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アンジェリークルミナライズ ゼノ攻略感想

※個人の感想ですよ

アンミナ攻略7人目は鋼の守護聖ゼノ。
銀色もしくは灰白色の髪に、琥珀色の目。童顔で、年下だということを差し引いても可愛いタイプだ。
ゼノは試験開始直後からとにかく優しい。いきなり聖地に連れてこられたカナタを一番気にかけ寄り添っているのもゼノだし、酔った勢いで契約書にサインした女王候補二人(お、お前ら…)にも当たり前のように優しく接して力になってくれる。
また、薬には詳しいわ、ロボットを作るわ、大陸トラブルの際にはデータをまとめるわと、あらゆる面で大活躍している。
こちらとしては「ほーん、この子性格良くてめちゃくちゃ有能やな」と感心しきりなのだが、仲良くなるにしたがってゼノの度を越した謙虚さ、悪く言えば卑屈さが目に付き始める。
試験開始直後は「俺なんか…」とか「俺以外はみんなすごい」みたいなセリフを聞いても「やたら腰が低いな」くらいにしか思わない。だが、個別イベントや夢イベントでこれでもかと有能ぶりを見せつけられた後に「俺なんか…」と言われて、「なんでこんなに自信がないんだろ。もっと自信を持っていいんだよ」と、はがゆく思った人は多いのではないだろうか。
もちろんゼノは悪くない。だが、「こんな事ができるなんてすごいね!」という褒めに対して「そんなにすごいことじゃない」と返されたら、ロボットや宙に浮かぶ乗り物など作れない身としては「いや、充分すごいじゃん!」もしくは「もっと自信持って!」と言うしかなくなる。
そして、そう思っているのはアンジュだけではない。どの守護聖に話を聞いても、みんな似たようなことを言ってくる。
しかもゼノは自分の時間を削って守護聖の職務外の仕事まで色々引き受けているのだ。残業手当なしでは一切の労働をしたくない当方としては、ゼノの精神と身体が心配になってしまうし、そこには何か特別な理由があるんだなと感じる。
そして、案の定それはゼノのストーリーの核となる部分なのだ。

また、守護聖や女王という地位への敬意がいまいち薄い令梟メンバーの中で、ゼノは「守護聖」に対する尊崇度が神鳥や聖獣メンバーに近いほど強い。
それはゼノが女王と守護聖への尊敬が根付いた場所で生まれ育ったからだ。「守護聖?なにそれ?」みたいな環境で育ったメンバーとゼノとで温度差があるのは当たり前である。
守護聖に対してほとんど信仰に近い感情を抱いているだけに、ゼノは「どうして俺なんかがその一員に選ばれたのかな」という気持ちを強く持っている。

自己評価の低さと自信のなさが気になりはするものの、ゼノとのやり取りは終始ほのぼのしている。それは彼と他の守護聖とのやりとりでも同じだ。ゼノが明るくて優しくて素直なことが良くわかる。
それだけに、序盤で目にするシーンにちょっとした違和感を覚えるのだ。
それは、死んでしまった小鳥を生き返らせてほしいと頼む子どもへの対応、そして故郷スピネルの爆発についてカナタに話した時の様子である。
これまでゼノの優しさや温かさをたくさん見てきただけに、ゼノが「失われたもの」について話すときだけは妙に淡々としている事が違和感となって心に残ったのだと思う。
私はそれまで見てきたゼノの言動から、彼なら涙ながらに小鳥を葬ったり「俺の故郷は…もうないんだ…」と涙ぐんだりするのではないかと思った。デートでの会話などから、ゼノが家族や仲間が大好きだったことを知っているから尚更だ。
しかしゼノは喪失に対してドライだ。というか、ドライに見える。
小鳥のイベントでの「小鳥が生きている世界と死んでいる世界のどちらも受け入れないといけない」という言葉、故郷がなくなった事をカナタに淡々と話すところなど、その部分だけが「私がこれまで見てきたゼノっぽくない言動だ」と感じたのだ。
そして、その違和感とゼノの自信のなさ、職務への邁進の仕方など、今まで感じてきた謎が一気に解けるのが恋愛6段階目である。

親しくなるに従い、アンジュはゼノに「自分に自信がないの?」「自分が嫌いなの?」「本当にそう思っているの?」といろんな言い方で同じような問いかけをするようになる。
それはおそらくゼノを攻略中のプレイヤーが聞きたいことでもあると思う。
だが、それに対するゼノの答えはいつも「本当に自信がないし、自分なんかがって思う」というものだ。
そんなゼノにアンジュは「なにかに気兼ねしているの?」と尋ねる。がむしゃらにみんなのために尽くしながら、そのくせ自分をやたらと過小評価するゼノの様子にやはり違和感を覚えたのだろう。
きっと、ゼノに「どうしてそんなに自信がないんだ」と言う者はそれまでも沢山いたに違いないが、「気兼ねしているのではないか」ともう一段踏み込んで尋ねた者はいなかったのだと思う。
ゼノは驚き、そのしばらく後、アンジュに故郷のことを話す。といっても意を決して話したというわけではなく、カナタに話したときのように、話のついでに故郷の最後について触れたという感じだ。
そのあっさりした態度にアンジュはびっくりする。故郷に帰れないというだけでも悲しいのに、その星がまるごとなくなってどうして平気なのかと思ったからだろう。
悪気があったわけではなく、アンジュは純粋に疑問だっただけだ。
だが、ゼノの悲しみは泣いたり喚いたりする段階すら迎えていなかった。喪失を悲しみ死を悼む前に、それに無理やり蓋をしなければならないほど深い傷を心に負ったからだ。
アンジュはそれを知らなかった。
だから、大好きな故郷が目の前で爆発したこと、そこには当然家族や仲間がいたこと、もう帰る場所がないこと、そういう事を全部ひっくるめてゼノが「しかたない」と話したことに、それまでの違和感も手伝って思わず「どうして笑えるの?」と言ってしまったのだろう。
しかしこれは、当事者ではない人間が絶対に言ってはいけない言葉だ。前述のように、ゼノの喪失感や悲しみや苦しみは本人が目を背けるほど深い。しかし、それをいくら嘆いても元に戻らない事は知っている。小鳥のエピソードやカナタとのやり取りが淡々としているのはそのせいだと思う(カナタもアンジュと似たような言葉をゼノにぶつけてしまっているが、幸運にも途中で別の守護聖が来たことにより話が中断している)。
ゼノはもう「しかたない」と言うしかないのだ。
悲しみを乗り越えたから淡々としているのでは無い。ただ、その深すぎる喪失とどうしようもなさを「その場にいなかった人」にうまく説明する言葉が存在しないのだ。
実は私は、これとよく似たシーンを見たことがある。ドラマなどのフィクションではなく、ノンフィクションのドキュメンタリーだ。
「誰のせいでもないし、仕方ないですからね」とインタビューを受けた人は答えていた。それは2011年の震災で、避難した山の上から自分の住む街が津波で壊滅する様子を見ているしかなかった人だった。
私達が惑星まるごとなくしたゼノの気持ちを想像するのは難しいが、あえて言うならその時インタビューに答えた人の気持ちに近いのではないかと思う。
例の震災で家を失ったり、ましてや故郷に戻れなくなった友だちが言った「しかたない」に対して「よく笑えるね」「それでいいの?」「本当にそう思ってる?」って、言えるか?
だが、アンジュはそれをゼノに言ってしまったのだ。
アンジュが無意識に発してしまった言葉がどれほど無神経だったか、ゼノを傷つけたのかがわかるだろう。穏やかなゼノがあんな風に感情をあらわにしたのは当たり前だ。
もちろんその事にアンジュも気づき、必死に謝る。
優しいゼノは「こっちこそごめんね」と言ってくれるのだが、ゼノのやるせなさが伝わってきて本当に申し訳ない気持ちで一杯になった。
あの選択肢は正直どれも選びたくなかった。

その夜、ゼノはアンジュの部屋を訪れ「あんな態度を取ってごめん」と謝る。
いやもうほんと、ゼノが謝る必要など全く無い。アンジュに対しての「ひどいこと言うなぁ」という感想が全てだろう。アンジュはそれだけゼノにひどいことを言ったのである。
普通ならあの選択肢のどれを選んでも「ゼノ恋愛失敗」と表示されてもおかしくない。しかし、そこで前のイベントでアンジュが言った「誰かに気兼ねしてるの?」という問いかけが効いてくる。
ゼノはアンジュが深く自分のことを見てくれていたのだと気づき、そんなアンジュが言った「気兼ねしている」の意味をよく考えてみたのだろう。
そして気づいたのだ。
自分が誰かの役に立つように頑張っていたのは、「あの時ゼノだけが助かったのにはちゃんと意味がある」と人に認めてもらいたかったからではないかと。
自分より優れた仲間の誰かではなく自分が選ばれた理由、結果として自分だけが生き残った理由を、ゼノは自分では見つけることができなかった。
となると、他の人に「ゼノで良かった」と認めてもらわなければ気持ちが救われない。ゼノが感じている自分だけが生き残ってしまったことへの後ろめたさは、人に頼りにされればされるほど薄らぐのである。
本来なら悲しみが先にくるはずなのに、ゼノはそこに蓋をしてしまった。自分で言っているように「深く考えることから逃げていた」のだろう。

それに気づき、蓋をして目をそらしていた悲しみにきちんと向き合う決心をしたゼノは、彼ならではの方法でそれを行う。
なんと、スピネル爆発の様子を映像再現し、それを改めて鑑賞するというのだ。
これには本当に驚いた。なにしろ、両親や仲間も巻き込まれている爆発映像である。一回トラウマになっているそのシーンをもう一度見るというゼノの精神力たるや、である。
私など、ゼノ勇気あるなあという感嘆を通り越して、おいおいゼノ大丈夫か?とすら思ってしまった。
ただ、一人では無理だからアンジュも一緒に見てほしいと頼まれる。そりゃそうだ、一人で見るにはキツすぎるし、もしゼノ一人で見たりしたらさらなるトラウマどころか別の精神疾患を発症しそうだ。
ゼノの故郷が爆発するところを見てもアンジュにメリットは何もない。それどころか、苦しみを半分引き受けてほしいと言われているに等しい。ゼノがアンジュに謝っているのはそのためだろう。
キツい頼みごとではあるが、ゼノがアンジュにそれを頼んだところがとても良かったと思う。あんなに淡々としていたゼノが「これは一人で向き合えることじゃない」と思った事自体が、彼の変化だからだ。
それにアンジュならきっと一緒に受け止めてくれると信じていたのだと思う。
悲しみに向き合う準備ができたゼノは、家族の死と故郷の喪失を静かに受け入れる。
そして、自分に前を向かせてくれたアンジュに告白するのだ。

ゼノは守護聖や女王という地位を特別だと感じているので、告白の時には「女王候補に不遜な発言をするよ」と前置きしてくれる。
私はこれがすごく好きだ。
これまで6人攻略してきて「女王候補と恋愛すること」に葛藤した守護聖はユエだけだ。しかしユエの場合は「相手が女王候補だから」というよりも、どちらかというと「自分が守護聖だから」告白をためらっていたように思う。女王候補との恋愛は守護聖としてあるまじきことだと考えたから悩んだのではないかと思う。しかし、これから女王になるかもしれないアンジュを畏れ多いと捉えている様子は特に感じられなかった。
しかしゼノの場合は自分が守護聖だからというより、この先アンジュが最大限敬うべき相手になるかもしれないのに告白します、ごめん、という感じがする。
ユエと同様、歴代アンジェリークから受け継いだ「恋か使命か」という萌えを感じることができる告白だったと思う。
告白成功後も恋人になってからも、アンジュにストレートな好意をぶつけてくるゼノは期待通り可愛いし、そして意外とグイグイ来るというか、欲求に素直な様子にときめく。
可愛い〜!と思っていると、いきなり男らしかったりするのだ。油断してはいけない。
また、バース帰省のイベント3回目は、守護聖引退後にもう帰る場所が存在しないゼノならではのセリフがあり、とても良かった。

私の思うゼノの良さは「ありがとう」と「ごめんね」をその都度きちんと伝えてくれるところだ。
きっとご飯を作ってあげたら笑顔で「ありがとう!」。皿を洗って片付けたらやっぱり笑顔で「ありがとう!」と言ってくれる。
気の利いた甘い囁きもいいが、挨拶やお礼の言葉をちゃんと伝える事はそれ以上に大切である。
あと、ゼノは機械に強い。自宅の家電が壊れたら即座に直してくれるはずだ。「最近自宅のWi-Fiがやたらと切れる。どうしたらいいかわからんから、恐る恐る電源コードを抜いてリセットしてみる」などという事をしなくても、きっとゼノならなんとかしてくれる。
真冬に給湯器が壊れて風呂に入れない時も、交通量多めの交差点でいきなり車が動かなくなった時も、まあ全部私の身に実際に起こった出来事なのだが、ゼノなら、ゼノならなんとかしてくれる。
このようにゼノはSLAM DUNKの仙道のように頼れる存在なのだ。
コミュ力があり手に職のある男は強い。そして、素直に感謝や謝罪ができる男はいいと思うのだ。

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