金色のコルダAS至誠館 水嶋悠人 攻略感想

※個人の感想ですよ

至誠館、攻略3人目はハル。2人いる水嶋のうち堅物な方の水嶋である。水嶋新の従兄弟で、仙台に法事に来た帰りに小日向と出会う。
ハルは風に飛ばされた小日向の楽譜を拾ってくれるのだが、初対面の相手の不注意をいきなり咎める彼の姿に「ASでもお変わりないようで何よりです」と思った。ここでヒロインを叱りつけてこそのハルである。彼は間違っても「悪戯な風のおかげであなたに出会えました」などとは言わないのだ。
ハルは外見こそ少女めいて可愛いが、中身まで「きゅるんっ☆」みたいな男の子(通じて欲しい)ではない。
彼はいわば古き良き昭和というか、昔ながらの男らしさを体現したようなキャラだ。男子たるもの女性や弱きものには優しく、年長者を敬い、礼儀正しく、自分に厳しく、正々堂々。そういう価値観を持っている。火積と気が合うのも道理である。
ハルは星奏に転入してくるコルダ3小日向(と響也)に対しては最初、態度がキツい。それは、同じ学校、同じ部活の人間が彼にとって身内に近い存在だからだと思う。自分に厳しい人間は、自然と身内にも厳しくなるからだ。
星奏小日向と比較すると、至誠館小日向に対するハルの態度はかなりソフトだ。というのも彼女はハルにとって年上の他校生、しかも従兄弟が普段から世話になっている存在だ。となれば、星奏の小日向に対するより優しくなるのは当たり前である。
他校生であるハルのルートは、共に優勝を目指したりは出来ないものの、他校生徒同士ならではの関わり方ができるシナリオだったと思う。

吹奏楽部に入ったばかりの小日向だが、例に漏れずブラバン部員にバッチリ嫌がらせを受ける。そこに通りかかったハルが助けてくれるのだ。
ハルを小柄な女顔と侮って掴みかかってくる江波。「女みたいな顔のくせに」って、お前こそ完全に女顔じゃないかとプレイヤーの心がひとつになった瞬間であろう。
しかし、ハルは外見こそ小型の愛玩犬(ポメラニアンとか)だが、中身は猟犬なので簡単に上級生2人を撃退してくれる。江波は去り際に「覚えていろ。このままでは済ませない」と、捨て台詞を吐いて立ち去る。
この台詞のせいで、ハルは小日向が彼らに陰で何かされるのではないかと心配になる。女の子を危険にさらすなどという事はハルの価値観からいって許されることではないし、危険を知りながら守らないという選択肢はない。
ハルは小日向が危ない目に遭わないように出来るだけ側にいてガードしようと決める。小日向は「女の子」で「か弱い者」で「身内が世話になっている人」で、しかも正々堂々と戦うことを誓ったライバル、音楽を愛する仲間なのだ。ハルが気にかける要素しかない。
そんな中でハルは至誠館ブラバン部員が横浜にも出没していることを知り、警戒感を強める。時を同じくして小日向の周りに不審な影がちらつき、益々小日向のSPと化すハル。休日も自然と一緒に行動するようになるのだが、それはもはやデートでは?と彼以外の誰もが思い始めた頃、不審者の正体が明らかになる。
それはなんと小日向に憧れるハルの友人。
街で小日向のヴァイオリンを聴いて以来大ファンになり、彼女と話したい、お近づきになりたい、合奏してみたいと勇気を出してアプローチした結果だという。ハルにガチ怒りされて落ち込む彼だが、「その気持ち、よくわかるよ!」と肩を叩いて慰めてくれそうな男がコルダ2にいるので安心して欲しい。
結局、小日向に危険が及ばない事がわかったので、もうハルがわざわざ小日向の身辺警護をする必要はない。
良かった良かった、と最初は安堵したハルだが、警護という理由を失くして初めて、小日向と一緒に過ごせないのが寂しいと気づく。
護衛はもう必要ないとわかっているが、それ抜きでも彼女と一緒にいたいと気づいたハルはすぐさまそれを小日向に伝えに行く。
ハルの事をたまに「ツンデレ」と評している方を見かけるが、私は全然そう思っていない。確かにハルはツンツンしているが、かといって「あ、あんたの事なんて全然好きじゃないんだからね!」と素直に好きと言えないデレではないからだ。ハルは恋愛事に疎いだけで、自分の気持ちに気づいたら真っ直ぐズバズバ言ってくる。今回ももちろん「好き」ときっぱり伝えてくるし、自分の気持ちを伝えるときは全然モジモジしたり照れたりしない。
珠玉ルートのハルは、ライバルだと思っている女の子を護衛しているうちに恋に落ちるが、逆注目のハルは逆注目コメントが出た時点でかなり小日向を気にかけていることがわかる。
愁情が苦手な曲調だとハルは言い、ヴォカリーズについて小日向に教えを請う形で交流が始まるのだ。こちらのルートは、小日向を守るという動機から交流が始まる珠玉よりもずっと「友情」が意識されている。
しかし中盤、ハルが小日向を女の子として意識する決定的なイベントが起きる。
暗がりでつまづいて事故チューしてしまうのだ。
これだけ男どもが雁首揃えて、しかも複数ルートがあるのだから一人くらいはそういうシナリオの野郎がいるだろうとは思ったが、それがまさかハルだとは思わなかった。
これはときメモGS2だったのか。
しかしときメモとの最大の違いはキスしてしまったハルがその行為を「バチがあたった」と評して落ち込むところだ。
バチてお前、ヒロイン様とのキッスやぞ。
と思わないでもないが、あくまでも真面目に悩むのがハルの良いところだし、誠実さゆえだろう。
攻略キャラが落ち込み中になるとプレゼントを渡せなくなるし、昼御飯を一緒に食べられなくなる。私はプレゼントを渡したことなど無いのでそれは別にいいのだが、昼飯は困る。朝の段階で料理をつくってしまっているからだ。
せっかく作ったハルの好物ばらちらしを手に右往左往してしまう。同じくばらちらしが好きな東金は残念ながらここにいない。
しかもハルはこの落ち込み期間がやたらと長い。2人になるとどうしてもキスが頭をよぎってぎこちなくなるハル。合奏してもガタガタになってしまうので、「彼女とは友だちだぞ。だから意識するな!」とひたすら自分に言い聞かせているのだが、そもそも友情だと思っていることが間違いだとは気づかない。
ハルが恋をしている自分を頑なに認めたがらないのは堅物で鈍いからというより、友情に比べて恋愛は浮わついていてなんとなくやましいもの、という意識があるからだろうと思う。だから「これは断じて恋などではない!」と、恋を友情やライバル関係よりも下に見た、劣ったもののような言い方になるのだ。自分が小日向に向ける感情は恋のように軽薄なものではない、もっとちゃんとした何かだ、と言いたいのだろうと思う。
だからその感情(恋)が友情に比べて劣るものではないと理解したら、ハルはすぐさまそれを小日向に伝えに行く。
珠玉でも逆注目でも、こうと決めたらハルの行動は本当に迅速である。

ハルのルートはどちらも彼の腕っぷしの強さがかなり強調されていて、ハルはただのかわいこちゃん系ショタじゃねえぞ!と示すイベントが随所に散りばめられている。
具体的には、江波たちから庇ってくれる、護衛をする、不審者を捻りあげる、剣道の段持ちであるなどのイベントだ。
もしもコルダ未プレイの人の前にキャラ全員のバストアップイラストを並べて「前述のイベントが起きるのは誰のルート?」と聞いても、真っ先にハルを挙げる奴はいないだろう。
ハルは外見とのギャップキャラなのだ。
ハルルートは、世のハル推したちが「ハルの良さを伝えるためにここを強調してシナリオを作ってくれたまえ」とシェフにオーダーしたような仕上がりだったと思う。
AS至誠館は、吹奏楽部が大会で優勝するという一連の流れが物語の太い柱になっているから、そこに絡めない他校生のハルはシナリオの盛り上がり的に本来かなり分が悪い。だが、「吹奏楽部のために!」「廃部にしないために!」という、熱いが見方によっては激重といえるミッションとは無関係のハルルートは、恋愛イベントだけを純粋に楽しめる。
エンディング後の遠距離恋愛に何一つ不安を覚えないのは、ハルのクソ真面目なキャラが各イベントを通してきちんと伝わったからだろう。
ハルルートでは彼の同級生含め、店員とかクルーザースタッフとかのモブに「彼氏彼女扱いされてハルが照れたり怒ったりする」という流れが何故か多い。
私に夢女属性はないからハルに限らずキャラと恋愛したいとは思わないが、ハルルートのモブになってニヤニヤしたいとは思う。

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