金色のコルダAS神南 東金千秋攻略感想

※個人の感想ですよ〜

AS攻略3人目はミスター神南こと東金千秋。
実はAS神南攻略開始前、私が最も危惧していたのが東金ルートだ。またしても「花の話」をするんじゃないだろうな、と。
「花の話」とは、「ヒロイン小日向の演奏には花(つまり自分だけが持つ魅力、人を惹き付ける何か)が無い→小日向が発奮→面白え女→小日向、花を獲得→もう地味子とは呼べないな→好きだぜ」という一連の流れの事だ。
私はASでも再び別角度から東金の「花」シナリオを見たいわけではなかった。むしろ逆で、正直「小日向が自分だけの花を獲得する話」はもうお腹いっぱいだと思った。
誤解されたら困るのだが、このシナリオそのものに文句はない。むしろ好きだ。
東金みたいに自信家かつその自信に見合う能力を持った男が、最初になめてかかったヒロインにぎゃふんと言わされる展開は古今の少女漫画に描かれ続ける鉄板の萌えストーリーだし、こういう話を乙女ゲーで展開されると実にスッキリする。
しかし、だからといってそればかりだと飽きるという話なのだ。
なにしろこちらは、コルダ3で東金に「お前だけの花を獲得したな」と認められたはずが、その秋(コルダ4)には「また地味子に逆戻りか」などと言われ、オクターヴに至ってはコルダ3の直後設定であるにもかかわらず「もう花を失ったのか」みたいな話をされている(私はASの前に4とヴをクリアしているから)。
クリアしたゲームの順番によって印象は違うだろうが、何回花を失ってはまた獲得する事を繰り返せばいいのかとどうしても思う。いくらなんでも無限ループがすぎる。
小日向は何度この運命を繰り返せばいいのでしょうか、リズ先生!(「答えられない」と呟くリズ先生に掴みかかりながら)
しかし、実際AS東金ルートをプレイしてみた結果はまあ「花」の話が出てきたことは出てきたが、それほどではなかった。スパイス程度に収められていたので、私はほっとしてゲームを進めることができた。

前置きが死ぬほど長くなったが、今回の東金ルートの肝は小日向の花ではなく東金の父親である。
これまでシリーズを通じて、東金が父親に対して対抗心というか反発心を持っていることは何となく判る。
ASでは、なぜ父親と息子が不仲なのかという東金ファミリーヒストリーに焦点が当たる。
東金の父親も息子同様音楽が好きなのだが、彼はクラシックをそのままの形で守っていきたいと考えている。しかし東金は観客を楽しませるためならかなりのアレンジも積極的にやる。
父親は息子の音楽への姿勢を「作曲者の意図を汲んでいない」と思い、息子は父親を「変化を受け入れられずにいる」と評する。どっちの主張も間違っていないだけに拗れるのだ。コルダ2のアンサンブル対立イベントで見たような話である。
父子の深刻な不仲の理由がまさかの「音楽性の違い」なのかと驚いたのだが、どうやら東金の反発心の根底にあるのは父親が仕事ばかりで家族を省みなかったことや言動に温かみがないことのようだ。
だが東金の話から、子供の頃には彼と父親とはかなり仲が良かったのだとわかる。父親にとって千秋は三兄弟の中で唯一ヴァイオリンに興味を示した息子、それも末っ子だ。性格的には自分に似ていて負けん気が強く明るく利発とくれば、父親が彼を可愛がらなかった筈がない。
このエピソードあたりで、この父子の不仲は修復可能だなとプレイヤーは感じ始めるはずだ。少なくとも、遙6片霧秋兵のうちみたいに、ほっといたら帝都が滅びるような話でないことは判る。
しかし、父親が倒れたと聞いてステージを放り出して駆けつけた東金に対して「甘い」と一喝する父。当然東金は反発するしショックを受けるが、ここで小日向が東金の音楽も認めてほしい、演奏を聴きに来てほしいと父親に懇願する。
これがとても良いと思った。
例えば、これで私が嫌いなパターンのシナリオだと、ヒロインは父親を残して対象の男を追いかける。そして、自分は特に何もしないまま、対象が勝手に「お前がそばにいて見守ってくれたおかげで父親と向き合える」みたいな流れになるのだ。
しかし、小日向は東金を追いかけず、その場に残って父親と対峙した。コンサートチケットを渡して、その後それを東金に知らせそちらも説得している。ちゃんと父子の和解に一役買っているのだ。
小日向が渡したチケットで父親は息子の演奏を聴き、東金の奏でる思い出のアヴェマリアに父は涙する。「雪どけ~~~!!」とIKKOさんみたいに叫びたくなる瞬間である。
アヴェマリアをきちんと家族の思い出として共通認識している辺り、やはりこの父子はきっかけさえあれば和解できる関係だったのだと思う。
そのきっかけを作ったのがヒロインだったというのがとても良かったし、東金が小日向に感謝するのも頷ける。
ネオロマといえども、なんかよくわからんうちに「お前のおかげだ」と讃えられ「え?何かしたっけ?」と首を捻る展開が私は好きではない。ここまで3人攻略してきたが、ASの小日向は実にいい働きをしている。
今回の東金ルートが「お前だけの花を」的ないつものシナリオから抜け出せたのは、小日向が神南に転入してきたことが大きい。現状を打破するために親元を離れて単身神戸にやってきた時点で、すでに東金はかなり小日向を認めているからだ。つまり、花を獲得する努力をすでにしている女として、小日向は東金の前に現れるわけだ。転入するだけで認められるなら星奏でもいいと思われる方もいるかもしれないが、東金の性格上、自分が認めた神南という学校を選んだという事が星奏に転入するより高ポイントだったのだと思う。
これは星奏所属では起こり得なかったAS神南シナリオならではのものなので、個人的にすごくいいと思った。
ラストのエピソードでは、まだ多少のぎこちなさを残しつつも東金父子の距離が縮まったのがわかって微笑ましい。このルートは対象があの東金のわりには全体の甘さが控えめだったと思う。ただ、東金らしいスイートなイベントはもちろんあるし、東金のプライベート面が色々見られて面白かった。
ただ欲を言えば、父子仲だけでなく東金家の夫婦仲についても「母と父は実はちゃんと仲がいいんだよ」みたいなエピソードが欲しかった。父親が仕事ばかりで母を省みなかったと東金が話している以上、そちらの方の解決を匂わせてもよかったのではないか。
あの強面で強引な東金パッパが、ガーデニングを嗜むような(話を聞く限りどうやらおっとり系の)東金マッマと仲良くしてる話をちょろっと入れて欲しかったと思う。

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