果的にきちんとこなせるからこそ、それを「楽だ」と言えるのだ。
そんな芹沢からしたら、こんな中途半端な時期に「ヴァイオリンが上手くなりたい」というざっくりした理由で長野から神戸までやってきた小日向の行動は、驚き以外の何物でもなかっただろう。
これが芹沢ならそのまま長野に残るか、せめてもっと近くでスクールを探すだろう。
そんな、自分の感覚からは最も遠い小日向の世話を任されて「俺は正直面倒だと思っていました」というのは、芹沢にしたら当たり前だ。
ただ、そうやってずっと近くにいたからこそ、芹沢は小日向のがむしゃらなところや、面倒事を自分とは違うモチベーションで引き受ける性格に惹かれていったのだと思う。

芹沢ルートは、初めて攻略したキャラならではの新鮮さと意外性に満ちていてとても楽しめた。
ただ、芹沢から「俺がお姫様扱いするとほとんどの女子は喜びますよ」というような事を言われたが、それにはマジか?と思った。
これは、姫扱いお嬢様扱いに喜ぶどころか居心地が悪そうな小日向に、芹沢が特別感と親近感と新鮮さを感じるイベントだ。だが、それは小日向が特別なのではなく神南女子が特別なのではないか。
ネオロマ女子に限っても、それを当然と受け止めそうなのはロザリアとレイチェルとシリンくらいで、他はみんな居心地悪く思いそうだ。そっちが世の大多数なのだから、それをもって小日向=他の女と違う、とするのではなく、彼女のがむしゃらぶり、一生懸命ぶり(芹沢が一番持っていなそうな部分)に惹かれるイベントがもうちょっと欲しかったと思う。
芹沢は素直じゃないわりに一旦振りきれると、言いにくいことも甘いことも結構ズバズバ言ってくるので、その度にくすっと笑えたりときめいて悶えたり、全体的にとても楽しめるルートだった。

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