アンジェリークルミナライズ シュリ攻略感想

※個人の感想です

アンミナ攻略一人目は炎の守護聖シュリ。
赤毛の短髪に赤目。鋭い目つきの男前で、強さを司る守護聖らしく体格も良い。古参なら彼の片耳にくっついたロングバーピアスに既視感を覚えるところだろうが、そのチョイスは別にオスカー様リスペクトゆえというわけではないようだ。

シュリは最初ヒロインに対してアタリがキツい。だが「女王候補にふさわしく!」というジュリアス的なキツさでも「オレは女王試験なんて興味ねーんだよ!」というゼフェル的なキツさでもない。
私は古参なのでついナチュラルに神鳥の守護聖を例に出してしまうが、シュリの態度はこれまでの「アンジェリーク」であまり見られなかったものである。
というのも、シュリに限らず令梟の守護聖たちは神鳥の守護聖たちと比べると、自分のところの女王に対していまいち敬が薄い。中でもシュリは「女王なんて普段から何をやってるのかよくわからんし、女王の仕事って楽そう」みたいな事まで言っている。ジュリアスあたりに知られたら延々説教を食らいそうだ。
どうやら令梟の宇宙はまだ若く、女王の力が弱まって交代の時期が近づくたびに宇宙が不安定になってしまうらしい。だからシュリとしては「交代の度に宇宙が危険な状態になるくらいなら、いっそ女王なんていない方がいいかも」とまで思ったのだという。
しかしそれは、裏を返せばシュリがこの宇宙を不安定にしたくない、守りたいと強く思っているということにほかならない。
シュリは試しに女王を介さず独断でサクリアを送ってみたが、必要なサクリアの量は女王でなければ正確にはわからないため、加減が分からず失敗。宇宙の安定のためには女王の存在が必要不可欠なのだと理解する。
つまりシュリの中では、
宇宙を安定させたい→女王が必要→試験は必要
というチャートが成り立っている。だから彼はこの女王試験に積極的なのである。
とはいえ、どんな女が女王になるのかという部分への興味はほぼゼロ。シュリが見ているのは、彼女たちの性格や生い立ちではなく、育成地を育てる力があるかどうか。ひいてはこの宇宙を守る力があるかどうか。次点でやる気があるのかどうか、くらいのものだろう。
シュリにとってはアンジュもレイナも同じ、というか女王になれる力さえ持っていればどんな人間が女王になっても構わないと思っている。そこにはアンジュ(やレイナ)という個人への関心も期待もない。女王=育成をうまく進めるためのシステム、くらいに考えていそうだ。
このように、出会ったばかりのシュリは、宇宙を(というか出身星オウルを)守りたいという熱い気持ちと、それとは逆に周囲への冷めた無関心の2つを併せ持っている。

そんなシュリとのイベントが進行すると、次第に彼の過去が明らかになっていく。
シュリは中央星オウルの所謂スラム街で生まれ育った。「ダンプ」と呼ばれるそこでは、親を失った子どもは珍しくない。暴力は日常茶飯事の場所である。
そこの子どもたちは生きるために徒党を組む。そういうグループがいくつもあり、シュリはそこの一つでリーダーをやっていた。文字通り命を預けられる仲間たちに囲まれて育ったシュリは、ダンプを自分が守るべき大事なものだと認識している。
強面で厳しげなシュリが意外にも子どもを「可愛い」と思って見ていたり、「強さとは弱いものをできる限り守ること」だと答えているのは、きっとダンプで自分よりも幼い子の面倒を見てきた経験があるからだろう。
シュリは守護聖として宇宙(というかオウル)を守りたいと強く思っていると書いたが、正確には彼はこの「ダンプ」を守りたいのだと思う。
宇宙の中のオウル、オウル中の一地方、一地方の中のダンプ。
守りたい範囲がめちゃくちゃ狭い。
しかし、シュリ自身はこの時点では、まだ自分が本気で守りたい範囲がめちゃ狭であることを自覚していない様子である。
ダンプやその住人を守ることは宇宙全体を守ることでもあり、それは守護聖の職務と矛盾していないから自分では気づけないのだ。

他人に対して興味がないというか、周りの人間を理解する必要を感じていないシュリだが、女王試験中はそんなことも言っていられないのでアンジュたちとは面談や会話を重ねる。
前述の通り、シュリはやる気が無いのではなく、守護聖の職務についても新たな女王を決める事にもむしろ熱心だからだ。
そうしてアンジュと時間を共有するようになってようやく、シュリはこの女王候補にも人格があり個性があり彼女なりの考えがあるという当たり前のことに気づく。
女王候補はアンドロイドではない、自分が尋ねたことに対して予期せぬ言葉や予期せぬ共感が返ってくると気づいたシュリは、やはり嬉しかったのだろう。
ようやくアンジュの事を「俺の大事な宇宙を守るのに必要な生き物」ではなく「アンジュ」という個人として見始める。

ここからシュリがアンジュに落ちるまでのスピード感がすごい。アンジュが女王候補botではない事に気づいたシュリは、自分の過去を打ち明ける。
彼が生まれ故郷オウル、というかオウルの中の「ダンプ」を大事にしていることや、コーディという名の親友についての話だ。
シュリが新守護聖として召喚されることになった頃、シュリとコーディのグループは敵対グループとかなり派手に抗争しており、このままだと殺されるという瀬戸際にあった。
そこでシュリは一計を案じる。自分を囮にして爆薬を仕込んだビルに敵をおびき寄せたのだ。
爆破させたのだからそこで巻き添えになるはずのところ、シュリは聖地からの迎えにより助かる。この出来事の前に、シュリはお互いの遺品になるかもしれないとして親友コーディと時計を交換しているので、本当に生死がギリギリだったことがわかる。
「次期守護聖」としての自分は聖地にとって必要であり、必ず助け出されるはずだという確信がなければできない作戦である。
これによりシュリのグループは抗争に勝ち、おそらく副官のコーディがあとを引き継いだのだろう。
つまり、シュリが守護聖になったのは仲間を助ける手段に過ぎず、そこには「宇宙のため」とか「人々のため」という気持ちは一切無かったのだ。
アンミナ発売前に守護聖への質問で、シュリが「守護聖になって良かったことは、大事なものを守れたこと」だと過去形で答えているのはこの事を言っているのだろう。
だが、ここでシュリの人生はおそらく「完」になってしまったのだ。なにしろ召喚されるまでの経緯がスペクタクルすぎて、守護聖になるまでに心を燃やしきった感が凄い。
シュリは「やりきった!これで現世に憂いはない」という感覚で聖地に来たのではないだろうか。好んで来たわけではないだろうが、未練を残しているようにも見えない。かといってロレンツォみたいにワクワクしながら来たわけでもないだろう。
たが、聖地で自分の役割を知ったシュリは、守護聖としての責務をきちんと果たす。大事な人たちが暮らす場所を守るためにはそれが必要だとわかっているからだろう。守護聖になった経緯のわりに、シュリが真面目な仕事ぶりを見せてきたのはそのためだと思う。

そんなわけで最後に交換した親友コーディの時計をシュリはずっと大切にしているのだが、ある日それを失くしてしまう。
時計のエピソードを聞いていたアンジュは一緒に探し、それを発見する(カラスの仕業だった)。必死に探してくれて、湖に落ちた時計を自分が濡れるのもいとわず拾いに行ってくれたアンジュにシュリは感激。
この時シュリは「やっぱりこいつは自分で物を考えて動く生身の人間だ」と改めて思ったのだろう。しかもここに来てようやくアンジュの容姿に言及している。
ずっと眉間にシワを寄せてた男からの唐突な「可愛いじゃないか」には大いに萌えたし、こいつ意外と言うやないかと思った。
そして、シュリはようやく「よく考えたらアンジュ以外の周りの奴らもみんな生身の人間だ」と、これまた当たり前の事に気づくのだ。
これまで、シュリにとっての聖地は、どこか現実味のない場所(聖地はシュリが生きてきた場所とはかけ離れた美しい景観だろうし)で、そこにいる守護聖たちにも現実味がなかったのだと思う。だが、アンジュの事を「ダンプの仲間たちと同じでリアルに存在している」と認識したおかげで、周りの守護聖についても「よく考えたらこいつらもそうだ」と気づけたのだ。
さらに、シュリは「宇宙のために」とか言いながら、結局オウルというかダンプ(しかも過去の)のことしか考えてなかったと自覚する。
聖地に召喚されたあとも自分の人生は続いていたのだと気づいたシュリは、水に濡れて止まってしまった時計をゼノに頼んで直してもらう。過去の象徴である時計、おそらくもうこの世にはいない親友の時計はシュリにとって特別なものだ。それを同僚のゼノに任せたことはシュリの時間が動き始めた事を意味する。
過去にとらわれていた自分の弱さに気づいたシュリは、それに気づかせてくれたアンジュに惹かれる。
歴代アンジェリークならもうこれで告白の音楽が流れてきそうな盛り上がりぶりだ。
おかしい、まだ恋愛段階途中のはずやぞ。
もしやこれはエンディング?
それくらい良い雰囲気である。
そう思ったのは私だけではないらしく、シュリも画面の中で「今はそういう雰囲気だっただろ」とキスしようとしていた。
だよな!わかる!(シュリの肩を叩きながら)
しかし、それに対してアンジュは「成り行きではキスしない。ちゃんと口説いてみよ」とキスを拒み、シュリは「こんなに段取り踏むのは初めて」みたいな事を言ってくる。
私はこのイベントがすごく好きだ。
だが私は別に「シュリが今まで付き合った女はアバズレばっかりで、アンジュちゃんみたいなしっかりした子は初めてだったのね」と思って萌えたわけではない。
このイベントが、これまでのアンジェリークでは見られなかった「恋愛経験がある者同士のやり取り」だと思ったから萌えたのだ。
もしこれが旧来の17歳ヒロインであったら、シュリにキスを迫られてもキョトン顔か緊張して色気なくギュッと目を閉じるかして「わかった、わかった。もうちょいお前が大人になるまで待つよ」みたいな流れになりそうだ。ヒロインの無垢な姿を見て己を抑える男の様子を楽しむのが、17歳ルートの醍醐味だろう。
だが、アンジュの場合は違う。この場の色っぽい雰囲気をちゃんと判って動いている感じがする。
こういうのは、過去に男とそういう雰囲気になったことがある女じゃないと出来ないと思う。もしここで、アンジュがキョトン顔で「キスされるなんて思いもよらない」という反応だったら、私はこのイベントがそんなに好きじゃなかったと思う。まあこの辺は個人の好みの問題かもしれないが、私は17歳の無垢には萌えるが、アンジュの年齢での無垢反応には萎えるのだ。
このイベントは、雰囲気を捉えてキスを迫るシュリ、それをわかっているがあえて「流されませんぞ」と言ったアンジュ、そして「ちゃんと告白するからその時はよろしく」と無理強いしないシュリが揃わないとときめかない。

こうして、結果的にアンジュはシュリからのアプローチを保留する。
歴代アンジェリークでは相手の恋心が明らかになったときにはすぐに告白→エンディングになるが、アンミナでは告白まで間が開く。相手から想われているとはっきりわかってしばらくしてから、告白イベントがくるのだ。
だから「お互い好きなのはわかってるんだけどまだはっきり付き合っていない」という、リアル恋愛で一番楽しい時間をゲーム内でも味わえる。
相手の恋心がわかってからの、夜の視察はすごくいい。シュリの女の口説き方、意外な策士ぶりなどが味わえる。

そして後日、シュリはちゃんと考えてきたらしい口説き文句を披露し、アンジュはそれを受け入れる。
前のイベントがあるから、シュリの「もうキスしていいんだよな」には大いにときめいたし、その先のこともばっちり視野に入れている二人がすごく良かったと思う。
ここで条件を満たしていれば、女王になりながらシュリとも付き合える「最良エンディング」に向かうし、条件が揃わなければシュリと恋人兼補佐官になる通常のエンディングになる。
最良エンディングではシュリが女王アンジュと共に宇宙を支えられる事が幸せだと言っているが、この時のシュリが言う「宇宙」は以前のように「ダンプ」だけを指すのではなく、全宇宙のことを指しているのだろう。
シュリはアンジュと出会ったことで、守護聖としてすごく成長したのだ。
シュリとのエンディングは、自分の責任を自覚した二人がお互いに支え合って歩いていく未来が見える。甘い雰囲気でありながら、二人の職務について想像できる部分があって良かったと思う。

私はシュリの言動が適度に粗野なところが好きだ。
シュリは普段から舌打ちはするわ、クソだの馬鹿だのと言葉遣いも乱暴だ。自分で言うくらいだから喧嘩も強いだろう。また、酒好きな上に女を口説くのも上手い。
ここにもし「クスリとギャンブル」が加わったら乙女ゲーの攻略対象としては終わりだが、シュリの場合は「職務熱心」「子ども好き」「読書好き」などのカードが加わる。
その効果で粗野なだけの男ではなくなっているのだ。
シュリは言動に荒っぽい部分がありつつも、暴力的とまではいかない絶妙なラインをキープしている。
そしてシュリはその部分を残したまま恋愛段階を進めてくるので、「雄っぽさ」という「アンジェリーク」ではあまり見ないタイプの魅力を獲得している。
顔や性格が似ているわけではないが、系統としては遙か6の虎、エトワールのレオナードに近い。
シュリには多少の強引さがあり、恋仲になってからアンジュが他の守護聖と会っていた時には悪態を付く、そういうのがつまり「適度に粗野」でときめくのだと思う。
告白を断ると、その場ではグダグダ言わずにあっさり引き下がるのだが、その晩には一人でヤケ酒を煽っていたのも人間くさくて私は好きだ。

そしてここまで書いといてなんだが、私はシュリとアンジュの組み合わせよりも、どっちかといえばシュリとレイナの組み合わせが好きだ。
スラム育ちとお嬢さん育ち、異性経験多めの男と異性経験ゼロの女。ギャップのあるカップリングが好きな人はぜひ、レイナのシュリ評価三段階目まで聞いてみて欲しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?