三国恋戦記プレイ記まとめ

※これは2010年にブログに掲載したもので、個人の感想です。
移植版ではなく、最初のPC版の感想です。

面白いゲームでした。多分、これを買って「うおお、失敗した!クソゲー、コノヤロウ!」と思う人はほとんどいないと思う。絵柄も、個性が強すぎるということなく万民が受け入れやすい感じ。ただ、キャラの年齢設定に対してキャラデザが若すぎる気はするので、大人っぽいキャラが好きな方にとってはちょっと残念かもしれない。

また、このゲームはシミュレーションではなく基本的にノベルゲーなので、途中でミニクイズのようなものはあるがほとんどゲーム性はない。親密度を上げるために必死こいてキャラに構わなくとも、簡単な選択肢であっという間に親密度がマックスになる。
ゲーム性を求める乙女ゲーユーザーにはちょっと物足りない部分があるかもしれないが、シミュレーション系乙女ゲームの親密度上げ(育成したりプレゼントしたり合奏したり)がめんどくさいという人だっているだろうから、これは完全にその人の好みによると思う。

あとはヒロインの花についてだが、彼女は完全に有人格タイプのヒロインである。
乙女ゲームの中には、ゲーム中に極力顔を出さず会話の選択肢も「はい」「いいえ」で済ますような無個性タイプのヒロインもいるが、この花は実に性格がはっきりしているし、ゲーム内でよく喋る。
このゲームは戦争が絡んできて人が死ぬ上、ヒロインの選択によってこの世界の歴史が変わるという、わりと重めのストーリー展開をする。だから、ヒロインの花が一人で悶々と考えるシーンが多い。花は世界平和について考え、人が死ぬことの意味について考え、自分の恋愛について考え、元の世界に帰れるのかどうかについてもまた考える。
そして花がこういう事を考えている間、画面の中には彼女しかいない。つまり、結構な時間、我々は画面の前で花の顔しか見ていないということになる。プレイヤーは、ルートに入ってからも花とだけ過ごす時間がとにかく多い。
だから、このゲームはストーリーや攻略キャラ以前に、花のことを愛せなかったり共感できなかったりすると、きついだろうと思う。
花は万民受けしそうなかわいいヒロインなので、彼女を苦手とするプレイヤーはあんまりいなそうではあるが、それでも無個性タイプのヒロインよりはリスクがある。プレイヤーが「花とは性格が合わんわ…」と思うか、「花ちゃんかわいい!頑張り屋さん!私は君を応援するよ」となるかは、ゲームをやってみないと分からない。また、自己投影夢タイプのプレイヤーが、これだけ性格がはっきりしたヒロインに憑依しきれるかもまた、やってみないとわからない。
その点、蜀ルートは他より得だ。
蜀軍には芙蓉姫というヒロインと同年代の女性キャラがいるため、「恋愛について考える」という部分についていえば、花が一人で悶々と悩む場面が他より少ない。芙蓉姫に話を聞いてもらったりできるからだ。見ているこっちは、ヒロインだけで話が進むよりも誰かと会話して話が進む方が面白いのである。
せっかく尚香がいるんだから、呉軍シナリオはそれを活用すべきだったと思う。
玄徳ルートでさえなければ、尚香と玄徳をラブにして、主人公と恋愛相談し合っても構わないと思うんだが。

ストーリーはどれも面白くて、選択肢を間違ったら死ぬ、妾になるというバッドEDもそれぞれ良かった。恋愛以外のイベントは三国志を元にしていて、流れに破たんもなく安心して見ていられる。
が!だが!キャラ別感想で何度もしつこく書いたが、玄徳暗殺のイベント。あれは本当に何とかした方がいい。わざわざ同盟を壊して敵勢力を利するように動く公瑾の行動に納得できない。
仲謀ルートではそこが最大の山場であるし、多少の理不尽を吹き飛ばす良い見せ場であったからいいのだが、他ルートではもうちょっとなんとか…と思う。
それ以外はほんとストーリー、全部面白かった。

最後にもう一つ。
もともと「三国志」についてほとんど知らなかったというプレイヤーについてはいい、これで「三国志」に興味を持ったという人だっているだろう。だが、もともと「三国志」が好きで、だからこそ恋戦記をプレイしてみようと思ったプレイヤーだっていることだろう。
そんな三国志ありきのファン対策のためにも、花が飛ばされたのは本物の「三国志」の時代というわけではない、あくまで「三国志に似た世界」だ、「異世界である」ということをもっと強調すべきだと思った。
同じように歴史上の人物が登場する遙かシリーズの場合、特に「異世界」と強調しなくとも、怨霊が闊歩しているという、実世界ではありえない現象を持ってくることで、はっきりこれは過去の日本ではない、「異世界」だと認識できる。だから、攻略キャラと、歴史上の人物イメージと比較しての不満はあんまり出てこないのだ。
しかし恋戦記の場合、不思議な本はあるがヒロインは本当に無力で、戦争で人もバンバン死ぬ。怨霊などの超常現象も出てこない。説明してくれないとこれが異世界なのか、タイムスリップした先にある過去の中国なのかよくわからないのだ。はっきり説明してもらえるのは雲長ルートくらいで、あとはいまいちはっきり言葉にされていない気がする。
そうなると、三国志ファンの中には原作イメージと比較して「このキャラをこんな風にするなんて…」と不満に思う人も出てくるだろう。しかし、これは異世界だと強調されれば、原作ファンも「異世界なら仕方ないな」と諦め(諦め?)がつくというもの。
あと、バッドエンディングも合わせたら相当数のエンディングがあると思うのだが、それを全部記録できないのは悲しい(スチルやイベントは記録できる)。エンディングそのものでなくても、名前だけでも記録できたら良かった。フルコン目指してそういうのを埋めていくのが好きな人だって多いだろうし。
エンドロールがキャラによって全部違っていたり、ゲームを起動したときにキャラが喋るセリフが、起動した時間によって変わってきたりする(朝に起動させればおはよう、昼すぎなら遅いな、等)というのはすごく凝っているなぁと思う。エンドロールをとばさずに全部見たのはこのゲームが初めてだ。

以上、これで三国恋戦記のプレイ記を終わるが、冒頭書いたように、これを買って損した!とクソゲー認定する人はほとんどいないのではないかと思う。
大人っぽいキャラデザではないこと、ゲーム性があまりないこと、ヒロインの人格がやたらはっきりしていることなどに引っかかりを覚えなければ、また本家三国志の登場人物に思い入れがありすぎなければ、最後まで楽しめるゲームだと思った。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?