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金色のコルダAS至誠館 水嶋新攻略感想

※個人の感想ですよ

 AS至誠館、攻略4人目は水嶋新。
 突然だがここで注意喚起だ。
 これから先、私はAS新ルートをべた褒めする。しかし一方でコルダ3新ルートについて良いことは書いていない。否定的な事はビタイチ目にしたくないという方は、退避するなり自己責任で閲覧するなりして欲しい。

 新はAS至誠館のキーマンといっていい。彼の存在が無ければ小日向の物語が始まらなかったからだ。下見に訪れた仙台で、楽しそうに演奏する新に出会った小日向はそれに後押しされて仙台への移住と至誠館転入、さらに吹奏楽部入部を決めるのだから。
 また、新は持ち前の幸運で新幹線のチケットを無料でゲットし、それを部のために提供する。交通費といい部の合宿費用といい、東金というでかい財布がある神南に対し、至誠館は新の強運のみで財政難を乗り切りがちである。

 新は至誠館の一年生。調子が良くて明るいムードメーカーの新は、皆で遊びに行こうとなった際には「新がいたら楽しそうだな」と真っ先に誘われそうなタイプである。
 ブラジル帰りらしい派手なスキンシップを男女問わずに行い、初対面でも物怖じしない。ちゃんと自分がイケてる事を自覚していてコミュ力が高く、周りみんなに何だかんだで愛されているのがよくわかる。
 これだけ陽性の性格設定で、暗い過去や家族問題や夢中になれる何かを持っていなかった系コンプレックスや、とにかく何らかの「裏」を何も持たないキャラは乙女ゲーム界に意外と居ない。
 欲しいものは欲しいと言い、それを我慢しているときには「我慢している」とアピールする。新はとにかく自分の求めるものをはっきり主張し、基本的にオブラートには包まないが、それは「正直」ともまた違う。適度にズルく、でも絶対に憎めない。
ASには、とことん陽性キャラである新の良さがたっぷり詰まっている。

 ただ、これだけ誉めといて何だが、私は新に限らず初対面から度を越して馴れ馴れしいキャラの第一印象が良くない。そいつを好きになれるかどうかはシナリオ次第である。
 そしてコルダ3の新ルートは完全にnot for meであった。包み隠さず言えば、良くなかった。
 コルダ3の新は、偶然出会ったヒロイン小日向が年上で、しかも自分たちが世話になる星奏の人間だとわかった後も敬語を使う気配は無く、距離感も態度もそのままだ。
 出会ったその日からよく分からんまま懐かれて好かれて、付き合ってるわけでもないのに「大会が終わったら離ればなれになる」と落ち込まれた、というのがコルダ3新ルートの印象だ。
 いつの間に真剣に恋に落ちたのかもよくわからなかったし、他の至誠館メンバーが「廃部への危機」について語っている横でお前は何を言ってるんだ?と思う気持ちを消化しきれないままエンディングで池にボチャーン!である。
 このシナリオが好きな人には本当に申し訳ないが、私にとってこのルートは、常に上海ハニーと浜で社交ダンスしているノリというか、とにかく中身が軽すぎた。新というキャラクターが勿体ないと当時の感想には書いた。
 「いやいや、ASやったらわかるけど廃部騒動についてはコルダ3の新も実は色々考えてるんすよ。あえてそれについてあんまり触れてないだけで」という意見に対しては、「コルダ3発売当時にASはまだ無かった」としか言いようがない。ASをやってから3をやったらあのシナリオに対する気持ちも違うのかもしれないが、発売順は3、AS、4なのである。私みたいに3(PS2版)からやった人にそれを言われたら困る。
 「馴れ馴れしすぎる」「所属部の廃部騒動についてあまりにも無関心に見える」「いつ恋に落ちたのかわからない」これが3の新ルートについての私の不満だ。

 しかし、AS至誠館ではこれら全てが解消されていた。そもそも至誠館小日向に対する新の態度は、星奏小日向に対するそれとは明確に違う。最初こそいつものノリだが、彼女が自校の先輩だと知るやきちんと敬語を使い「先輩」と呼び、態度も改まる。スキンシップを取りたがるのは3と同じだが、それでも「フレンドリー」の範疇であり「馴れ馴れしい」とは思わなかった。むしろあれくらいの方が、転入したばかりの小日向には心強いだろうなと思ったくらいだ。距離感が絶妙なのである。
 それもこれも敬語と「先輩」呼びによるところが大きいと思う。つくづく言葉遣いは大事だ。
 時々「うっかり」というように敬語が外れるのもいい。最初から当然のようにそうするのと、親しくなってきて「つい」タメ語になるのとでは全然印象が違うのだ。

 新は、可愛くて優しい小日向にすぐさま懐く。
 AS至誠館といえば吹奏楽部とブラバン部の対立→ブラバン部からの嫌がらせ→優勝しないと廃部、というストーリー上の大きな柱があるため、他校生のハルはともかく至誠館メンバーのシナリオはどうしてもそこがメインになるし、ストーリー展開は重くなる。
 しかし、至誠館メンバーの中で新ルートだけは少し趣が違う。吹奏楽部とブラバン部のあれこれにちゃんと触れながらも、他より断然雰囲気が明るいのだ。
 これは新の性格のおかげでもあるが、それ以上に彼が一年生だからというのもあるだろう。新は、例の事件の時にはまだ入学していない。
 事件当時を知らない人間に、当事者たちと同じ熱量で廃部回避のために動けと言うのは無理な話だ。吹奏楽部とブラバン部を一歩外側から見ているのが新で、それ故彼のルートは部にまつわる悲壮感が少ないのだと思う。
 彼はブラバン部の同級生とも仲が良いが、それを大っぴらにしては立場上まずいこともちゃんとわかっている。
 重くなりがちな至誠館の共通ルートだが、新がちょいちょい場を和ませてくれ、柔軟かつプラス思考の提案をしてくれるお陰でゲーム自体を楽しく進められる。
つまり新を狙ってプレイしていなくても、共通ルートで彼の株はガンガン上がるのだ。
 私がコルダ3で不満に思った点のうち、「度を越した馴れ馴れしさ」「吹奏楽部が廃部の瀬戸際にあるにも拘らずそれにほとんど触れない態度」という2点をASの新は自ルートに入る前にすでにクリアしている。
 もうひとつの不満である「いつ恋に落ちたのか分からなかったこと」についてだが、私は軽いタイプのキャラにこそ、ヒロインに真剣に恋したという描写があって欲しいと思っている。仏頂面が売りのキャラが赤面し出したらマジ恋も分かりやすいが、コミュ力が高くて呼吸するように甘い事を言うキャラだと、これが遊びなのかマジなのかわかりづらいからだ。

 AS新ルートは前半は、部の先輩や従兄弟のハルとのほのぼのした絡みが続く。
 事態が動くのは後半である。
 小日向の探していたDVDが部室移動の際にブラバンの部室に紛れてしまい、それを取り戻すために新が一肌脱ぐのだ。
 夜の学校に忍び込み機転をきかせて望みを叶えてくれた新に小日向は、3つだけ何でも願いを叶えるという約束をする。
 そこで新はこれから先自分が「POR FAVOR(お願い)」と言ったら「うん」と答えてほしい、つまりは回数無制限で何でも言うことを聞いてほしいという願い事をしてくる。
 こういう事をズルいと自覚しながら言っちゃうところが新らしいなと思うが、小日向も小日向でそれを受諾。
 軽率である。
 案の定、新はことあるごとに小日向に「お願い」をし、約束だからと小日向はそれに従う。
 長嶺に対してはあれだけ警戒感丸出しだったくせに、新に対してはわりと警戒心がゆるい小日向である。
 小日向の態度を最初は喜んでいた新だが、「お願い」の力で小日向を従わせる事に段々違和感を持ち始める。もっと言うと空しくなり始める。
 そしてようやく、「お願い」の力で小日向を従わせるより、小日向が自主的に何かしてくれる事の方が自分にとってずっと嬉しいと気づくのだ。
 恋を自覚した新は3つ目の願いで「POR fAVOR」を取り消す。この時に新が「ひと夏だけならこんな関係も悪くないと思っていた」と正直すぎる事を言っているのがすごくいい。
 こ、こいつ、やっぱり遊びのつもりだったのか!とは思ったが、そこからスタートして今は本気になったんだなと納得できる。
 小日向が至誠館に入ったきっかけが新の演奏だったというエピソードもきちんと回収されてラストに繋がる、素晴らしいルートだったと思う。
 エンディングで告白する時、それまで「可愛い」「先輩大好き」を連発していた新が「恥ずかしい」と言うのだが、それがとても良かった。彼の告白に本気が感じられて嬉しくなるラストだった。

 私にはコルダ3以来、ASも4も新のルートはまだやっていないという友人がいる。理由は私と同じで3の新ルートが全く響かなかったからだという。
 もしそういう友人がみなさんの近くにもいるなら「AS新ルートはいいぞ!」と語彙の限りを尽くして説明しよう(ネタバレを回避しつつ)。
 食わず嫌いで至誠館の新ルートをやらないのは勿体無い。

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