アンジェリークルミナライズ ヴァージル攻略感想

※個人の感想ですよ

アンミナ攻略二人目は風の守護聖ヴァージル。
目元に二連のホクロ、髪といい肌といい全体的に色素が薄い美形。柔らかな微笑みを浮かべ、話し方は基本的に丁寧語。非常に爽やかだが、歴戦の乙女ゲーマーなら、ここに胡散臭さというか、なんとなく裏がありそうな雰囲気を感じ取るのではないか。
優しいけどそれだけじゃなさそう。
ヴァージルはそういうビジュアルと言動のキャラだ。
だから彼が風の守護聖だと発表された時、「意外だ」と思ったアンジェリーカーは多かったと思う。何故なら、歴代の風様といえば、裏表の無い明るく優しい好青年で「ご両親にも安心して紹介できますよ」という感じだ。風様は真っ直ぐでクセがない。そういうイメージがあるところに、一見して曲者っぽいヴァージルが参戦したのだから、正直私は「こいつはマジで風なのか?」と思ったし、あえて彼を風に据えたのは何らかの皮肉なのかと深読みした(ごめん)。
しかしヴァージルが「悩んだときは運動するのが吉」「森の湖で泳いだ」「うさぎはライバル」みたいな事を言い出し、筋トレ用品をプレゼントして喜ぶことを知ったあたりから「なるほど、風」と思い直した。
休日には部屋から出ずにシャンパングラスを傾けていそう容貌に反して、ヴァージルはかなりの運動好きである。それも必要に迫られて仕方無しにというわけではなく、本当に筋トレやランニングが好きなようだ。
このように、会話を重ねていくとヴァージルの意外な面がバンバン出てくる。プレイヤーの最初の印象を覆すような意外性で形作られているのがヴァージルなのだ。
もちろん意外性というのは「優しく爽やかだと思っていたら曲者だった」という事ではない。それは意外でもなんでもない。ヴァージルの意外性は「曲者だと思ってたけど実は面白れー奴」というものだ。
特に恋愛イベントにおいては「(思ってたより)まともな人だった!」「(思ってたより)可愛かった!」と言っているプレイヤーを多く見かけた。
もちろんみんなは良い意味で「思ってたんと違う」と言っているのだが、私も含めて君たちはヴァージルを一体どんな野郎だと思っていたんだ。(多分、笑顔で人を刺しそうだと思っていた人が多かったんじゃないだろうか)

ヴァージルは物腰柔らかな男なので、アンジュにも最初から優しく接してくれるし、いきなりこんなところに連れてこられて大変でしたねと理解も示す。
しかし、令梟の宇宙は後任の女王がいないと滅びるという話にはそれほど動揺しているように見えない。実際「滅びるなら仕方ない」みたいな事も言っていた。でもまあ滅びから救われる手立てがある(=新女王を選ぶ)ならやりましょうか女王試験、という感じである。やる気が無いわけではないが積極的でもない。
私は一人目の攻略がシュリだったので、このあたり、何が何でも宇宙を救いたいシュリとの違いが面白かった。

ゲーム開始後しばらくは、ヴァージルは乙女ゲームに一人はいる「優しいけど実は裏がありそう」なキャラのままだ。
ゲームリリース前の守護聖への質問やゲーム内での会話から、ヴァージルの出身地は戦争か紛争が日常に存在する場所だということがわかる。その場所を離れた今でも、銃の手入れをする習慣が抜けていないことから、ヴァージルが生きてきた環境はかなり過酷だったのだろう。少なくとも銃刀法とかがない世界なのは間違いないし、年取ったら年金がもらえる世界でもなさそうだ。
そういう場所では、生きるために何かを取捨選択する勇気が必要で、ヴァージルは小さい頃からそれをしながら生きてきたのだろうと思う。しかもヴァージルには弟がいる。間違いのない選択というよりも、その時に自分が出来る最良の選択をしていくしかない。そういう生き方をしてきたヴァージルは、常に冷静で俯瞰した視点を持つことができていると自負している気配がある。
女王が倒れたとき、早々に「送ってもサクリアの無駄」と判断して職務放棄したのも、冷たいからではなくサクリアの温存が最良の選択だと思ったからだろう。例えば、もし緊急医療の現場に立たせたら、ヴァージルはトリアージになんの葛藤も覚えなそうである。
そんな彼だから「平和な地で行われる女王試験ごとき、何が起きても俺には想定内ですから」という余裕の態度なのだと思う。
出身地で体験してきた以上に自分を動揺させるような出来事は起こり得ない。たとえ起こったとしても、感情と行動を律することに長けた自分なら適切に対処出来ると、言い方は悪いが「高をくくっている」。
もしそのままヴァージルが恋にも余裕の対応をして、アンジュを振り回すようなシナリオだったら、前述した「意外性」からの萌えは獲得できなかっただろう。
何事も冷静に対処出来ると自分で思っているヴァージルが、自分の恋心に対しては、プレイヤーの想像以上に動揺していたから彼の恋愛イベントは面白いのだ。
私たちプレイヤーは、余裕の態度で高みの見物をキメていたはずの男が、恋愛というフィールドで慌てふためく様子を見るのが好きなのである。

私はアンジュがそれなりに恋愛経験のある女だと想定しており、10代ヒロインのように鈍感ではないと思っている。
しかし、ヴァージルの恋愛イベントではたとえ恋愛経験豊富な女でも「こいつは一人で何をブツクサ言ってるんだろう」と首を傾げるのではないか。
何しろその真意(自分の恋心)は明かさずに、うたた寝していただけでいきなり「あなたは女王に向いてない。女王になるには厳しさが足りず甘すぎる。試験はやめとけ」と言い出すのだ。
これまで頑張ってきたアンジュ(しかもこの時ダブルスコアでレイナに勝っている)がムッとするのも当たり前だ。
だが、女王の仕事をよくわかっていないのは確かなので、じゃあ教えてくれよその厳しさとやらをよぉと詰め寄るのだが、それに対してヴァージルは自分の故郷の過酷さを例に出して厳しさの必要性を説く。
アンジュは「なるほどヴァージルのよくわからん行動は私を心配してくれたってことで、厳しさを理解すれば女王を目指していいわけね!」と納得する。
これはヴァージルが真に言いたい事(女王にならないで欲しい)とは違うのだが、アンジュにはそんなことは分からない。
その後もヴァージルは、恋人を戦争で亡くしているという過去話を膨らませてまでアンジュを女王から遠ざけようとする。
なぜヴァージルは、自らが不誠実だと思う嘘を重ねてまで、アンジュに女王を諦めさせたいのか。
それは彼女の事が心配だからだ。
ではなぜこんなにも気にかけ、心配してしまうのかといえば「恋心ゆえに」としか言いようがない。
そしてそのことをヴァージルにずばりと指摘するのは、アンジュ本人なのだ。
彼女は歴代ヒロインと比べて察しのいい女である。ヴァージルの言動から推察して、
「私の事が好きなんですか?」
と的を射た質問をするのだが、対するヴァージルは素で「ファッ??!」みたいなリアクション。
この動揺ぶりは、指摘されるまで全く自分の気持ちに気づかなかったからというよりも、アンジュ本人に切り込まれたからという気がする。ヴァージルは自分の恋心にうすうす気づきながらも、土俵際の粘りで頑なにそれを認めないようにしていた印象があるからだ。
アンジュへの恋心を認めたくないというよりも、そんな事に振り回されてる自分を認めたくなかったのではないかと思う。
己の行動や感情を完全に制御できるはずの自分が、恋ゆえに支離滅裂なことを言ったりやったりする。多分、ヴァージルはそれを自分の価値観にそぐわない事だと思ったのだろう。
しかし自分の恋心を何とかして誤魔化そうとしたために、価値観に沿う行動どころか、逆にトンチキな行動を取ることになってしまったのだ。
ヴァージルは、
こ、こここの俺があなたに惚れてこんな制御不能になったと思ってるのかーーー!俺は最初からあなたが可愛いと思ってたんですけど!
と、反論ですらないような事を言ってくるのだが、それに対してアンジュはといえば、
「一目惚れってことですか?(謎は全て解けた!)」
と一刀両断。
ヴァージルは自分が生まれて初めての「一目惚れ」を体験していたことに気づく。

ただ私は、ヴァージルは一目惚れをしたのが初めてなだけで「初恋がアンジュ」「アンジュに会うまで恋を知らなかった」とは思っていない。過去の恋人についての話も「そんなに心に残っていない」と言っているのだから存在そのものが捏造ではないだろうし、アンジュと出会う前にもそれなりに恋はしてきたのだろうと思う。
だが、ヴァージルのこれまでの恋は「自分は今この人に好意を持っている」「このくらいの段階で先に進める」と、自分の感情を外側から見つめ、ちゃんとコントロールできるようなものだったのだと思う。相手の事が好きでもけっして溺れず、必要があればすぐに離れることができる。だから、みっともない姿は相手に見せたことがない。
本気の恋じゃなかったと言いたいわけではない。ただ、ヴァージルは恋愛においても感情の制御に長けていたのではないだろうか。
だが今回、ヴァージルが初体験したのは「一目惚れ」である。どこが好みだとかどこに惹かれているとか、自分で分析する間もなく落ちるのが一目惚れというもので、それはヴァージルがこれまで「理解出来ない」と思っていたもののはずだ。
なぜならそれは感情のコントロールを外れる出来事であり、常に冷静で俯瞰した視点を持っているヴァージルには起こるはずのないことだったからだ。
なんで好きになったのか、理論的な説明ができない。
だから、それを誤魔化そうとするとますます支離滅裂なことになる。
一目惚れから始まるこの一連の出来事は、ヴァージルのこれまでの価値観から遠いことばかりなのだ。過程を説明できない恋も、それを認められずにジタバタする自分も。

また、ヴァージルには自分が優しくてスマートなだけの男ではないという自覚がある。過酷な環境から獲得したある種の冷酷さはヴァージルにとって必要なものだ。平和な場所にいるからといって自分からは捨てられないものでもある。
その象徴が「銃」なのだろう。
しかしアンジュへの気持ちを自覚すると、その「冷たさ」を彼女に見せたらマズいのではという気持ちが生まれる。自分にとっては大事なものだが、彼女にとっては恐ろしいだけのものかもしれないからだ。
だから、ヴァージルはそんな自分の価値観をこの先ほんの少し変えてもいいかなと思い始める。
そういった事を、銃を見つめながらぼんやり考えていたところに、すわ自殺かと勘違いしたアンジュが飛んできて、それをバシャーンと水に落としたのである。
か、価値観の象徴が〜〜〜!!
とヴァージルが思ったかどうかは知らないが、これまでの価値観にこだわらず自分の気持ちに向き合うきっかけになったのは確かだろう。
もっと早く自分の気持ちに素直になれば良かったと言うヴァージルは、これから先全てにおいてアンジュを優先させると誓う。
「とにかく自分はアンジュが大好き」と自分の気持ちに素直になったヴァージルのかっ飛ばし方がすごい。
実にイキイキとしているというか、さっぱりした様子である。この人は指針さえ示されたら、あとは迷いなく動けるタイプなのだろうなと思わせられる。
告白する時も、これまでの葛藤が嘘のように「あなたの決断を待つって言ってたけど、やっぱり待てませんでした!」と爽やかにぐいぐい来る。
圧がすごい。
私の場合、銃のイベントの翌々日にはもうこの告白イベントが起こったため「ヴァージルに「待て」が出来たのはたった一日」という印象が強く残った。
告白イベントでは、とにかくアンジュが好きで好きでしゃーないというヴァージルの姿が見られるし、告白を受け入れてもらえてめちゃくちゃ浮かれている様子が伝わってくる。
多分このあとヴァージルは執務室まで、スキップからの全力疾走で駆け戻った。
ただ、アンジュが女王になる事をずっと心配してきたヴァージルなので、最良エンディングに向けて女王試験を続けていく事を選んだ時は、シュリのように「よく言った!えらい!」という雰囲気ではない。
だが、自分の望み(=女王を目指さないでほしい)よりもアンジュの選択を優先し、それを全力で支えたる!という言葉から、例の誓いがここでもちゃんと貫かれていることがわかる。
最良エンディングにむけての恋人期間には、もはや完全に振り切れたヴァージルの浮かれポンチぶりを感じながらすべての会話を楽しめる。

ヴァージルの良いところは、アンジュの意思をちゃんと確認してから行動するところだ。だがさらに良いのは、確認はしつつも自分の要望をはっきり伝えているところだ。「○○していいですか?」と質問形式を取りつつも、「八割方はイケる!」と踏んでから確認していそうなところが私は好きである。
たがヴァージルのそういった策士っぽさは、アンジュを好きすぎてトンチキになっている部分がうまく覆い隠してくれている。
全てにおいてアンジュを優先させるが、かといって唯々諾々と従うわけではないところも良い。ヴァージルはアンジュに柔順というより、柔順でいますよ俺は!とガンガンアピールしてくるタイプだと思う。
あと私は、丁寧な喋り方なのに一人称が「私」でも「僕」でもなく「俺」なところが好きだ。これについてはなぜかと問われても困る。ただ好きなだけだ。
ヴァージルは途中まで「なんだ、やっぱりイメージ通りの曲者じゃん」と油断していたプレイヤーを予想外の「可愛さ」で仕留めに来る。
顔も性格も立場も違うのだが、コルダ2の加地、遙か6のダリウスの系統に近い。

私はアンジュと恋人になったあともヴァージルは銃を捨てないし手入れは欠かさないと思う。
だがそれはもう自分の価値観を確認するためではなく、万が一のときに、何よりも優先しているアンジュの事を守るためである。
ただ、筋トレとその他の運動(森の湖で泳ぐなど)に関しては「アンジュのためにこれからも鍛えたい」というわけではなく、単なる「趣味」だと思う。

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